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専門家とは何のために存在しているのか ~福島原発事故に関して [社会情勢]

 私は一応情報システムのプロとして仕事をしているが、プロがシロウトに対して・・

・「ウソをつく」
・「相手に責任転嫁する(ならおまえがやれ、みたいなセリフも含む)」

 これらは決して、してはいけないことと考えている。

 そうは言ってもシステム部門というのは不確実性の高い業種で、よくわからないことも多々ある。そんなあいまいな情報源で判断せざるを得ない場合は、その情報の確度をなるべく相手に示す。私の話がどれほど信頼できるのかを、ある程度相手にも判断できるように。
 そしてなるべくわかりやすく。このトラブルはなぜ起こるのか、どこが原因なのか、どう回避できるのか。
 そして分からない場合は、「わからない」とはっきり言う。それが私の限界だと。

 プロにウソをつかれてはシロウトは判断を誤る。またそれがウソだったとばれた場合、プロへの信頼が一気に消滅する。
 ましてやシロウトに仕事を押しつけては、プロとしての存在価値がなくなってしまう。

 思えば結構そんなことをされた。昔、取引先のシステム営業にあり得ない発言をされたことを、いまでも苦々しく思う。
 連中はこちらが知らないからと思って適当なウソをつく。あんたらと私達は同じレベルではないのだ。見え透いたウソをついてもすぐにわかる。私はわざわざ指摘はせず、ただ連絡を取らなくなるだけ。契約を切るだけだ。次回の契約更改をしないだけだ。

 そして同じプロとして、原子力に関わる輩のプロフェッショナリティに、私は非常な疑問を感じるのだ。

プロを信用できなくなっている原子力関連の状況

 私の住む市でも、とうとう放射線量の測定を始めるのだそうだ。まあ東京西部は、個人的にはあまり心配するほどの放射線量ではないと思うけれど、6月頃から多摩地域でこのような市がいくつかではじめた。なぜそんな動きがこんな時期になって、と思う。しかし。

 東京東部ですら年間被曝1mSvを超えるような地域があちこちにでるわ、静岡の茶がセシウムが多くて輸出停止になるわ、輸出した相手国で検査したら発覚したとか、そんなニュースを見ていると、そりゃ皆さん心配になる。

 ましてや都議会議員や週刊誌が独自に調査した数字が、ことごとく政府発表数値よりも高いとくる(注)
 肝心の原発も「電源が復旧したらもう安全」「汚染水の循環システムがつながったからもう安全」みたいな報道を繰り返しながら、ことごとくこれらがうまくいかず、2ヶ月もたってメルトダウンを認めるわ、国連から情報の透明性について懸念が表明されるような福島事故の状況である。

(注)政府発表数値と同じであればニュースにならず、超えている数値についてはニュースになるから、という事情もあろう。

 ぜんぜんジャンルの違う雑誌「クルーズ」には、なぜ豪華客船の日本寄航が減ったのかという点に関して、正直に大要こう答えた会社があった。「日本そしてIAEAが事態の全容を把握できていない状況下で、私達が安全ですと宣言することはできない」と。セレブ向け客商売に日本の「風評被害」なんて言葉は関係ない。ある意味当然の反応と言える。

 決して安くない(安くても4万円から)ガイガーカウンターが、どこのネットショップでも売り切れ。20万円を超えるような機械ですら品切れになっている。
・・実は秋葉原に行けば結構在庫はあるんだけれどね。

 結局これらの事態がなぜ起るのかを考えてみた。

 それは原子力関連のプロフェッショナルに対する不信感のなせるわざと言うことだ。

 だからこそ自分で数値を調べたい。過去に存在した日本政府、そして世界の基準値やらチェルノブイリの経験やらを調べる。そしてわかった。この福島原発事故の異常性を。

 安全基準がやすやすと書き換えられているこの状況を。そしてその根拠が実に脆弱であると言うことを。

数百万分の一の確率でも子を持つ親は不安になる

 もう10年以上前になる。1999年、ポリオワクチン接種に伴う副作用が、単年度で立て続けに2例発生したことがあった。マスコミで騒がれたこともあり、大きな話題になった。
・・ちょうど私が小児科病院のマネジャーになった頃だ。

 経口摂取型ポリオワクチン(OPV)は、どうしても数百万人に1例は、ポリオワクチン由来麻痺(VAPP)という副作用を発症する。これは実は毎年発生(今現在も)している。国立感染症研究所の週報には必ず毎年、ポリオ患者の数値が掲載されている。
 しかしマスコミでセンセーショナルに取り上げられたことで、当時の親は大変に動揺した。あのとき、ポリオワクチン摂取率も若干は下がったはずだ。

