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「集団的自衛権」の行使容認 ~と小川和久の苦しい矛盾について [社会情勢]


 本年2014年は、第一次世界大戦から100年ということもあり、関連書籍が出はじめている。日本人研究者による書籍としては、岩波書店からそのものズバリの「第一次世界大戦」がシリーズ刊行されている。
 その第一巻総論に、このようなことが書かれていた。作家ツヴァイクの引用を元に当時の情勢を記している。曰く「ほとんど半世紀の平和の後で、一九一四年における大衆の大多数はいったい戦争について何を知っていたであろうか。彼らは戦争を知らず、ほとんど戦争のことを考えたこともなかった。戦争は一つの伝説であり、まさしくそれが遠くにあることが、戦争を英雄的でロマンティックなものにした」




 さて15日。安倍晋三がとうとうやらかした。予想できる展開ではあったが、内閣法制局長官の不祥事なども含め、ガッタガタな状況の中、戦後誰もがやらなかった「集団的自衛権」行使-という海外への戦争戦略-を、しようとしている。


今の自衛隊海外派兵は集団的自衛権の行使?語るに落ちる小川和久の論理

 5月16日朝、安倍が集団的自衛権行使を発表した翌日16日、テレ朝のモーニングバードに、小川和久という、湾岸戦争の頃からテレビに出始めた、軍事アナリストとかいう人が出ていた。90年頃、この戦争を機に自衛隊(と言う名の日本軍)を海外に派兵したいという、自民党タカ派の野望が、結局翌々年のPKO法成立につながった。あの頃嬉々として兵器解説をしていた、軍事アナリストなる人物たちは、多くはその動きを後押しする役割を果たした。
 さてそのPKO法に基づく海外派兵、当時から政府が言う「個別的自衛権」を逸脱するものではないか、憲法違反の集団的自衛権行使ではないかとの意見が多かった。

 カンボジアに始まった自衛隊の海外派兵は、今やイラクやスーダンなどへも派兵されている。

 小川は言う。「すでに集団的自衛権の行使は行われているんです。その現実を認めることなんですよ」-「戦争をする国になる」という人民の不安・批判に応えてのものだろう。顔を真っ赤にして、改憲策動を危惧する作家、吉永みち子に躍起になって、無礼な態度で反論する。いわゆる「必死だな」という反応。

うひょう!びっくりしたなあ!語るに落ちるとはこのことだ

 まず、始めにね。

 今の自衛隊海外派兵は、個別的自衛権の範囲を超えるものだから止めるべきだ、という反対論に対して、集団的自衛権の行使には当たらない、と政府は何度も答弁している。それを詭弁と批判してきたのは革新政党の側なんですよ。
 それがこの男は、ソウヂャナイデスヨー、と言っちゃったんですね。
 安倍へすり寄るあまり、自らが依り代とする政府の見解と矛盾した発言をしてしまった。なんだ、連中の本音は、とっくに憲法を踏み越える活動を、自衛隊がしちゃっている、という認識なんだ。それならね・・。

憲法に違反する国家が存在するならば、それはすでに立憲国家ではないんだな

 これが個人の行為であれば、違法状態であっても、法には不備があるものだから、現状に照らして法律を変えたり解釈を見直したりと柔軟に対応することは、あって良いものだろうと思う。
 だが、国家機関が行っていることが、しかも憲法に照らして違憲である場合には、憲法を変えるのではなく、まず国家の行為を制限しなければならないのが常道だろう。これが立憲主義というものだ。
 安倍晋三にはそもそも立憲国家というものが分かっていないとの評があるが、その取り巻きや支持する連中もまた、同じ穴の狢ということのようだ。

 まあ、小川の言うことは、安倍晋三の会見内容にも通じる点がある。それは「戦争をする国になんかなりませんよ。今までと同じですよ」ということ。だから現状維持だということをことさらに強調しようとする。

 けれどなぜ、現状維持なら今こうして政府見解を変える必要があるのだろうか、という疑問に答えることができない。だから苦しい弁明が必要になる。苦しいからこそ、言葉が厳しくなる。だからコメンテーターにも厳しいが空疎な言葉で当たる。
 なんとわかりやすい愚か者だろう。

・・・・・

 冒頭引用した書籍には、ツヴァイクの引用を通じ、第一次大戦前夜の状況をこのように評していた。

「各個人がその自我の高揚を体験し、彼はもはや以前の孤立した人間ではなく、彼は群衆のなかに加わったのであり、彼は民族であり、それまで眼中に置かれなかった彼の人格は、ひとつの意味を獲得したのであった」。

 冒頭取り上げた一文も含め、なんと既視感のあることだろう。ネトウヨなど、「保守」ですらない右翼言質がかまびすしい現状に思う。この日本と、第一次世界大戦前夜のどこに、違いがあるのだろうか。

 かつて日本も大規模な戦争をしていた時代があった。それが終わったのはたかだか70年ばかり前。私の親もそうだが、それを経験している世代はまだまだ生き残っている。その世代は、忘れゆく戦争への記憶を、どのように考えているのだろう。戦争が終わって、

よかった!

 と思っている人の証言を、私は多く耳にした。なにせ「老人病院」で働いている私は、多くの患者やその家族から、戦争体験を聞くことができた。

 今はどうなのだ。いったい、今は。戦争前夜では、ないのか。

 安倍晋三は、もはや、それそのものが違憲の存在だ。憲法違反の安倍政権は、直ちに退場しなければ、ならない。

タグ:憲法
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cheese999

日本は独裁国家でしょうか(^_0)ノ
by cheese999 (2014-05-21 05:53) 

Mosel

独裁、というか長年自民党政治が続いたために、行政組織が自民党を欲してしまう、だから政権交代すると、ほとんど自民党と変わらない政党であっても、行政組織がサボタージュする、構造的に自民党が政権につかざるを得ない国家になっているように思います。
小選挙区制など、民主主義を機能不全に陥らせる制度も、その要因かと思います。
by Mosel (2014-05-21 06:56) 

ぬくぬく

いや、オモロイ。
世の中にはジエーケンしかなく、ケンポーでコーシが認められているのはコベツテキジエーケン?
だから、PKOもコベツテキジエーケン?
マジで何言ってるのかイミフ。

PKOにはジエーケンは何も関係ない。自衛権とは、他国に自国領域を侵害された国が、その侵害者を排除する権利の事。
PKOは自国領域で行う活動ではなく、コベツテキジエーケンなど該当しようがない。
シューダンテキジエーケンはどうか。
これは侵害者の排除を行う国を助ける権利だが、PKOとは、侵害者の排除を目的とはしておらず、侵害者の排除を行う当事国が存在しないのだから、コーシのしようがない。
まず、PKOが何かを理解しないとお話にならない。

by ぬくぬく (2015-01-05 16:37) 

Mosel

ぬくぬくさん、こんにちは。

そうですね。まさにそうだからこそ、自衛隊という事実上の軍隊を、PKO派兵することは憲法違反だと、我々は数十年前から指摘し反対していました。
軍事行動そのものですから。

その根本には自衛隊が憲法違反であるという、今の若い子には、ぱっと認識できない概念があります。
これもまた数十年前には学説上一般的なものでした。
by Mosel (2015-01-06 06:57) 

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