ロシア革命とアヴァンギャルド-ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし [雑想]
チケット チケットのデザインははっきり言ってイマイチだ
東京都庭園美術館で催されている企画展、「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」に行く。4月からやっていたのだが、ようやく都合がつき、6月の半ばになって行くことが出来た。
同時代の芸術?運動にはイタリアから始まった未来派や、中欧のアヴァンギャルド、バウハウス、ダダ、デステイル、そして日本にもアヴァンギャルド芸術はあったけれど、その破天荒さと分野の広大さで、ロシア・アヴァンギャルドがもっともすさまじい運動であったように思う。
展示作品は非常に多い。初期の絵画からコンポジション、マヤコフスキーのコピーをアレンジした各種のポスター、舞台衣装や本のデザイン、そしてフォトモンタージュに写真と、多彩な二人の活動が見て取れる。
国営商店や映画のポスターデザインを見ていると、よくもまあこのようなデザインを、当時の責任者たちは許容したものだ、と考えてしまう。そしてそれが革命当初の熱狂と自由さの現れだったのか、とも。
今見ても新しい、ポスターデザインの元祖・・と朝日新聞などで紹介されていたけれど、ポストモダンからの回帰現象の中で、巡り巡ってまた注目された感がなくはない。古めかしく懐かしく感じるのは、私がこのような作品に触れてもう十数年もたつからだろう。
以下ポスター3種は「革命の芸術・芸術の革命」IPC:1990年。原本は「Сердцем Слушая Революцию…(心を込めて、耳傾けよ、革命に)」レニングラード・オーロラ社:1979年
*翻訳文も同書から。著作権を考慮し、画像のクオリティを落としています。
ロトチェンコ/マヤコフスキー「レジノトラストはわれらが守護者、雨にもぬかるみにも。オーバーシューズなしに、ヨーロッパはただ泣くだけ」-ゴムトラスト広告ポスター:1923年
ロトチェンコ/マヤコフスキー「誰もまだ見たことのない、極上の乳首、年寄りになっても、使えますよ(おしゃぶりの広告)」:1923年
ロトチェンコ「レフ創刊号 表紙」:1923年
上記2点および「新レフ」6号の表紙が会場展示されていた(上記2点ポスターは65年制作の復刻版を展示。もっともオリジナルポスターも結構あった)。
私は同時に製作年を気にして見ていた。ロトチェンコもステパーノワも、1950年代まで生きていた人だ。しかし絵画やポスターは1934年くらいで途絶えている。写真も40年代以降のものはない。
彼らの興味がデザインから写真に移ったのだろうか。それもあるかもしれない。しかし30年、マヤコフスキーの不可解な自殺、40年のメイエルホリド粛清によってソビエト・ロシアにおけるアヴァンギャルドは死んだ。そのことと無関係ではないだろう。
戦艦ポチョムキンのポスター(復刻) キャンバス地にプリント 米国から輸入したもの
アヴァンギャルドはフォルマリズムと批判され、ロシアの芸術は社会主義リアリズムに移った。それは皮肉にも、ナチや日本帝国の戦争絵画に似通ったものになった。
スターリニズムはロシア・アヴァンギャルドを、ファシズムはバウハウスを、天皇制ファシズムは日本のアヴァンギャルドを敵視した。たとえ戦争中に敵味方に分かれていたとしても、独裁者たちの求める方向は同じだった。
大戦が終わってからも、スターリンは最後まで果敢に作品を作り続けていたセルゲイ・エイゼンシュテインを弾圧した。独裁者の孤独を描こうとしたイワン雷帝第三部は、ついに制作されなかった。その後のソビエト時代に、ロシア・アヴァンギャルドを研究することは、大変な困難があったと聞く。それがようやく解禁され始めたのは、85年のグラスノースチ以降とのこと。
こうした展覧会に行くと必ず思う。アヴァンギャルドを彼らが憎んだのと同じく、私はファシズムや独裁を憎む。そしてそのような社会が二度とこないよう、常に注意する。
さて。
「庭園」美術館なのでこんな洋風庭園や
こんなところも。静謐なところかと思えば・・。
すぐそばに首都高!結構な騒音。
東京都庭園美術館は、旧皇族の朝香宮の邸宅だったところ。贅を尽くしたこの建物に、ロシア革命を文化面で牽引した芸術の展示が行われる。なんだか王宮を接収して公共施設にした、革命ロシアを思わせますなあ。
ポスター 楽しめますね!
・・・チケット のほうは。。。ほんとだ。。。(笑い)
by manekiuri (2010-07-04 11:16)
印刷されたポスターとはいえ、当時のものは大変希少だそうです。内容豊かな展示会で、残念ながら6/20で終了ですが、9/19から宇都宮美術館でも実施予定。宇都宮はバウハウスの収蔵品が大変多く、こちらもオススメです。
by Mosel (2010-07-05 06:45)