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官僚のサボタージュに屈服した菅政権~介護保険、診療報酬、ワクチン、そして尖閣 [社会情勢]

 昨年秋の政権交代から1年余りが過ぎた。自公政権下で医療界は「崩壊」と呼ばれるまでに疲弊した。介護保険下の各事業所も、制度開始当初から崩壊状態が続いている。

 その自公政権を何とかしたい、そんな思いから、新政権が発足したのではないかと思う。だからこそ発足当初は極めて高い支持率を得たのだ。民主党政権は。

 こんな記事が出て私はびっくりするよりやっぱり、というか。

生活援助、介護保険から除外の可能性 厚労省方針-(11/9:朝日新聞)

(記事要旨)厚生労働省は2012年度の介護保険制度改正で、要介護度が軽い「要支援」の人に対する掃除などの生活援助サービスを保険から除外できる仕組みを設ける方針を固めた。市区町村が判断し、新設する独自サービスに生活援助を組み込めるようにする。これにより、生活援助にかかる費用を減らす狙いがある。
・・介護保険を利用する要支援者は約80万人で全体の2割。サービスの5%にあたる約4千億円分を利用している。日常生活の支援が必要で、約40万人が訪問介護を利用し、そのうち生活援助は利用回数の9割程度を占めるとみられる。09年度までの3年間の介護費用の伸びは、要介護者の1.16倍に対し、要支援者は1.44倍と急増。生活援助は「家政婦代わりに利用している」という批判もあり、将来的には対象者の縮小も図る。

・・

 記事にある通り、要支援者が介護保険財政に占める割合は、わずか5%に過ぎない。その要支援サービスの9割にあたる生活援助を、廃止しようというのだ。
これでは「要支援」を介護保険から排除すると言わんばかりだ。

 しかしその理由がどうもよく分からない。記事によれば、生活援助を「家政婦のように使っている」という理由しか見当たらない。もっと説得力のある意見があれば、新聞はより具体的に報道するだろうから(その方が国民の理解を得やすいと思われるから)、どうも廃止理由のほどが定かではない。
 自分で出来るのに「家政婦のように」生活援助を利用しているのが「問題」なのであれば、その事例を指導し是正していけばよい。ただそれだけのことのはずだが。

 しかし政府は、要支援者の生活援助を丸ごと廃止するという。

 どうなっているのだ?

 廃止をするなら、なぜそもそも「生活援助」なるものが存在しているのか。意義があるからこそ、要支援サービスの9割がここにつぎ込まれているのだろう。不正な利用(かどうかも正直はっきりしないが)があったから、そのサービス全体を廃止するというのは、例えば生活保護の不正受給があった、だから制度全体を廃止してしまえ、というのに等しい暴論だ。
 なぜこんなことになるのか。

官僚のサボタージュに屈服した?民主党

 かつて自公政府時代、介護保険のサービス利用を、要介護2以下は利用できないようにするという案が、政府内で検討されていたことがある。2006年から「要支援1、2」区分が新設されたが、これは今まで「要介護1」だった人たちを、「要支援」の区分に組み込むための仕組みだった。つまりそもそも「要支援」の存在そのものが、軽度要介護者を排除するための前段階ともいえる。
 つまりその頃に戻ったということなのだ。この方針は、自公政府が承認していた内容とはいえ、実際にこの案を作成したのは厚生労働省の官僚なので、軽度要介護者を介護保険(の利用者)から排除する方向性が、民主党政権になっても変らなかった、ということになる。
 というか、菅政権になって、官僚主導型政治が復活してきた、と見ることもできるのでは、と思う。
 以前朝日新聞に、長妻元厚生労働大臣が再任されなかったことについて、当の長妻氏が「官僚に抵抗した大臣がやめさせられるというメッセージになる」というような苦言を呈していた特集記事を見た。霞ヶ関の官僚機構に政府が屈服したとも。

 私は菅政権、というより民主党がこんなになったのは、官僚のサボタージュまがいの行動があったのではないかと考えることがある。というのは・・。

・・・・・
 今年4月、医療界では診療報酬が改訂された。その中で入院中の患者が他の医療機関に受診する際の複雑な規定があるのだが、それが大きく改訂された。改訂の中身には問題が多いのだが、一つだけ「ケアレスミスでは」と思える項目があるのだ。
 少なくとも10年以上にわたって存在したある項目が削除されている。この間の診療報酬改訂の中で、今回その項目を削除することの合理性があまり感じられないのだ。

