SSブログ

2004年のイラク人質事件バッシングに似てないか~朝日新聞「誤報」問題に群がる異様な言論空間に関して [社会情勢]

 同時代人として、この異様な言論空間にコメントせざるを得ない。

・・・・・

 何となく朝日新聞を取り始めて、もう何年にもなる。先日も契約更新のために営業所の人が訪問してきた。いつもはNHK番組改編問題とか、原発問題とか、一応報道しているのに何か煮え切らない、そんな朝日の報道姿勢にイライラもしていたので、いつもは契約を更新すべきかどうか思わせぶりにしているのだが、今回は即決だ。で、この間の情勢から、ちょっと質問してみたんである。

 「解約する人って、やっぱりいるんですか?」

 「おかげさまで、私の担当地区ではまだ誰も解約いただいていないです」

 それはよかった、と言おうとすると、営業の人はこうも言う。
 「この辺の地区の方はいいのですが、集金と営業を別々にやっている地区ではいろいろとあって」
 「配達していたら突然アパートから「朝日新聞、コノヤロー」みたいに怒鳴られて、バイクを蹴られて倒されたなんてこともあって」などという。

 それは器物損壊や威力業務妨害って言う立派な刑法犯じゃないか、と思う。

 少々前にこんなニュースがあって、ようやく「略式」起訴なんだそうである。

北星学園大に脅迫電話、容疑の男を略式起訴 札幌区検(朝日11月7日)

 慰安婦問題の記事を書いた元朝日新聞記者の植村隆氏(56)が勤める北星学園大(札幌市厚別区)に脅迫電話をかけたとして、札幌区検は7日、新潟県燕市の元施設管理人の男(64)を威力業務妨害罪で札幌簡裁に略式起訴した。求めた罰金額は明らかにしていない。  札幌地検によると、男は9月12日、自宅から同大に電話をかけて「(植村氏を)辞めさせないのか。ふざけるな。爆弾を仕掛けるぞ」などと脅し、業務を妨害したとされる。5月以降、植村氏の退職などを要求する脅迫文が同大に届いた3件の事件について、地検は別人による犯行とみている。(後略)


このような状況に、支援団体も立ち上がり、広範な層からの支持を得ている。

「負けるな北星!の会」(マケルナ会)

 先日7日には、これらの事件に関して、多くの弁護士が連名で、札幌地検へ告発を行った。事件の概要やその問題点は下記告発状の中身に詳しい。

弁護士380名が北星学園大学への脅迫者を告発(澤藤統一郎の憲法日記)

 こんなニュースを前に、さすがにネトウヨ商法が事件を招いたことに気付いたか、読売、産経、小学館や光文社といったメディアによる朝日新聞叩きは、若干少なくなりつつある。

141109asahi1.jpg

 今月8日に発売された岩波書店の「世界」11月号は、この異様な言論空間への警鐘を鳴らす優れた特集を組んでいる。
 なかでも上記で当事者となった北星学園大学を巡る問題を、コンパクトかつ丁寧に報じる記事がある。
 新聞紙面やテレビ報道ではうかがい知れない、異様なバッシングの内容や、当事者らの苦悩、それを支える多くの人々の動き、そして言論・学問の自由と高額の警備費用との狭間に苦悩する大学の状況が描き出されている。

「世界」2014年11月号
「私たちも北星だ」 大学の自治を守ろうと立ち上がった市民たち

「朝日狩り」なのだという。かつて慰安婦報道に携わった朝日新聞OBのいる大学に、「辞めさせないと爆破する」などと脅迫状やメールを送りつける策動だ。・・北海道札幌市の北星学園大では、市民が「大学の自治、学問の自由を守ろう」と立ち上がった。(10月23日に大学を脅迫した容疑者が逮捕されたが)だが、わずか一カ月前まで、脅迫事件の一端を知りながら新聞、テレビは一切報じていなかった。民主主義の根幹をなす自由な言論を守るため、先陣を切るべき報道機関が、なぜ沈黙したのか。 大学への脅しは週刊文春2月6日号が発売された1月末にさかのぼる。・・


