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民主主義とフェアプロセス ~菅直人と橋下徹に共通するもの [社会情勢]

浜岡原発の全原子炉停止へ 首相の要請受け入れ(5/7:朝日)

 菅直人首相は6日、東海地震の想定震源域である静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機や稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉を停止するよう中部電に要請した。中部電は受け入れる方向。停止期間は、中部電が2~3年後の完成を目指す防潮堤新設までとなる見通しだ。 (引用終わり)

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大阪維新の会府議団、君が代条例案提出へ 起立義務づけ(5/14:朝日)

 大阪府の橋下徹知事が率いる地域政党「大阪維新の会」の府議団は、府立学校の入学式や卒業式などで君が代を斉唱する際、教員に起立を義務づける条例案を5月府議会に提出する方針を固めた。・・維新の会の条例案は罰則を設けないものの、教員が起立を拒むなど条例に違反すれば、地方公務員法違反などで処分される可能性もある。
・・維新の会の松井一郎幹事長は条例について「起立しての斉唱は公務員として当然のこと」と説明。橋下氏も府幹部にメールで「(起立しない教員は)公務員の身分保障に甘え過ぎ」「教委がマネジメントできなければ条例化するしかない」と主張していた。 (引用終わり)

・・・

 この二つのニュースをみて、私は思うところがあった。

 前者は私には諸手を挙げて受け入れられる内容。後者は私にとって全く受け入れられない内容だ。ただ両方のニュースを見た私に共通の感情がわき上がった。それはなぜか。

 両者に一つだけ共通していることがある。それはいずれも「議論がなく強圧的」ということだ。

 以前私はフェアプロセスについて記したエントリをあげたことがある。この中で「決断の本質 プロセス志向の意思決定マネジメント」という本を取り上げた。

「有利な判決を受けた人の満足感は、不公正な手続でも非常に高い。しかし、公正な手続で不利な判決を受けた人も、有利な判決を受けた人に近い満足感を抱いている」。

・・・・・

 行政組織が人民に対してどのような態度を取るべきかというと、その政策に当たって十分な判断材料を提供し、議論を促すことが肝要ではないかと思う。そしてたとえ最終的な結論が同じであっても、議論を尽くすことで、賛成派も反対派も中間派も、その行政にある程度の納得がいくような運営を行う。

それが民主主義なのだ。

 行政が示した結論を、この間の「日の丸・君が代」に関する数多くの議論を無視して「当然」などと放言する大阪府の「維新の会」および橋下は論外としても、もう少し丁寧な行政を進めることはできないものか、とこの左右両者(*)の運営姿勢をみるたび思うのである。

 このような政治姿勢が、ここ10年くらいで急速に進んだ「政治の劣化」というものなのか、と思う。

*橋下を「極右」と断じることにはやぶさかではないが、菅直人を「左派」とするにはいささか抵抗のある私である。

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 原発に関連して14日の朝日夕刊にこんな記事。

「廃棄された原発無人ロボット 東電など「活用場面ない」」(5/14:朝日)

 原発事故での使用を想定し、国の予算30億円で開発・製造された遠隔操作ロボットが、東京電力などが「活用場面はほとんどない」と判断したために実用化されなかったことが分かった。だが、福島第一原発の事故では、人が入れないほど放射線量が高い場所での作業に米国製ロボットが投入される事態に。(引用終わり)


 この記事の続きとして11面「業界慢心 ロボ頓挫」(電子版はなし)にこうある。

 だが、当時開発に携わった研究者によると、メーカーが電力会社に配備を提案した際、担当社員は「原発で事故が起きるんですか。どんな事故がいつ?」と不快感をあらわにしたという。・・「原発事故をタブー視する意識はかなり前からあった」末広尚士・電通大教授(知能システム学)はこう証言する。・・上司から「原子力防災」という言葉は使えないと指摘されたという。
 同じころ電総研に勤めていた白井良明・立命館大教授(視覚情報処理システム)も、当時の通産省幹部から「炉心溶融のような重大事故は設計上起こりえない。だから想定しなくてもいい」と言われたと明かす。(引用終わり)

 議論を大事にせず強圧的に事を進めると、必ずタブーが生まれる。そしてタブーを放置した結果福島で何が発生したか。

 私たちはよく考える必要がある。このような事態になるまで、いやこうした事態が発生してすらも、事の重大性を認識していない電力会社を横目にしつつ、国や自治体がそのような組織に成り下がらないように、しっかと政治に、個人が関わりを持っていく必要性、重要性を。

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ayu15

おもしろい見解ですね。

強圧的ですか。


そうかもしれませんね。
個人的になにがなく思い浮かんだのは前者(原発)のほうは議論している間に事故が起きたら?というものです。

ある事件で身の危険がせまる人の救済で議論始める人たちがいました。とりあえずまず安全なところに身を確保してあげないとその方は殺されてしまうんですが・・・。


前者はあくまで形は要請ですね。
でも言われたほうはプレッシャー感じるでしょうね。いけんいう機会があったのかは極秘で1カ月検討したそうなので(読売新聞)さだかでないですが。