 しかしこうした事態におびえる親を私は単純に批判はできない。子を持つ親とはそういうものだ。きちんとした情報を伝えても、リスクを甘受できる人と、そのリスクをすら受け入れられない人もいるはずなのだ。
 ましてや今回の原発災害は甘受するに足りるベネフィットが存在しないのだからなおさらのこと。

 だからこそ正しいデータを提示すべきなのに、恐れる人々を十把一絡げにして「安全」を連呼し、それに逆らう人を「風評被害だ」「ヒステリー」と叫ぶ連中を私は受け入れられない。

原子力のプロフェッショナルは安全をわめくのではなく謙虚になれ

 こんな事態に、親父ばりに「反原発ヒステリー」と騒ぐ国会議員がいたり、かつての資料をもとに「100mSv以下の被曝は癌の発生率に有意差はない」とか言い出す輩もちらほら見かける。これらの人々が叫ぶ論拠は、果たして正しいのか。そもそも原発を推進してきた人々のデータではなかったのか、と言うことを考えたい。

 今国をはじめとする機関が行うことは、人民に対して正しいデータを、統計上は正しいのかもしれないが、異論が多く出ている、例えば原爆被害だとか、どれだけの調査が行われたのか怪しいチェルノブイリ関連の情報に依拠するのではなく、わからないことはわからないと認めたなかで、謙虚に放射能の健康に関する被害についての情報を伝え、予防原則を基本として、適切に避難、補償を当該地域に実施することが必要と思う。

 経済的・社会学的な事情にとらわれることなく。
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ayu15

謙虚ですか。確かにそれが不足していたように感じます。小出さんら数少ない危険な面を指摘する人を「不安あおる偏屈」と追いやってしまったのも要因かも?


保護者の例にあるようにどこまでリスク受け入れられるか人により違いますよね。

そしてどこまで確率の低い?リスクに警戒ができるのかも。


by ayu15 (2011-06-27 11:24) 

ponnta1351

長い文、拝読しました。
コメントのピントがずれて居ますが、原発再稼働で不安材料がまた増えました。
安心と言う言葉を、信じるわけには行かないんですけど!

経済産業省の現役官僚古賀さんと言う方が、著書で政府の原発批判をした事で退職要請を出されたんですって。

全く腹立たしく思います!
by ponnta1351 (2011-06-27 12:14) 

Mosel

ayuさん、こんにちは。
謙虚、というか批判的な意見を徹底して排除するところに問題があるんでしょう。立命館大の安斉先生への処遇はつとに有名になりましたが、そんなことをやっているから原子力「ムラ」なんて言われる。そして-彼らにとっての-想定外の事故が起こるとあたふたしてしまって、海外からも不安視される。大丈夫かよこの専門家連中はって思いますね。

個人的には千葉クラスの放射線量でさえも、大きな問題は生まないんじゃないかって思ってはいますが、可能な限りムダな危険からは逃れたいと思うのが、子を持つ親の心情でしょうね。

by Mosel (2011-06-27 15:13) 

Mosel

ponntaさんこんにちは。なんかだらだらと書いてしまってすみません。

原発の再稼働は、とりあえず福島の状況を落ち着かせてからにしてもらいたいですね。
原発立地自治体で、原発再稼働に否定的なところが増えています。安全安全言い続けて、いざ事故が起こったら、こんなにもあたふたしているところを見せつけられたらそりゃ再稼働を拒否したくもなりますね。

古賀さんの退職問題は騒ぎになっていますが、個人的には組織にとって著書出版までされたら、退職要請は仕方ないかなとは思いますが、どうでしょう。
この点については、イラク戦争関連でクビにされた天木さんの意見にちょっと同調しちゃいます。Blogosに記事が載っていました。
by Mosel (2011-06-27 15:29) 

shira

 こんにちは。ご訪問ありがとうございました。
 メディアにたくさん露出することが許されている(イコール、メディアや政財界的に好ましい存在の)専門家さんたちは、とにかく「大丈夫です」と言い続けてますけど、私なんかは「お前らシロウトはホントのことを聞いても理解できずにパニくるだけだろうからオレたちが決めてやるよ」と言われているみたいで不快ですね。
 曲がりなりにも民主主義社会ってのは構成員はみな一応の判断力を持った市民であるという原則に則っているわけで(だから選挙結果は重要)そうである以上、専門家さんたちは言葉を尽くして理解をさせて、最後の判断は市民に委ねなければなりません。最終判断までやるのは傲慢です。
by shira (2011-07-04 23:36) 

Mosel

shiraさんコメントありがとうございます。
おっしゃること全くその通りと思います。なぜガイガーカウンターが日本で大売れしているのか(海外から買おうとすると、「日本向け特別セール」なんてやっていたりします。高いですが)、安全を連呼する専門家連中には、その理由を考えてもらいたい。
安全かどうかを判断するのは私たちです。専門家は正確な情報を伝えればよいと考えます。
by Mosel (2011-07-05 06:59) 

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