原子力行政と独裁国家の奇妙な一致点 [社会情勢]
佐賀の玄海原発再稼働に向け、稼働に関する討論番組を構成した際、九州電力トップが関連会社社員などに向け、賛成の意見を出すようにという、いわゆる「やらせ」事件が勃発してあちこち大騒ぎしているのはご存じのとおり。
7月2日にしんぶん赤旗がスクープし、その後共産党の笠井議員が国会質問して、九電トップがそれを認めてからというもの、玄海原発再開の流れが一気に滞った。
実のところこの「やらせ」事件は、ネット上では6月25日あたりから話題になっていて、いち早く情報を取得したマンガ評論家の「紙屋高雪」さんなどが、Blogで記事にもしていた。それがTwitterなどを通じて拡散されたこともあって、九電といえども開き直りが出来なくなったのだろう。
事件の経過などについては他の人が詳しいので私は感想だけ。
では電力会社のみならず国は何をしていたのかというと、7月14日の「しんぶん赤旗」にこんな記事が載った。
・・・・・
エネ庁が原発報道監視 税金使い「不適切情報」収集 全国紙・立地県地方紙・ネットも
政府が新聞やインターネットを監視し、原子力発電に関する言論を収集していたことが分かりました。経済産業省の外局である資源エネルギー庁が「不適切・不正確な情報への対応」を口実にメディアを監視していたのです。
この事業は、原子力施設立地推進調整事業のうちの「即応型情報提供事業」です。資源エネルギー庁の調達情報によると、2008年度は社会経済生産性本部が2394万円、09年度は科学技術振興財団が1312万円、10年度は財団法人エネルギー総合工学研究所が976万円で受注しています。(引用終わり)
・・・・・
赤旗記事は「税金を使ったメディア・国民監視です」と指摘しているが、全く持ってその通りというか、実に気味が悪い内容だ。
私は電力会社というのは、巨大な官僚組織であると思っていた。しかしこの事件や、明るみに出た監視体制をじっくりと考えるに、電力会社や「原子力ムラ」と呼ばれる世界は、官僚主義だけではないと思うようになった。
電力会社・「原子力ムラ」は「独裁国家」そのものだ・・・・・
東大原子力工学科一期生の安斎育郎教授への激しい攻撃は、つとに有名になった。「研究室では「安斎と口を利くな」と通達が出され・・隣の席には東京電力の社員が張り付いていて、私がどんな活動をしているか、どんな電話がかかってきたかを、逐一会社に報告していた。」(週間東洋経済6/11号より。その他安斎教授の著書にも同様の記載あり)
結局安斎先生は立命館大学で教授になり、反オカルトの立場からの著書もたくさんある。
京都大学に「熊取六人衆」と呼ばれた研究者がいた。6人は「原子力を研究しつつ原発に懐疑的な立場をとり、その危険性を訴え続けたのだ・・6人は京大や阪大を卒業したエリート研究者だったが、教授どころか准教授にもなれず助教(助手)や講師のまま定年を迎えていった。」彼らを取り上げた関西ローカルの番組に対し、関西電力は「同局の全番組から広告を引き揚げ、「原発が以下に安全か」という講習を局幹部が受けるようねじ込んできたのだ。」(週刊現代4/16号 青木理「ジャーナリストの目」より)
・・・・・
反対派の排除と激しい弾圧・嫌がらせ、2002年に発覚した東電の検査偽装に代表される情報隠し、今回発覚した情報操作、そして現地やマスコミなどへの徹底した買収工作と圧力。そして今回のフクシマ事故で明らかになった、「安全」を連呼する原子力「専門家」たちの愚民思考。
これはなんだ。官僚主義だけにとどまらない、独裁国家の所行そのままではないか。
独裁国家は、国家の人民に対する役割を無視して、その国家の存続を自己目的化する。電力会社は、原子力行政は、すでにそれが何を生み出すかを無視して、それ自体が存続することを目的とする。
だから批判的な意見と共存できない。現状をわずかでも変えるような意見を許容できない。許容できないから議論は必要ないと考える。議論が出来ない場合彼らは何をするか。そこには「排除」しか残っていない。
思えば私自身もそのような醜い人間を、組織を、いくつも見た。そのような人物に、組織に、未来はない。
中東やアフリカで起っている民主化運動が、皮肉なことにここ日本で、原発事故をきっかけに発生しているように思うのは大げさか。いや、少なくとも電力行政に関して、今私たちが声を上げるべき時が来ていると思う。そして確実にその流れは大きくなっている。
・・・・・
さて、私自身はどうか。前述紙屋さんの記事を読んだときの素直な感想。
「ああ、やっぱり電力会社はまたやったのか」
「原発が絡む番組で、まともな報道なんてありえないよなあ」と。ある意味、以前に自衛隊の情報保全隊が、反戦組織や市民運動を監視・敵視していたことが内部文書から暴露されたときの感想に似ていた。
「ああ、やっぱりやってたのか」と。ある意味あきらめにも似た感情を。
けれど今回、九州電力のやらせ活動に対する世論の反応は激しかった。私自身の感性が鈍っているのか。急変する情勢に私自身が追いついていないのか、その辺も考えさせられた。
7月2日にしんぶん赤旗がスクープし、その後共産党の笠井議員が国会質問して、九電トップがそれを認めてからというもの、玄海原発再開の流れが一気に滞った。
実のところこの「やらせ」事件は、ネット上では6月25日あたりから話題になっていて、いち早く情報を取得したマンガ評論家の「紙屋高雪」さんなどが、Blogで記事にもしていた。それがTwitterなどを通じて拡散されたこともあって、九電といえども開き直りが出来なくなったのだろう。
事件の経過などについては他の人が詳しいので私は感想だけ。
では電力会社のみならず国は何をしていたのかというと、7月14日の「しんぶん赤旗」にこんな記事が載った。
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エネ庁が原発報道監視 税金使い「不適切情報」収集 全国紙・立地県地方紙・ネットも
