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否定的なフィードバックは難しいが、よりにもよってここまでひどいとは・・ [現場のシステム]

 会社に限らず、組織というものは、利害関係がぶつかったときに、そのどちらかを優先させざるを得ない場合がある。どっちも正しいんだけれど、組織の今後を考えるにあたり、どちらかに不利な状況を飲んでもらうことがある。

 そのワリを食わされる側、つまり妥協しなければならない側に、いかにして納得してもらうか。非常に難しいことなのだが、その対処の方法こそが、その組織の力量を端的に表すと言えると思う。


 以前フェアプロセスについて記した際、その中でふれた論文に、裁判で十分な審議が尽くされたとその人が感じた場合、敗訴したとしても、裁判への満足度が高まると言うことが書かれていた。

 厳しい意見や不利な状況を甘んじて受け入れる、そんな人に対して、組織は最大限の敬意を表さなければならない、これまで私が経験してきた多くの事象から、そう思うのである。

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「正しい苦言の呈し方」(原題:A better way to deliver Bad news:Manzoni,2002)
・決断を迫られた人物は何らかの「フレーム」(思考の枠組み)を形成する-まあ固定観念のことですね。本人は「多くの情報から客観的に考えている」と誤解しがちですが

・人は困難な意志決定に遭遇すると、二者択一で考えがち。それが「勝つか負けるか」の思考方法に陥る。これが別の判断、別の解釈を排除して、交渉を暗礁に乗り上げさせる。

・交渉相手である部下に手痛いしっぺ返しをうけると、上司は否定的な話を伝える場合に甘言を弄して丸め込もうとする。しかしこの場合でも彼の結論は変わっていないので、やり方はどうあれ、交渉者は自分の結論に話を持って行こうとする。部下にとっては結論は同じだから、反発する場合もある。そうすると状況が変わらないまま、より悪い局面に突入する場合がある。

・だからこそマネジャーは相手にフィードバックする際に、自分の思考が偏向している可能性があることを自覚することが必要で、フレーミングに基づいた結論に飛びついてはいけない、ということである。

否定的なフィードバックを部下が受け入れるには
・上司が信頼の置ける人物でかつ、自身に好意を寄せていると感じられる。
・公正なプロセスを経ている。上司が必要な情報を収集するのみならず、部下の意見にも配慮している。
・評価の基準が一定している。

という単純かつ困難な要素が必要とのこと。

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 簡単なことだと思う。否定的か肯定的かに関わらず、何らかの意見を相手に伝えるには、その相手の人格を尊重すること、相手の将来を見据え、自らの言動に責任を持つことではないかと思う。つまり相手を大事に思い、それに沿った行動をすることではないか。
 相手に反発されるようなことを、反発されるようなやり方で、大事な相手に簡単に言えるのか。相手の気持ちを考えるでしょう?言い方に工夫するでしょう?話すシチュエーションも考えるでしょう?

 つまりは上司が部下をどれほど信頼しているか、相手を一人の人間としてどれほど尊重しているか、その結果が上司への信頼につながっている、それがここで問われると言うことだ。

 単純なことじゃないか?部下を大事なと思えばいいんだよ。

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 ある病院の事務職員が、その業績にかかわらず、不当に異動させられることになったらしい。異動だけが決まっていて、元の職場のことも、異動先も決まっていない。

 異動理由はある医者との関係性によるもの。事務職員はもちろん、その当事者たる医者すら納得していない異動事件。ただ事務系幹部職員のみがその案件を強圧的に進めようとしているようだ。

 そして、この職員に対して「面談」なるものが事務系幹部職員によって行われた。いろいろやり方もあろうに、こともあろうにその職員が一番納得できない理由から説明を初め、彼のこの間の業績は無視して、終始結論を押しつける内容であったとのこと。そして彼を含めた職員を-その事務系幹部自身の人格すらも-否定するかのような発言があったようだ。

 こんな形式の面談は、懲罰的な行為にすら見える。少なくとも彼はそう感じた。では彼が何か悪いことをしたのか?

 他の言い方、少なくとも今回の面談で出された以外の理由から話が始まっていれば、快く異動を受け入れていた、と言う彼。よりにもよって最悪の入り口から話題を切り出すとは・・。
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 私も病院に勤めているが、こんなご時世である。チーム医療がとやかく言われていたとしても、確保が難しい職種とそうでない職種に格差が生まれるのはやむを得ないのかもしれない。病院で言うと、一頃前は放射線技師、今では看護師全般と医師、薬剤師。そして病院によってはリハビリ関連の職員(PT,OT,ST)ということになろうか。ヒエラルキーの下層にいるのはいわゆる事務職員。まあ事務職なんて募集すれば数十倍の求職者があるし、賃金も安くすむからテキトーに扱っていればいいや、と思っている病院経営者も多かろう。何か問題があれば、とりあえず事務職員から責任を取らせよう、そんな安易な行為を、私は何度も目にしてきた。

 しかし病院で一番足りないのは、実は事務職なのである。そりゃ受付会計をやるだけ、診療報酬請求をやるだけ、経理や労務をやるだけだったら一般企業とそんなに変わらないし、すぐに人は集まろう。いざとなったらアウトソースすればいい。

 しかしここで必要とされているのは、もっと特殊な分野。病院をきちんとマネジメントできる人材。病院全体とは言わずとも、関連職場をまとめることのできる人材。医療のことも分かっているエンジニア(専門職)としての人材をさす。つまり「(業務独占をともなう)専門職」ではない人材を私は「事務職」と称する。同じ病院業務だから業務独占職と同等の「プロ意識」が必要なのは言うまでもない。

 医療業界は顧客が多いにもかかわらず、医療政策の貧困から、収入という面からの経営面、人材確保という面からの運営面、これらを見る限り「斜陽産業」に近い。そんな病院を適切にマネジメントするのは、それ相応の能力を必要とする。まずい運営を少しでもすれば、あっという間に人材流出、破綻の危機に陥るなんてのは、大手の病院でもよく見かけることになった。
 私も片足をつっこんでいる病院エンジニアのポジションは、ベンダとは違った視点、つまり技術力よりも、相手の要求を適切に解釈して、問題を解決することが求められる(まあこれは昨今のベンダにも必須のスキルだが)。

 そんな人は意外に少ないのである。しかも自身がテキトーに扱われるような職場環境で、いったい誰がスキルアップを図ろうとするだろうか。


 独占業務でないから、適当な事務をつっこんで、とりあえず何とかなるだろう、そんな適当な人事を行って、うつ病患者を生み出した組織があることは以前のエントリに書いた。
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 その「面談」の場で事務系管理職の一人は大要こう言ったそうである。「どうせ事務なんか医者に比べればゴミみたいな存在なんだから」。誰が「ゴミ」なのかはともかく、自らもそうである事務職を「ゴミ」なんて視点からしか見れないから、この人物を含めた事務職員のレベルが低い状況が続いている。

 この医療情勢の中にあって、我々の組織では「事務」のレベルアップが強く求められているらしい。しかしそのレベルアップが一番必要なのは誰だろうか。その解答を与えてくれるような事件であった。

 腐らずにがんばれ。まともな感覚の職員は、この事件の異常さを異口同音に指摘しているよ。
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