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安倍政権の「平和安全法制」とやらを簡単に理解する方法 [社会情勢]

そもそも「平和」だの「安全」だのをことさらに持ち出す時点で、これは何かヤバいことになるぞって感覚は持っていたいよね。

 さて、「戦争法案」と称される、安倍政権が持ち出した11の安保法制が国会に上程された。
 とうとう。ここまで来てしまったか、との感を拭えない。

 昨年の閣議決定でいわゆる「集団的自衛権」の行使を可能にする政府見解を出した安倍政権。閣議決定では実行力に乏しいので、それを法制化して実行する算段をつける、つまり戦争への一里塚。だから私はこれらの法案を「戦争法案」と呼称する。

 政府は「平和安全法制」とか言っているらしい。そしてその呼称を使わない野党やマスコミに対して、恫喝すら行っている。テレ朝はじめ大手メディアはあっさりそれに屈していると見える。

戦争法案はなぜ分かりにくいのか

安保法制「議員の妻もわからなかった」 麻生氏呼びかけ「有権者へ説明、丁寧に」(朝日新聞:2015年5月15日)
「全然わからなかった」という話だった――。麻生太郎財務相は14日、国会議員の妻から安全保障法制について説明するように言われ、法案作成を主導した政府高官を派遣したところ、こんな反応だったことを明らかにした。


 で、この戦争法案、あちこちで「わかりにくい」との評が立っている。
 そりゃそうだ。この手の法案が「分かりにくい」のは、分かりにくくして真相を押し隠す意図が政権にあるからなのだ。政治を通覧していると、そんなことが直感的にわかるようになる。

 じゃあ、どうするか。簡単に考えればいいんだよ。この法案は各法案に「安全保障」とか「平和」とかがついている。「平和」なんだろうか。考えてみよう。

今までより、自衛隊という軍隊が戦闘行為を制限される法案なのか


今までより、日本の組織が非軍事的な内容で国内外で活動できるようにする法案なのか


今までより、海外での戦争・戦闘で日本人が命を落とす可能性を低くする法案なのか


今までより、アメリカ合州国がやらかす戦争に日本が加担しなくてすむ法案なのか


 全て否ってことはつまり・・。

 簡単なことだ。 この戦争法案は、従来の政府見解を飛び越えて、自衛隊が世界各地で動きやすくすることが目的だ。自衛隊とは軍なので、軍を動きやすくする法を制定することは、それすなわち、戦争をしやすくする法ということに他ならない。
 戦争をしやすくすることは、平和の構築・維持に絶対的に逆行する。だから平和を求めるのなら、このような法案はおかしいということになる。

日本は法治国家か ~憲法をないがしろにする政府がここ数十年でやってきたこと

 もちろん立場も考えも違う人が世の中にはたくさんいて、戦争をしたがる人が存在することを私は否定しない。そんな立場からこの法案に賛成の人がいてもいい。ただしそんな人でも、日本が法治国家であることを否定はしまい。

 日本は法治国家なので、政府の行動には法的根拠が求められる。戦争法案が上程されているのもそれが理由だ。法治国家なので最上位には憲法がある。だから憲法を基礎に考えなければならない。

 憲法上、日本は軍隊を持ってはいけないことになっている。しかしどうだろう。日本の「軍事費」は世界でも常に上位10位以内に入っている。世界トップクラスの「軍事費」を支出している国家が、「軍隊を持っていない」など噴飯ものだろう。
 だからというわけではないが、自衛隊は憲法に照らして違憲である、とする考えが憲法学者の間では「多数派」「常識」であった。国民各層でも自衛隊が違憲であるとする考えを持つ人は多かった。

 80年代までは。

 1991年から92年にかけて、自衛隊を海外に派兵しようとする政府の意向が強くなった。合州国の要請が最大の理由であろう。その際制定されたいわゆる「PKO協力法」は一度の継続審議を経て、侃々諤々の議論の末、大もめにもめて成立した。国民世論を逆なでしないように派兵先も慎重に選ばれたと記憶する。
 それが今や、自衛隊の海外派兵はごく常識のように行われている。国会でも議論にそれほどならないし、自衛隊のイラク派兵が違憲との判決が高裁で確定しても、それを省みる軍幹部も政府高官もいない。