政府が新聞やインターネットを監視し、原子力発電に関する言論を収集していたことが分かりました。経済産業省の外局である資源エネルギー庁が「不適切・不正確な情報への対応」を口実にメディアを監視していたのです。
この事業は、原子力施設立地推進調整事業のうちの「即応型情報提供事業」です。資源エネルギー庁の調達情報によると、2008年度は社会経済生産性本部が2394万円、09年度は科学技術振興財団が1312万円、10年度は財団法人エネルギー総合工学研究所が976万円で受注しています。(引用終わり)
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赤旗記事は「税金を使ったメディア・国民監視です」と指摘しているが、全く持ってその通りというか、実に気味が悪い内容だ。
私は電力会社というのは、巨大な官僚組織であると思っていた。しかしこの事件や、明るみに出た監視体制をじっくりと考えるに、電力会社や「原子力ムラ」と呼ばれる世界は、官僚主義だけではないと思うようになった。
電力会社・「原子力ムラ」は「独裁国家」そのものだ・・・・・
東大原子力工学科一期生の安斎育郎教授への激しい攻撃は、つとに有名になった。「研究室では「安斎と口を利くな」と通達が出され・・隣の席には東京電力の社員が張り付いていて、私がどんな活動をしているか、どんな電話がかかってきたかを、逐一会社に報告していた。」(週間東洋経済6/11号より。その他安斎教授の著書にも同様の記載あり)
結局安斎先生は立命館大学で教授になり、反オカルトの立場からの著書もたくさんある。
京都大学に「熊取六人衆」と呼ばれた研究者がいた。6人は「原子力を研究しつつ原発に懐疑的な立場をとり、その危険性を訴え続けたのだ・・6人は京大や阪大を卒業したエリート研究者だったが、教授どころか准教授にもなれず助教(助手)や講師のまま定年を迎えていった。」彼らを取り上げた関西ローカルの番組に対し、関西電力は「同局の全番組から広告を引き揚げ、「原発が以下に安全か」という講習を局幹部が受けるようねじ込んできたのだ。」(週刊現代4/16号 青木理「ジャーナリストの目」より)
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反対派の排除と激しい弾圧・嫌がらせ、2002年に発覚した東電の検査偽装に代表される情報隠し、今回発覚した情報操作、そして現地やマスコミなどへの徹底した買収工作と圧力。そして今回のフクシマ事故で明らかになった、「安全」を連呼する原子力「専門家」たちの愚民思考。
これはなんだ。官僚主義だけにとどまらない、独裁国家の所行そのままではないか。
独裁国家は、国家の人民に対する役割を無視して、その国家の存続を自己目的化する。電力会社は、原子力行政は、すでにそれが何を生み出すかを無視して、それ自体が存続することを目的とする。
だから批判的な意見と共存できない。現状をわずかでも変えるような意見を許容できない。許容できないから議論は必要ないと考える。議論が出来ない場合彼らは何をするか。そこには「排除」しか残っていない。
思えば私自身もそのような醜い人間を、組織を、いくつも見た。そのような人物に、組織に、未来はない。
中東やアフリカで起っている民主化運動が、皮肉なことにここ日本で、原発事故をきっかけに発生しているように思うのは大げさか。いや、少なくとも電力行政に関して、今私たちが声を上げるべき時が来ていると思う。そして確実にその流れは大きくなっている。
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さて、私自身はどうか。前述紙屋さんの記事を読んだときの素直な感想。
「ああ、やっぱり電力会社はまたやったのか」
「原発が絡む番組で、まともな報道なんてありえないよなあ」と。ある意味、以前に自衛隊の情報保全隊が、反戦組織や市民運動を監視・敵視していたことが内部文書から暴露されたときの感想に似ていた。
「ああ、やっぱりやってたのか」と。ある意味あきらめにも似た感情を。
けれど今回、九州電力のやらせ活動に対する世論の反応は激しかった。私自身の感性が鈍っているのか。急変する情勢に私自身が追いついていないのか、その辺も考えさせられた。
タグ:原発事故 やらせ 玄海
もう、何をか言わんやですね。
旅行する際の飛行機や、買い物するスーパーその他諸々は私たち個人で選べますけど、電気は東電が良いから、九電が安いからなどと言って選べません。
それを良いことに、やりたい放題 !私たちの知らない所で何が起こっているのか、やらせメールも氷山の一角でしょうね。
電気の会社は閣僚たちの天下り先の確保とか、何も信じられないです。どっちを見ても被災地、国民への目線でないのが、どうも腹虫が治まりません。
それにしても、あの人いつまでしがみつく気でしょうね。
なんの策も示さないで、脱原発なんて。
私だって、原発は反対ですよ。
色々考えると、そう簡単な物じゃないと言う事は分かってますが。
by ponnta1351 (2011-07-17 09:50)
ponntaさん。こんにちは。
全くおっしゃるとおりで、私たちは電力会社を選ぶことができません。かといって太陽光などの自家発電装置を導入すると、それはそれで原子力政策につながっているため、安易に導入も考え物です。風力やガス発電は高いですし。
電力会社のやらせや圧力は、ジャーナリズムの世界ではかなりの常識のようで、マスコミでも今まで広告料ほしさに黙っていたのが、ここへきて暴露話が噴出していますね。
しかし菅直人、首相がわざわざ会見して原発依存をやめるといったすぐその後に、個人的見解などと言い出す。首相の言葉の軽いこと。うんざりします。
by Mosel (2011-07-18 08:10)