・・・・・
 昨年、新型H1N1インフルエンザが猛威をふるい、ワクチンを求める人で医療機関は大混乱した。
 そして今年も流行のシーズンが近づきワクチン接種がはじまったけれど、今年のインフルエンザワクチンは、例年のように医療機関ごとに価格設定ができず、接種者の数も毎月保健所に連絡しなくてはならない。
 なぜかというと、昨年のパンデミックを想定した、新型インフルエンザに対応した予防接種法がそのままになっているからだ。新型とはいえ毒性も低く、2年目である今年は昨年のようなパンデミックは想定しがたいから、法律は改正されてしかるべきと思うのだが、そうなっていない。

・・・・・

 これらはきちんとした仕事を今まで通り続けていれば、回避できたのでは、と私は感じている。ならなぜ、民主党政権下でこのような事態になったのか。
 官僚政治の打破を求めて政権についた民主党政権の、官僚からの意趣返しと考えるのは勘ぐりすぎだろうか。

虚勢を見抜かれたあと

 官僚に力量を見抜かれた民主党政権は、これまでの方向性の一切を変えていく。それこそ普天間問題を結局自民党時代に逆戻りさせたのからはじまって、後期高齢者医療は廃止はするが制度上変らない内容にしたり、障害者自立支援法もそのまま、八ッ場ダム中止は腰砕けと、枚挙にいとまない惨状は、それこそ自民党と変らない、というか官僚主導政治に逆戻り。

 一度振り上げた拳がなまくらだったことを見抜かれたら、あとは一方的に押されるのみ。なめられるのみ。

 ビデオがYoutubeにアップされて、にわか国家主義者が息巻いている海上保安庁の尖閣諸島ビデオ流出事件も、その一環なのではないかと思える。「Sengoku38」なんていうハンドルネームもその象徴。

・・・・・

 なぜこんなことになるのか。思うに、民主党という組織が、政権を奪取すること、そのことを目的として人々が集まった組織だからなのではないか。だからこそ、思想的には自民党より雑多だし、党内で意見の一致を見ない問題が山ほどあるからこそ、傍目にはブレまくっているように見える。
 で、結局、今まで実質政治を司ってきた官僚機構に流されてしまうのだ。だから、何も変わらない。何も進まない。
 民主党がブレるのは当然の帰結なのだ。彼らが政権につく前から予想できたことだった。そして結局は、過去の自公政権との違いを、それこそ目を皿のようにして必死に探さなければ見つからないような「政権交代」。これでは何の意味もない。
 こんな「2大政党」による政権たらい回しは民主主義でも何でもない。

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尖閣問題については草加耕助さんの「旗旗」が非常に参考になりました。

こちらも非常に参考になります。
きまぐれな日々「尖閣ビデオ流出事件の西山太吉インタビューと沖縄県知事選」

 僭越なのでTBはしないでおきますが、ぜひ。

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コメント 2

ponnta1351

全く、ことごとく裏切られました。政治家の資質がここまで低下しているなんて情けないですね。このままでは日本は沈没でしょう。諸外国から見向きもされなくなるでしょうね。実際にそう、なりつつあるようです。
by ponnta1351 (2010-11-19 14:59) 

Mosel

いつもありがとうございます。
国際政治の中における日本の発言力って、昔から非常に小さかったように思います。経済力があるから一応は顔を立ててもらっていますが。言うまでもなくその原因は対米追随外交ですね。それも含めて、官僚にとっては今までの仕事のやり方を変えてもらっては困るわけですから、抵抗もするでしょう。ましてや相手は口先だけの元自民党も多い民主党ですので。
しかしここまでひどいかねって、本当に思っています。彼らの良い面も見いだして、共通の課題では支援することもやぶさかではなかったのですが。
今、浜松にいます。初めて来ましたが、その辺のことはまた後日書きますね。
by Mosel (2010-11-20 21:28) 

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