(参考)自衛隊イラク派兵差止訴訟の会


 安倍晋三は「自衛隊が米国の戦争に巻き込まれると言うことは絶対にない」などと断言している。とにかくこの戦争法案が、平和に資することをやたら強調しているが果たしてそうか。

 2年ばかり前、私は数十年の歴史を踏まえこのように書いた。

(バレるとドえらいことになる情報を国家が勝手に)特定(して)秘密(にしちゃって、とりあえず何が秘密かもわからないようにしておけば、いざというとき国家-と言うよりその時の為政者の権益が)保護(できるから、それを邪魔する国民がいたら罰しちゃうぞ)法案はヤバい件
「20年前だね。自衛隊が初めて海外に出て行ったのは。その時はPKO法案とか非常に議論になったものだよ。日本は専守防衛だから、自衛隊の海外派兵はおかしいと大変問題になったんだ。でも今は自衛隊が海外に行くのは当たり前になっている。ほんの20年程度でここまでになるんだよ。」
「日の丸君が代だって、80年代は学校で掲げているところは少数派だったからね。国旗国歌法も、当初は強制はしないって言っていたのに、すぐに強制が始まった。」
「政府もバカじゃないから憲法改正してすぐに徴兵なんてやらないさ。少しずつ変化させていくもんだよ。(憲法改正で徴兵制とは)極端な意見でも何でもない。この間にあった事実なんだ。だから問題が小さいうちに何とかすべきなんだよ。」


 安倍晋三は記者会見で、米国の戦争に巻き込まれることは「そのようなことは絶対にありえない」と言った。戦争法案について「厳格な歯止めを法律案の中にしっかりと定めた。国会の承認が必要になることは言うまでもない」とも。
 そんなことは何の保証にもならない。空疎なその場限りの言葉でしかない。それは上に挙げた歴史が語っている。

この法案が法律となってしまったらどうなるか

 よく批判派が口にするのは「アメリカがはじめた戦争に日本が巻き込まれる」というものがある。いや違う、と私は言いたい。そんなに生やさしいものではない。この法案によって、いずれは「アメリカと日本が共同して戦争を始め、かつ推進する」体制が来る。
 その「いずれ」はすぐにはこない。これから数年~数十年かけてゆっくりと世論を変化させ、その動向を見て、着実に歩を進める。そして誰も気が付かないままに、「自衛」「平和」「国際貢献」の名の下に、世界で戦争を仕掛ける国家に変貌しているだろう。

 かつて憲法違反とされた自衛隊が、何食わぬ顔で活動し続けるのを何とも思わなくなった現在のように。

 安倍の持ち出した「戦争法案」はそんな未来を保証するものだ。

 いやなら、反対しよう。今すぐに。


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ponnta1351

説明不足は否めませんよね。それに拙速すぎますね。
そう、憲法違反だと言われた自衛隊は確実に軍隊になりましたよね。

兎に角アメリカのポチであり、70年経っても植民地状態の日本なのですからどんなにデモをして反対をしようが、もう、どうしようも無いような気がします。
横田基地にオスプレイと兵隊も何百人か配備されるそうです。
どんなに反対してもダメなようになっているようです。


by ponnta1351 (2015-05-18 12:34) 

Mosel

ponntaさん、コメントありがとうございます。

おっしゃるとおり戦争法案に関しての政府の説明不足は否めませんね。しかし説明すればするほど、危険な本質が明らかになってしまう、だからまとめて拙速に可決しようとしているのでしょう。

いつまでも対米追従でもないと思うのですが、それで利益を得ている人々が政界の中枢にいるのではどうしようもありません。せめて米国と対等な関係を作ろうとする、ごく当たり前な人々が増えればと思います。右派左派含めて。
by Mosel (2015-05-19 09:47) 

cheese999

え~っと、自衛隊は軍隊でないのですよね。。。だから、軍法もなく。。。
by cheese999 (2015-05-22 00:37) 

