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上には上がいるもので~第33回医療情報学連合大会 [医療情報技師というお仕事]

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会場から、人工島のマンションを見る

 神戸で開かれた表題の大会に参加する。演題も出していないし、発言もしなかったので参加しただけ、なんですが。
 2007年の大会も神戸で開かれ、あの時はポートピアアイランドだった。今度の会場は同じ人工島の六甲アイランド。

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六甲アイランドから六甲ライナーで本州へ

 いつもだと全体講演に参加することが多いのだけれど、今回は意図して一般口演になるべく参加するようにした。
 システム運用でとびきり驚いた演題が二つあった。

人にはきちんと金をかけないと流出しちゃいますよ

 金沢大学附属病院。
 フリーソフトなどを用いて低予算でシステム管理を実施していた。
 この病院は、割と最近まで情報システムのセキュリティ対策がきちんとなされておらず、セキュリティインシデントが頻発。ネットワーク構成や機器構成などが把握されておらず、その点から手を付ける必要があった、というような報告だったように思う。

 私が今の職場に赴任したときと似ているなあ、と思う。ただ規模(病床数や業務量、想定される職員数などから比較)がウチの10倍近いんだけど。
 中小病院ならともかく、大病院でもこのような体制がほんの数年前まであったことは驚きだった。システム管理にフリーソフトを多用しており、コスト意識と技術が相当高いことが伺えた。座長からも同様の指摘があったが、相当苦労されたんだと思う。

 システム管理は金をかければ割と何でもできるんだけど、コストとの関係でなかなかやりきれない部分も出てくる。その辺を技術力でカバーするというのは、純粋にカッコイイ話だ。

 鈴鹿中央総合病院。
 情報システムを半年でリプレース。それもすごいが、そんな短期間でオーダリングシステムから電子カルテへの移行をやりきったとのこと。2013年にサーバーの保守期限切れから、システムリプレイスを迫られたことが発端のようだ。
 当然ノンカスタマイズ導入。各部署やワークグループでミニリハーサルを多数実施。旧システムからのデータ抽出と移行作業については院内情報システム部門で実施。

 一番驚いたこと。この情報システム部門が、たった2名だというのだ。460床の大病院。どんなに少なくとも7~8名は必要ではと思う。しかも1993年から稼働しているオーダリングデータを、この2名で移行作業を行っている。そんな中で職員に対しても、ずいぶんときめ細やかな対応をしており、座長が感心していた。

 私も感心した。というか驚いた。
 手前味噌ながら、私は一人で病院の情報システムやら医事業務やらをしていて、出入りの業者や他院の人たちに感心されることが多々ある。けれどこの二つの事例には素直に脱帽。上には上がいるものだと思った。
 感心する一方で、彼らの苦労も察したい。私も似たような状況で働いているからこそ、彼らの苦労と努力が、どれほど大変かということが具体的に分かる。
 現場で、あり得ない体制で身を粉にして働いている人々、そんな人にきちんと報いるような職場であって欲しいと思う。鈴鹿や金沢は、そのような病院になっているだろうか。便利で、「できる人」がいるからと、情報システム部門をほったらかす、よもやそんな病院ではないだろうか。


 私のところは、今回の参加費も全額支出したし、出張扱いにもなっている。2007年にはやっていなかったことを、今では、このくらいのことはしてくれるようになった。
 これも努力のたまものだろうか。

医療連携と収集する情報について思うところ

 あとは医療連携に関するものに参加。
 大学病院だが、情報システムで情報共有しながら転院支援や地域連携をしているというような内容。私の病院でも、私が簡単な登録システムを作って今MSW(Medical Social Worker:医療相談員)に使ってもらっている。MSWって自分で情報を抱え込んでしまう傾向があるんだよね。これで受入れ状況については、一応の確認ができるようになった。
 こうして情報共有している病院のMSWに対して、座長が「MSWは他の職員に見せたくないような情報もたくさん持っていて、そうした点での問題はないですか」みたいな質問をしていた。
 MSWさんは、そうした情報を収集保存することへの、医療倫理上の問題を指摘したと記憶する。
 そうだよね。特定職種だけで閲覧評価する情報って、医療連携上必要なのかな、と思うのだ。

 私も、仕事柄、似たような情報をたくさん持っているけれど。それは心の奥底に、ひっそりとしまっています。

前回の神戸から6年が経って

 2007年。前回の神戸での大会参加前、私たちの病院では出入りの業者さん(電カルベンダではない)関連のトラブルがあって、私のストレスが最高潮に達していた。あの時のこともこのBlogで記事にしているけれど、あの頃は文章には荒れやらグチやらが多い。
 大会参加費も、ようやく参加費だけは何とか病院に出させたけど、旅費やら宿泊費は自腹。当時下の子が生まれたばかりだったので、生活は結構苦しかった(今でもそうだけど)。

 大会から帰ってくると、その業者さんは当院に来なくなった。そして私がすべての情報システムを掌握して管理することになった。こりゃ大変だ?いや。
 私の仕事はむしろ楽になり、現場へのフィードバックも良くできるようになった。何だったんだろうと思った。

 そして電カルベンダ。当時、突如電カルの大型バージョンアップを通告してきた。その時の経過は、いわゆる「失敗事例」として評価する必要があるものになった。
 あの頃は苦労した。今は、まあ、いろいろあるけれど、安定しているの、かな。あの時の苦労が、今の安定を生んでいると言えなくもないかな。

 失敗からは学ぶことも多い。そんな失敗を積み重ねてきた、あの頃だった。


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Polinky

Moselさん、はじめまして。
そのS病院の電子カルテの病院側関係者の者です。(2名の中の者ではありませんが)
オーダリング導入した大手H社のシステムがシステム、担当者、営業ともに酷いもので、今は撤退したようですが苦労させられました。
5年経過後、そのH社はリプレースを迫り、ガンとして継続使用を拒み、新規導入以上のリプレース費用を請求してきました。
クライアント1台追加で50万円以上のライセンス費用を要求する等、とても最初の栄養から考えられないほど。
リプレース業者を比較しても、他社は数人の営業、システム担当が来ているのに、H社は1人か2人とやる気なし。
高い勉強になりましたが、今はなんとか使っているようです。
by Polinky (2018-02-23 16:45) 

Mosel

Polinkyさん。貴重な情報ありがとうございます。5年前の驚きを思い出しました。私もこの記事から5年経ち、紆余曲折ありつつも現職です。
しかしH社、ひどいものですね。ご苦労お察しいたします。医療関係の情報システムはあまり利益を生まないとはよく聞く話ですが、それを地で行く話ですね。
一昔前「ベンダロックイン」なんて言葉があって、医療機関はそのシステムを使い続けなければならないという現状がありました。別会社にするにせよ、こちらはデータ移行や操作研修・習熟などで多大な時間とコストを使わなければならない。企業の利益や論理も十分理解していますが、都合が悪くなったら撤退するでは、こちらの事業継続もおぼつかないですよね。
ただ、クライアント1台追加で50万以上は、当院のシステムもそのくらいです。

正直なところ、日本の医療制度から見て、将来的には医療関係の情報システムは、国営が望ましいのではないかとも思っています。国が責任を持ってシステムを提供するのがいいのかなと。
by Mosel (2018-02-24 07:56) 

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