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医療情報技師の役割~医療情報学連合大会(JCMI2010浜松) [医療情報技師というお仕事]

 30回目を迎えたこの大会。私は2006年から参加し始めて、経過を逐一このBlogに書き綴っているが、春期や看護の大会も含め、これで7回目になる。

 早朝、町田の大渋滞を抜け、ようやく東名に入ったら、そこからはスイスイ。ちょうど昼頃会場に到着。会場は浜松駅直結の、アクトシティ浜松。前年、慢性期医療学会の会場だったところで、そこへいく職員のためにホテルの手配やらをした記憶がある。
・・こんなことも私の仕事になることがある。

コミュニケーション能力が基本なのはどの職種も同じで・・

 初日は「医療情報技師の役割」というセッションがあり、結構な人が参加している。同様のセッションが昨年大混みだった経験からか、会場もやたら広い。今年の企画に立ち見はなさそうだ。企業展示会場の一角をパーティションで囲った場所なので、ちょっと騒々しいときもあったが。



 医療情報技師育成部会の立場からは、医療情報技師は、技術的な側面に加え、その「資質」を重視するとのこと。特定職種の利害に凝り固まらず、職場・職種横断的な動きを想定する。多職種業務のコラボレートのため、それらをコーディネートする、そのためにコミュニケーション能力を要求される、ということですか(医療情報技師は3C、Collaboration,Coordination,Communicationを謳っている)。要は連携・調整能力が重視されると言うことだろう。

 電子カルテのような大規模な情報システムは、各部門の利害が強すぎると必ず失敗するから、医療情報技師に求められる上記の能力というものは、基幹システムを導入管理する立場の人間には必須の能力であるとは言えるが、このBlogでもいくつか書き連ねてきたように、そんな人材は実際には少ない。意識の新しいシステム屋は、そのような人材をどう育成するか、そして今いる人の意識をどう変えていくかに苦心しているが、それは私も同じで、非常に悩んでいることでもある(今一人職場ですが)。

 ただ、どんな仕事でもコミュニケーション能力が必要かつ重要なのは同じはず。システム屋がやたらこの点を強調されるのは、システム屋のその能力が、他の職種と比べて劣っているということにもならないか、と私は過去の事例を顧みてそう考えてしまう。
・・以前いたところは周りから苦情が来るほどに、本当にひどかったから。

 このセッションで発表した演者は、いずれもその能力を活用して成功した事例を話してくれ、職種が様々だったこともあり、参考になる内容だった。しかし昨年同様、質疑は低調。司会の方が「ざっくばらんに」と話されていたが、質問は一つしか出なかった。十分な時間を要して、サクラ質問の二、三は用意していれば状況は違ったかもしれない。もっともこんな広いたくさんの人がいる中で、ざっくばらんな議論は、なかなか難しいこととは思う。

医療情報システムに関するコスト

 そう、ただ一つの質問は担当者のコスト意識に関するものだった。病院全体の経営状況を見ながらシステム検討するのは、私にとって基本のことではあるが、大病院の担当者レベルではそうもいかないのだろう。質問に対し、演者はカスタマイズ要求に対して実際に見積もりを出させ、それでも導入するかを検討させていた。医療職はコストを意識しないからそれを抑える能力も重要、とも。
 私のところはそもそもカスタマイズの要求を出せない小規模病院で、出してもコスト的に無理だし、やるとしても非常に時間がかかることがわかっているから、ハナから要求すら出さない。

 関連して、ポスターセッションで電子カルテシステムの導入状況を発表しているものもあり、そこでは病床1床あたりの運用コストも付記していた。それによると1床あたりの年間費用は、情報システム導入時の減価償却を5年として、年間60数万円なのだそうだ。500床だと年間3億円。5年で15億。一頃昔は導入費が1床あたり100万円などと言われていたので、その頃の水準からさほど変っていないということだろう。
 ウチの病院は・・あらら、その1/5だ。発表者にそのことを話した。それはすごい、と言っていたが、カスタマイズ上等の大規模病院と、基本的にパッケージそのまんまな中小規模病院ではコストに差が出るのは当たり前。そもそも当院の電子カルテ、価格で選んだ側面も強いし、もう5年以上使い続けているし。私の人件費やらをざっと按分算定すると1/4くらいに上がるけど。