Mosel

そうなんですよね。「軍」としてしまうと、明確に憲法違反になってしまうので、自衛「隊」なんでしょうね。
既成事実の積み上げで、「隊」をこんなに肥大させてしまって。するとそれを使いたがる権力者が出はじめる。憲法違反を既成事実化させた時点で、名文会見を発動する、安倍政権の目論見が見えますよ。
by Mosel (2015-05-22 06:59) 

とーりすがり

決めつけがベースとなっている論で説得力にかけますね。
文章をよめば、積極的平和主義を真っ向から否定されていることが伺えますが、その時点で、対話ができなくなってしまいますね。
by とーりすがり (2015-07-21 11:36) 

Mosel

とーりすがりさん。
「積極的平和主義」とか言うヘンテコな概念って何を意味するかご存じですか。国会審議で明らかですが、かつての「日本の生命線」と同意ですよ。
「とーりすがり」なんてステハンで、「対話ができない」なんて指摘されてもね。
夏休みはこれから長いですから、勉強する時間はいっぱいありますよ。頑張ろうね。
by Mosel (2015-07-21 22:11) 

銀のしゃちほこ

ということは、日米同盟は破棄した方が良いと考えているのでしょうか?
独力での防衛はいろいろな観点(特に経済的観点)からみても、現実的ではないですぞ?
もしくは、ウルトラCがあるとか・・・!?
ご意見お聞かせくださいm(__)m
by 銀のしゃちほこ (2015-08-08 23:32) 

Mosel

「銀のしゃちほこ」さん。
私はまずもって日米の「軍事」同盟は破棄すべきと考えています。そして中国と結んでいるように「平和友好条約」を結ぶべきとも考えています。

「経済的観点」から独力の防衛はムリ、と考えているのかな。そうであれば、世界の98~99%の国家は、独力での防衛はムリですね。日本の「防衛費」を調べてみましょう。
そして在日米軍は、日本の防衛のために存在しているのではありません。なぜそういえるのか、については、8月もまだ長いですので、これも勉強してみてください。

それよりまずあなたは、初対面の相手に対して、ネット上でもそれなりの敬意を相手に払う必要がある、という常識を、まずお勉強するところから始めましょう。若いうちに対人関係を学ぶというのは重要なんですよ。私もそれで結構苦労したクチです。
by Mosel (2015-08-09 17:00) 

銀のしゃちほこ

まず、私は集団的自衛権の行使を容認することに賛成です。
また、日米同盟の強化にも直結する平和安全法制についても賛成します。
なぜ賛成するかと言いますと『戦争をしないため、戦争にならないため』
これに尽きます。
反対派も目的は同じかと思います。


『日米同盟は破棄して、平和友好条約を結ぶべき』
非常に興味深いご意見ですね。
改めて考えさせられました。

『経済的観点』については言葉足らずでした。失礼しました。
現在の防衛力を、独力で維持するのは無理ということです。
それがわかっていても、日米同盟を破棄した方が日本のため、日本の安全のためになると本当に思っているんでしょうか?
日米同盟を破棄したら、日本だけではなくアジア全体のバランスが崩れることでしょう。
なぜそういえるのか、については、8月もまだ長いですので、勉強してみてください。

それよりまずあなたは、初対面の相手に対して、あなたの常識を上から目線で押しつけないようにしましょう。
(ご自分では気づいておられないでしょうが)
そして、世の中には私のようなバカも含め、いろいろな人間がいるいうことを、まずお勉強するところから始めましょう。
若いうちに対人関係を学ぶというのは本当に重要なんですよ。
いるんですよねー、自分の考えが正しいと思い込んでる人って。

by 銀のしゃちほこ (2015-08-13 21:32) 

Mosel

銀のしゃちほこさん。
戦争法案について、「わからない」など思考を放棄している大人が多い中で、自分の考えをしっかり持っているあなたは、なかなかのものです。「バカ」だなんて卑下しなさんな。