 この記事を書いたのは北海道新聞の記者。

 北海道新聞といえば、道民の多くが購読していて、編集方針は比較的リベラル。私が札幌で一人暮らししていた頃にも購読していた。
 そんな時にたくさんの景品(協定違反)を持ってきて、颯爽と新聞勧誘を繰り返していたのが、読売新聞だった。東京などでは読売が右翼やくざとつるんで、部数拡大に躍起になっていたことは以前にも書いた。(読売と右翼とナベツネ ~かつてこのようなことがあった)
・・・・・

 私自身は朝日新聞の「誤報」なるものは、訂正の必要はあっただろうが、特段謝罪を要するような報道内容でもないと考えている。

 だって「慰安婦」が強制的・奴隷的拘束状態に置かれていたことは、吉田証言がなくても事実だし、朝日新聞の報道以降に数多くの証言や資料が「発見」され、現在その事実は揺るぎないものになった。
 原発の作業員が吉田所長の命令に反して-命令を知っていて避難したか知らずに避難したかの違いはあるとは言え、命令に反していることに違いはない-福島第2原発に避難したことは事実だし、そもそもそんな命令に従う義務は東電社員や作業員にはないわけだし。
 吉田が二つ続いてややこしいが、いずれも記事の核心には何の影響も与えないというところがポイントである。

 そんな話もすると冒頭の販売員は、「やはり吉田調書はスクープ的に報道した問題もあって」等と言うから、吉田調書が全面公開されるなど良い側面もあったんじゃないの、とか言ってみる。
 販売店の人は、安心したような顔をしていた。

さあて。

 天下の大誤報ったら、ねえ。読売や産経は申し開きできない大誤報があるじゃないですか。
 2003年。イラク戦争に関する報道を。「イラクに大量破壊兵器がある」という内容を。これこそ当時から真実性に疑問が持たれていたものであったにもかかわらず、両紙は大々的に報じ戦争に突き進むブッシュ政権と、盲目的に追随する小泉政権の、強力な牽引車となった。
 さてその事案が、全くのウソデタラメであることが明確になり、先進各国のメディアが訂正報道に追われた今、日本の右翼メディアと化した両紙は、どのような態度をとり続けているだろうか。

 翻って今は、イラク人質事件を頂点とした異様な言論空間を構成していた2003-4年くらいの頃に似通っているように私は思う。そしてあの頃の異様なバッシングは、後年多くの批判的検証がなされたはずだ。しかし読売や産経、新潮や文春らは、その反省をきちんとしてこなかったのだろう。それが現在の異様な状況を招き、言論への「テロル」すら招いている。

 読売ら右翼メディアの朝日バッシングは、自らの足下を崩す行為であることを、もう少し自覚するべきだ。
 自らをジャーナリスト、と自覚しているならば。

nice!(19)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 19

コメント 2

ponnta1351

TVにしろ新聞にしろ我々の知らない裏で操作されているらしいので何が真実か分かりませんね。だから鵜呑みにしないようにしています。

都合の悪いこと、正しい事は報道しないのでしょう。
特に、日本人以外の人間を受け入れる枠を設けているTV界、広告業界、耳にするだけで酷い物ですよね。そのうちに日本と言う国は乗っ取られてしまうような????
by ponnta1351 (2014-11-10 20:31) 

Mosel

ponntaさん。こんにちは。

今回の朝日新聞の件は、政治部と社会部の対立から始まったことなのではと考えています。2013年初頭に、週刊ポストが安倍にすり寄る朝日新聞の記事を出して、私もそれに関するエントリを書きました。
政権におもねく政治部の報道では、それこそ真実は押し隠されるでしょう。

学生時代からマスコミの動向はよく見ていますが、外国人枠とか出所の怪しい情報が、一部ネットで出回っているようです。
私はこうしたネトウヨ系の情報が蔓延する状況、そしてその大本にある安倍政権の動向は、それこそ日本がかつてたどったことのない、異様な勢力に乗っ取られてしまう危惧を感じています。

ネトウヨは保守でも右翼でもなく、単なるルサンチマンです。それがたどる道は、あえて似通ったものを想定すると、戦前日本やナチス、そして紅衛兵の世界でしょう。
by Mosel (2014-11-11 06:48) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。