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第31回医療情報学連合大会~情報部門が使える組織になるには [医療情報技師というお仕事]

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会場:鹿児島市民文化ホール 桜島がよく見えるという理由で選定されたそう 素晴らしい景観

 11月、毎年恒例の、医療情報学会の大会に参加する。以前のエントリに書いた通り、今年は鹿児島だ。

 今回は遠いこともあって、前日の日曜日に出発する。初日は9時から参加できた。やっぱり日程に余裕があると気持ちが楽だ。

大震災の影響~事業継続を如何に進めるか

 今年は大震災が発生し、病院運営や情報システムの継続運用に関しても重大な問題を投げかけたこともあり、被災地の石巻赤十字病院や大船渡病院からも報告があった。両病院とも地震発生後わずか10分で緊急体制を敷き、被災者を受入れていたとのこと。場所が確保できず屋外で処方箋を発行したこと(翌日は降雪のため屋内に移動)や、自家発電で診療していたが燃料切れ直前で停電が回復したことなどが印象に残る。
 通信手段がなくて、少し離れた街の状況が分からない。衛星携帯電話は通じたが、連絡を取りようにも連絡先が破壊されていて電話が通じない。(被災していない)遠くの状況は分かるが、隣町の状況が分からない。情報の途絶による孤立化。災害時の情報途絶がどれほどの不安を生むか。情報システムのみならず、根本的な部分で対処が必要なことを痛感する。

 さて、こうした大災害時に、事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)をたてている病院はさほど多くない。当院もそうだ。都内の大きな病院が、あのときどれほど苦労したか、そしてどのように運用したかの報告もあった。
 3月の停電騒ぎでは、当院の情報システムは完全に稼働可能であることが立証されたが、しかしだからといって、情報システムが使用できなくなった環境を想定した手順は整備しなければならない。実はまだほとんど手をつけていないのだ。
 もっとも、完全ペーパーレスではない上、療養型病院でもある当院は、案外情報システムが途絶しても、何とかなる場合があるものだ。それこそ数時間の停電では、さほど大きなトラブルとはなり得ない、と考えてはいるし、それを踏まえてシステム設計をしたけれども。

EHR-医療健康データベースは医療のみで完結を

 情報保護に関するシンポジウムでは、情報の匿名化についての新たな知見が得られたが、その中でちょっとした話から、ここで2~3年ばかり前に書いたことへのヒントが得られた。

 日本版EHRのことだ。

 私にはこのEHR(Electronic Health Record:つまりは統合的な国民医療健康データベース)、まだまだ一般大衆には漠然としたものであるEHRは、各種の情報を鑑みるに、日本ではどうやら納税情報や健康保険情報などとリンクした、EHRにとどまらない総合的なデータベースとなるような方向に向いているように見える。

 しかしEHRを運用しているオーストラリアにおいては、EHRは「医療にしか使わない」ことを明確にして、ようやく国民各層の合意が得られたものとのこと。日本とは逆なのだ。
 様々な情報が統合されて、それはそれで確かに便利になる。しかしこのオーストラリアの事例は、今後EHRを推進する上で、貴重な教訓となり得ないだろうか。私が08,09年の学会参加後、EHRに対する危惧を書いたけれども、今政府が進めようとしている方向性は、果たして人民の合意が得られるものとなり得るだろうか。
 もっとも一番重要なのは、「政府を国民が信用するか否か」に尽きるような気もするが。

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会場近くに止められていたホンダビート 素敵なたたずまいだったのでつい・・

医療情報技師~重要な役割を担うにはまず自分も努力を

 昨年に引き続き、医療情報技師の懇談会があった。去年はアルコールが入ったので、車で来た私は参加出来なかったが、今年は参加できた。
 主催者によると時間がなく去年のように大がかりに出来なかったとのことだが、この程度の距離があった方がいいような気がする。
 関東ブロックに参加して、色々と話をする。ベンダさんから気になる話を聞く。「病院幹部がシステム系職員をコストセンターとしてみている。オタクなやつだから金ばかり使って」と。しかし彼がみるには、病院のために献身的な努力をして、コスト削減のための努力もしている人だとのこと。そんな例を2件みたと。病院の事務長から、「情報システム部門が何をやっているのか分からない」とも言われたと。