「バカ」というのは例えば元ライブドアの堀江のような人物。あなたはバカではなくて無知なだけです。子どもは無知で当たり前。
ついでにいえば無礼なのも若さゆえの特権です。大人はそれを指摘しますが、同じ世代に対するのと違って、若い人へは大目に見るものです。だから「上から目線」(これもとっても新しい言葉だけど)に見えるのかな。大人は上から目線で当たり前。そこにケチをつけてもどうしようもないよ。そもそもキミより偉いんだから。
ブログ主の意見に大した根拠もなく反対するのも十分「上から目線」だけど、それは今回のやりとりで学んだということで、他の人に対しては気をつけようね。

あなたがこれからすべきなのは、虚心坦懐にこの法案を学び、そして21世紀までに世界が獲得してきた国際関係の経験、何より戦争の歴史を調べることです。そうすることで何が真実か、単純に軍事力の多寡でパワーバランスが決まるのではないこともわかってきます。全部勉強するとすごく時間がかかるから、日本に関わる部分、明治維新以降、20世紀の終わりくらいまでの150年間くらいに絞るのもいい。

そしてそれらをまとめれば、立派な夏休みの自由研究として発表できるでしょう。あなたの結論が戦争法案賛成だったとしてもいいんです。政府や与党筋から教育現場へ「不偏不党」が押しつけられる(字義通りに解釈しちゃダメですよ。政府筋が「不偏不党」とか「中立」とか言うのは政府に批判的なことは一切言うなですからね!)、そんな中であなたの発表は学校現場へちょっとした風をもたらすでしょう。

夏休みはあと半月。北海道ならあと5日だけど。頑張ろう。


・・・中学生、だよね?
by Mosel (2015-08-15 07:59) 

銀のしゃちほこ

この件だけではなく、あなたのブログはいろいろな方のご意見も聞くことができ、非常に勉強になります。
また、たまに読ませていただいております。ありがとうございます。

ただ、あなただけに限らず昔から不思議で仕方がないのは、自分が変えてやろうという行動は(勇気がないのか、守りに入ってるのかわかりませんが)起こさないくせに、批判だけは一丁前にする方が多いことです。
しかも、よく批判をする人ほど、何か問題が発生すると他責化する傾向が強いですね。
さらにそのような人は、自分の考えは間違っていないと思い込んでいる。
あなたがそうであると決めつけることはもちろんしませんが、私の乏しい経験ではよく見かけるそちら側にかなり近いです。
ブログ以外にもこういった発信をされているかもわかりませんが、粗方の予想はつきます。

なぜ批判するだけで、自分が変えてやろうと行動を起こさないのですか?

日本は議会制民主主義なのはわかっていますよね?

このままでは、さらにあなたの想いと真逆の方向へいってしまうのではないですか?

あなたがやるべきことは何なのか見えてきませんか?

見えない or 見えるがやらないなら批判しなさんな。
みんなにあなたの愚痴を聞いてほしいだけでやっているのであれば構いませんが。

そういえば、
「そもそもキミより偉いんだから」
最高でした(笑)

本当にありがとう!
Good luck!

by 銀のしゃちほこ (2016-03-16 23:55) 

Mosel

銀のしゃちほこさん。お久しぶりですね。時々読んでくれているなんてうれしいものですよ。

ネット社会だけしか見えていない子どものあなたにはちょっとわかりにくいかもしれない。
大人はネットで発信するより多く、現実生活での時間がありますから、そこでは結構いろいろとやっているのですよ。私は地域ではそれなりに有名です。

たまにはネットを出て、現実世界で様々な人と交流しましょう。そうすれば、あなたのコミュニケーション能力も少しは上がるかもしれないね。まあ、20代くらいまでは、多少「コミュ障」くらいでも、自分の進みたい方向に突き進むのって、そんなに悪くないとは思うけどね。

ところで高校には合格しましたか。それともこれから受験勉強ですか。昨今発生した中学生の自死事件を見て、ふとあなたのことを思い出しました。
苦労も挫折もあるかもしれないけれど、案外世の中なんとかなるものです。

お元気で。
by Mosel (2016-03-17 09:12) 

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