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仕事でのことを個人のサイトに書く、ということ [雑想]


 前回Facebookに研修風景を載せた研修医の「事件」を書いたけれど。

個人による情報発信は萎縮しない方がいい

 会社や組織で行われたことを、軽々に個人のBlogやFacebookで書くのは、中には褒められない場合もあろうけれど、会社の重要事項や機密事項、顧客や患者などの利用者情報を公開するのでもなければ、それは個人の裁量に任されるべきことではないかと思う。
 多くの人には何の役にも立たない。けれどある人には役に立ったり、何か影響を与えたり。それは個人のBlogがもつ特性だろう。

 そうしたものが有象無象にあるのがインターネットの世界であって、それは現実世界と何ら変わらない。ただ現実世界と情報世界の特性の違いはあるから、それを考慮していればよい、とも考える。

 だから仕事でのことを個人Blogに書くこと行為に、「勝手に」とか「許可なく」と前置きして、非難したり処罰したりする動きがあるらしいが、私はそれは何か違うのではないか、と考えている。
 過剰に情報発信を否定するような反応は、いずれ所属組織に関わるあらゆることを、個人が書けないということにもなりかねないし、少なくとも萎縮にはつながるだろうと思う。
 そしてそれが世に敷延すると、最終的には柔らかな-そう、日本お得意の自主規制という形をとった-情報統制にもつながっていくのではとも思う。機密保持法制が突然強行されそうになっている昨今、この点には十分な注意が必要だ。



Blogに公開する考え方

 私は、Blog等に様々を公開することについては、その公益性と、組織や個人(この場合Blog主ではない他者)の機密度やプライバシー性との関係で考えるようにしている。
 つまりは図にすると単純にこんな感じ。
 図の○の部分が公開してよい範囲。

高|○○○○○○○○○
 |○○○○○○○○
 |○○○○○○○
公|○○○○○○
益|○○○○○
性|○○○○
 |○○○
 |○○
低|○
-----------
 |低  機密度  高


 もちろん現実はこんな単純な図式にはならない。

 公益性は、公開することで何かの役に立つか否かということ。その指標は様々と思う。さらに公開する事柄のみならず、Blog主自身の社会的な影響力の大きさや、その時々の社会情勢にも影響される。Blogは時として長期間(私のBlogももう8年続いている)の記録となる場合もあるから、同じ人物であっても記載した時期によって公益性に変化が生じることもあろう。

 機密度については、会社・組織が求める機密と、ごく一般的な社会が求める機密は違う場合が往々にしてある。不祥事や事件の隠蔽などがその最たるものだろう(*)。他者の「個人情報」という点から見てみると、その情報をどこで知り得たか(業務上なのか私的な活動なのかでも違う)、またBlog主がどのような職種なのかでも違ってくる。
 Blog主の私生活を書いたものであっても、そこに他人が入っていれば、その「他人」の受け止め方によっても違う。
*これらに関する「告発」をBlogやTwitter等で行うことの戦術的な是非はここでは問わない。

 だから、さっきの図は上記の関係性により

高|○○○○○○○○○
 |○○○○○○
 |○○○○
公|○○○
益|○○
性|○○
 |○
 |○
低|
-----------
 |低  機密度  高

 となったり

高|○○
 |○○
 |○○
公|○
益|○
性|○
 |
 |
低|
-----------
 |低  機密度  高

 となったり

高|○○○○○○○○○
 |○○○○○○○○○
 |○○○○○○○○
公|○○○○○○○
益|○○○○
性|○○
 |○
 |○
低|
-----------
 |低  機密度  高

 となったりもする。

具体的なケースでは

 具体的にはどんなケースがあるだろう。私が見聞きしたものから考えてみる。

1.個人のBlogに、とある「知り合い」と「食事」に行き、その知り合いの「祝福される事実」が書かれていた。Blog記事は第三者から見ると「ほほえましい内容」だった。知り合いはそのBlogの「存在を知らず」、「他人から」食事をした事実を聞かれてBlogのことを「初めて知り」、「驚き」と共に何となく「気味の悪さ」を感じた。

2.ある医療関係者が、匿名のBlogで、個人が特定されないように注意しながら、自分が「仕事で知り得た」「患者」の「いい話」を書いた。読者は「心温まる」とか「考えさせられた」と「好意的」な反応をコメントに残した。

3.ある会社で「不正な事件」があった。その「会社の社員」が、「匿名」の「Blog」で、「会社名を書かず」に「事件のあらましと経過」を書いた。そのBlogの開設後まもなく事件は「新聞で報道」された。報道のあと、その社員は程なくして「Blogを閉鎖」した。結果に満足したか、会社に処分されたかは不明である。