 頑張っている職員からみたら切なく、悲惨な話ではある。けれどね。

 本来は組織運営に重要な役割を果たすようになっているはずの、情報システム部門の役割が、経営陣に理解されていないというのは、 何を意味しているのか。
 それはこのBlogでもるる批判してきた、情報システム部門が経営陣になんの価値も見出せない存在でしかなかった、役に立つ存在たり得なかった、その結果ではないかとも考えた。

 私もかつて、病院のマネジャー職として働いていたが、その病院のシステム部門は、どんなデータを求めても「それはできません」しか返答がない。むしろ医事課やその他の部門に聞く方が詳しいデータを持っているなんてことが常態化した。(当時珍しかった)カラーレーザープリンタから出力したい、という希望にすらも「それはできません」。結局自分で設定して出力したが、これでは情報システム部門が何のためにあるのか分からない。そんなコストセンターに存在価値などあろうか・・。

 まあ、私のいたところは極端な例だけれども、それでも様々な会社の情報システム部門の危機感を見るに(08年のITproEXPOでこんなシンポがあり記事にしたことがあります)、経営幹部が言うこれら情報システム部門への批判は、気持ちとしては何となくわかる。

 そうだ。病院の上層部なんて、日経メディアで厳しく批判されているみずほ銀行以下なのだ。あれほどの大損害をだしたみずほ銀行の、それ以下。その状況下で情報システム部門が何をするのか。愚痴だけでは何も改善しない。なにをやるのかを定義し直す必要があるはずなのだ。上が変わることを待っていてはいけない。まず自分が踏み出さなければ、そう思う。
 最近私もつまらないミスが増えているから気をつけなければ。加齢かなあ。しょうもないミスは案外現場の信頼を失うものだから。

今年はちょっと面白かった

 なんだか(私にとって)毎年少しずつマンネリ感が増加してきたこの大会、けれど今年は初日の講演なども含め、ずいぶんと実のある内容だった。なぜだろう。昔の話しが好きだったからかな。それとも日程に余裕があったからかな。今度の大会は新潟なので、やっぱり前泊しようかな。

 あ、ランチョンセミナーの弁当は大変おいしくいただきました。関係のベンダさんありがとうございました。豪華な内容でびっくりです。
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ponnta1351

明けましておめでとう御座います。
今年も宜しくお願い致します。

色々ある一年になるかも知れませんが、時々お邪魔させていただきます。
良いお年でありますように。
by ponnta1351 (2012-01-02 11:53) 

manekiuri

あけましておめでとうございます^^
今年もよろしくお願いいたします。
素敵な1年になりますように!
by manekiuri (2012-01-02 15:34) 

Mosel

明けましておめでとうございます。
そしていつもありがとうございます。
週に一度も更新しないこのBlogですが、今年もよろしくお願いします。
by Mosel (2012-01-03 09:08) 

ayu15

悪い人いなくてもおかしなことになり・・。ていろんな組織であるみたいですね。

空気読んで波風立てないがいけないわけじゃないでしょうけど、ちゃんと意見が言える提案ができる雰囲気がないとみずほやオリンパスなどのようになるんかもという気もします。

by ayu15 (2012-01-17 10:02) 

Mosel

ayuさんこんにちは。

善意で塗り固められている組織でも、おかしなことになる事例をいくつも見てきました。
「悪」と思ってやっている人より「善」と思って結果的にダメなことをしている人の方が、正すのには苦労します。悪いことしている人には注意すればいいのですが、善意でやっている人には、まずそれがダメな行為だということを分からせることから始めなければなりませんからね。

意見・質問や提案がしやすい組織をつくっておけば、そんなに苦労もしないのでしょうけれどね。
あなたのおっしゃるとおりですよ。
by Mosel (2012-01-17 10:54) 

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