もう一度 医療情報技師の今後とその必要性は

 医療情報技師数の現勢は9300名を超える数値だそうだ。しかしこれには03,04年度の取得で、更新せずに失効してしまった技師数は含んでいない。問題集を得るために何度も受験して合格している人もいるようだ。だから実数はこれよりかなり低いのではと思う。
 11月に発表された技師の合格者は1302名。史上最高だった05年の1648名に次ぐ合格者数である。05年以降ジリジリと受験者数が減っていった状況で、今年は少し盛り返したようだが、来年3月に、その1648名の更新が迫っている。
 佐久総合病院の方が発表していたように、医療情報技師の認知度は低くて、佐久総合の職員間では認知度1割とのこと。当院では、私が「医療情報技師というのがある」というまで知らない職員がほとんどだったから、もっと低いだろうなあ。
・・私自身の認知度はほぼ100%だから(小さい病院なので)、当院のみで認知度上げようとするなら簡単なことだけど。

 やはり診療報酬の算定要件などに医療情報技師を組み込んで、病院経営層へのインパクトを与えるようにすべきでは、というか医療の安全性という観点から、電子カルテクラスの情報システム導入病院には技師でなくとも担当者配置を必須にする必要がある。これは絶対だ。以前も書いた通り、ベンダはシステムが停止したとかならともかく、運用の混乱やデータ完全性の喪失などで実質的にシステムが破綻しても、何もやってくれないのだから。これは医療安全面からの重要な驚異たり得る。褥瘡や感染対策と同様、情報システムの運用についても、医療機関はしっかり配慮すべきで、医療政策上もそれを支援しなければならない。私はそう考える。

 ログ統計など、いろいろヒントになる報告もあったし、「デジタルフォレンジックと医療情報」セッションは医療情報の活用と匿名化への配慮などについて、考えさせられる内容もあった。短い期間だがためになる。来年は何かやってみようかな。来年秋の大会は鹿児島だそうだけど。春は千葉だから近くて助かるが。


 最後に、初日のパイプオルガン演奏はなかなか良かったです。アクトシティにはすごくでかいパイプオルガンがある。その演奏を聴けただけでも参加費の半分くらいは元が取れたような気がする。間に合って良かった。

 初日、冒頭に上げたセッションと同じ会場で、医療情報技師の交流会があった。OFF会を除くと初めての催しだったのではないか。車で行ったこともあって、参加できなかったのは残念。

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ponnta1351

私には難しすぎて分からないので、「医療情報技師」を検索して見ました。
日本医療情報学会が資格付与する民間資格のこと、だそうですね。知りませんでした。

Mosel さんの病院は、多分、母と妹が入院した様な??推察ですがそんな気がします。

by ponnta1351 (2010-12-24 13:58) 

Mosel

医療情報技師をお調べいただいたそうでありがとうございます。
これは民間資格というか、日商簿記みたいな認定資格です。試験を受けるのに特別な要件はありませんし、一発試験で合格してしまえば「医療情報技師」です。医療機関よりも、IT関係の方が数は多いですね。医療IT関係の方には認知度は高いですが、それ以外にはまだまだ知られてはいません。けれど役割としては、今後ますます重要性が高まっていくのではと思っています。

お母様と妹さんが私のところにご入院されたかも・・そうかも知れません。ただ同じような規模で同構成の病院は多摩地区に結構ありますので、違うかも知れませんね。
私の勤務地は、割と新しい病院ですよ。
by Mosel (2010-12-25 18:05) 

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