 どう思うだろうか。

 私の評価からすると、1と3は公開に値する、または公開することに問題のないケース。2については、個人的には承伏できない内容だ。それは私が医療人として、患者に関わる情報については、よほどの公益性がない限り、承諾なく軽々に取り上げることではないと思っているから。
 けれど私のこの尺度は、他人とは違っているかも知れない。特に2の評価についてはそうだろう。

 けれどこれでいいのだと思う。世間一般で暮らしていれば、「こいつひどいこと言うなあ」「私はそうは思わないけどなあ」という場面に少なからず出くわす。ネットの世界も同じなのだ。
 ただネットに公開すると言うことは、その情報が意図せず拡散されたり、取消しや消去が難しい局面に突き当たることもある。

 そうなった場合、書き手は収拾できるか。ネットで意見を書くということは、実世界と同じく、それなりの責任も伴うということだ。その人としての責任を自覚できているか、という点も、書き手には問われることのように思う。

何か足りない?そう・・これが足りない

 私は「公益性」と「機密度」という2軸をおいた。この間、冷蔵庫などに入って写真を撮って公開する、いわゆる「バカッター」事件を念頭に置くと、何かが足りないよねこれ、という印象を抱かれる方もいると思う。
 そうだ。今となっては第3軸として「反社会性」を加える必要があるのかもしれない。

 いや、「反社会性」事象の掲載については、その掲載によって自らを知らずに「告発」していると考えられなくもない。そうするとここは公開することの「公益性」という尺度で測れるだろうか。

私自身のこと

 さて自分のこと。私も仕事でした内容を、このBlogに掲載することがある。それは「医療情報技師」という肩書きを持っている病院職員が、何をしているかということを伝える。それもこのBlogの役割かなと考えている。一応Googleの検索上位Blogでもあるし。

 そして仕事上、ニッチな技術的問題に突き当たって困ったときに、サイト検索をして、他のBlogなどに助けられたことも個人的にはあり、それもあって私の知り得た技術情報はなるべく公開してあげたいという思いもある。
 それはもちろん私が所属している会社を、むやみに毀損することがないようにも配慮している(というか私は自分がどこで働いているかを公開していない)。
 そうして書いた、例えばシステム更新とか、Kingsoft Office、Symantec Endpoint Protection導入記録などは、このBlogの人気記事になっている。エントリ単体で数万ものアクセスをもらっているものもいくつかある。

 一方で私は、私が所属している会社以外も含めて、組織批判やマネジメントについて書くこともある。同じようなことで悩んでいる他の人に、解法(マネジメントに解法やマニュアルはない)ではないけれど、何らかのヒントを得てもらえればとの考えがあるからでもある。
(ちなみに「無責任な上司」とGoogle検索すると、私のBlog記事が割と上位に引っかかる)

 5年前と比べて、アクセス数も10倍ほどになった。「公益性」と言うと大げさかも知れないが、こうしてたくさんの人に、私のBlogエントリを読んでもらっていることは、ある程度、役に立ってくれているのかな、と考えている。

 ・・まあ、基本は「絵日記」なんですが。
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ponnta1351

ネット社会になって便利になった一方で、危険、事件性も沢山見られます。
何の考えもなく拙いブログをやっている一人として、考えさせられた記事です。

犬猫などの他愛ない記事はどこにも影響はないでしょうが、私は、本当は正直に思っていること(原発や今の阿○、東宮等々)の事を書きたいのですが。 過激なブログも有りますよね。

 ま、日記風に当たらず障らずのブログで終始しそうです。
by ponnta1351 (2013-10-25 11:04) 

Mosel

ponntaさん。いつもありがとうございます。

長い記事ですみません。

私は、記事の中に登場する人物が自分以外の場合、それがたとえいい話であっても、相手の情報は相手のもの、という原則を持って記事を書くように気をつけてはいます。
病院で働いていることもあって、職員、特に医者が発信する情報には、時々ヒヤッとさせられるものがあります。実際に患者のことを書いて問題になったケースも聞いたことがあります。
医療関係者や業界関係者のBlogで、毎日のように更新し非常に興味深い内容を書かれていたのに、ある日ぱったりと更新が止まってしまったり、Blogが閉鎖されたりというのを見てきました。

私のBlogも、過去の記事には結構微妙なものはありますが。

ただ、書く相手が公人である場合は、話は別。公人相手にはのびのびと、そして自らを傷つけない程度の、節度を持った記述にするのがよいかなと思っています。
by Mosel (2013-10-25 20:23) 

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