後者は自分が正しくてあなたは間違いだから許さないとルールを自分で作り決めてますよね。


でも方向性はにているかもしれませんね。
by ayu15 (2011-05-16 10:00) 

ガンガンガン速

お邪魔いたします。
想定外の津波が…という言葉をよく耳にしましたが、実は東電が原発が壊れることを想定していなかっただけですね。
by ガンガンガン速 (2011-05-16 13:39) 

Mosel

ayu15さん、コメントありがとうございます。

私は民主主義で大事にしなくてはならない点として、プロセスの透明化、公平性を重く見ています。会社組織の運営についても同様です。だからこそ、唐突な決定やら方針やらが出てくると、もうほとんど反射的に拒否反応を起こします。

優れた政策であっても、議論を経ないですすめると、それは簡単に独善・独裁を生む。そして反対派への同調圧力を生む。組織は常に正しいことを行うとは限らない。しかしこうした同調性を強要する組織で反対派になることが、いかに困難な状況を生むかは、以前私も身をもって体験しました。

私が病院で情報システム管理に携わっているのも関係しているでしょう。病院という組織は、結論が正しくても合意形成の過程を飛ばしてしまうと、必ずそのプロジェクトは失敗します。個性ある専門職が多いですからね。

今の「がんばれ日本」とか言うフレーズもある意味同じに感じ、少し心が引っかかります。大阪の橋下らの「日の丸・君が代強要条例」はこうした情勢を巧みに利用しているように感じています。

ただ、確かに浜岡原発停止は、いつ起こるか分からない東海地震を想定して、緊急避難的に命じたと考えると、今回の措置は妥当な内容とは思います。私も正直「菅直人が初めてまともな政策を出した」と喜びましたから。原発の安全性に懸念を表明している私たちのような人にとっては、議論は既に尽くされ、直ちに停止・廃炉が常識でしたし。

実際のところ、あの菅政権が中部電力や財界に対し、事前に何の連絡もなしに、停止要請をするとは考えにくい。経団連の発言はある意味、政権への揺さぶりの意味もあるのかな、と勘ぐってはいます。

それでもやはり唐突感がぬぐえなかった。これは良い結果をもたらす内容ですが、他の政策でこんな感じにやられたらたまったものではない、とも思っています。突然の消費税増税発言から、まだ1年たっていません。

個人的に東海地震は東南海・南海地震と連動するものだと考え、それなら次の地震は2030年以降かな、とまだ時間はあるだろうと思っているのもあります。もっとも今回の東日本太平洋沖地震の影響もあり、いつ地震が起こるかは予断を許さないのかもしれませんが。

by Mosel (2011-05-16 22:17) 

Mosel

ガンガンガン速さん。いらっしゃいませ。

今時の地震や津波を想定していた人はたくさんいたことが、もうあちこちで明らかになっていますね。

執拗に「想定外」を連呼する御用学者はじめとする「原発村」の人々の閉鎖性が、はっきりと白日の下にさらけ出されて、実に滑稽に見えます。
しかしこんなヘンテコな人たちに、私たちは原子力行政を任せていたってことなんですよね。こんなものはまず真っ先に解体しなければなりません。
by Mosel (2011-05-16 22:19) 

ponnta1351

浜岡原発停止、首相の大英断なんて言っている人も居ますが、先日これを見また      ↓
 http://www.youtube.com/watch?v=VPli18CmtbY

この後、政府は4月ごろから秘密裏に停止にするべく検討していたと聞きました。

     -------------------------------------

正直、私は君が代が国歌で有ることが素直に感じられません。
意味も理解できない人達が多いのでは。

国歌とは国民が理解でき、国の繁栄を願い、心から歌えるものでありたいと思っていました。
何故、これが国歌になったのか調べてみると色々疑問も有ります。 でも1999年に国歌に制定されたんですね。

公務員であるならば、嫌でも斉唱し、国旗掲揚に頭を垂れねばならないでしょうね。

仰る通り、議論を大事にせず強圧的に事を進める事はいけないと思いますけど。
by ponnta1351 (2011-05-18 17:33) 

Mosel

ponntaさん。コメントありがとうございます。

ビデオの内容が本当だとすると、あっさりと中電が受け入れたのも道理ですね。

国旗国歌法が審議され、あっさり可決されたときのことは、よく覚えています。本当にいつの間にか決まっていた、そんな記憶があります。

さて、私は公務員は住民に対し、行政サービスを提供するのが責務だと考えています。公務員は国家に対して忠誠を誓うのが仕事ではないし、ましてや議論の多い君が代・日の丸に対してでもない。

以前のエントリでもふれましたが、国旗国歌法の制定時、政府はそれを義務としない答弁をしています。その後結局東京都などで義務化の流れが進み、あのときの約束は反故にされました。そして大阪では条例化だと。本当にこうした人たちは教育の重要性をよく知っていますね。何を置いてもまず子どもたちから、というところでしょうか。

しかしこの「強制」司法判断も割れていること、天皇の明仁氏すらも「強制にならないよう」と言っていたことも考えたいと思います。
by Mosel (2011-05-19 19:57) 

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