日本版EHR-医療情報学連合大会にて [医療情報技師というお仕事]
3カ月ほど前のことですが・・
表題の学会大会に3度目の参加。「日本版EHR」がテーマとなっている。EHRは、要するに医療・健診・保険・年金等々の情報を統合した、生涯にわたる健康データベースシステムとでも言うものか。
横浜はやっぱりきれいな街で
健診データとレセプトオンライン化に伴うそれら医療情報のデータベース化、香川などで広がっている地域医療連携システム、今後導入が検討されている「社会保障カード」。これらを包括統合し、医療者のみならず「国民」も活用できる医療情報システムとして構成する「EHR」、ということになるんでしょう、か?(こんな理解でいいのかな?)
現状医療情報システム同士の連携は非常に心許ない状況なので、当然それらは考慮していないから、診療内容の連携は、上記の通りレセプト情報と健診を念頭に置くことになるよう。医療者として見ると、診療報酬データは医療情報としてはスカスカだから、使用医薬品や検査・画像情報、そしてサマリーの連携はしたいところだと思う。
サマリーについては、退院時などに通常要求されているものはともかく、外来などでは特に、診療記録と別に作成することになるため、医師の事務業務が増加する。ということは、サマリー自動作成システムなど、支援システムも必要で、様式の標準化も必要になっていく、のではないか。
また政府関係の役人やそれに関わっている人たちも発言していたが、EHRのインフラとしての健康保険カードとそれに関連するシステム、そして浦添でやられている実証実験についてはかなり遅れている状況みたい。
電子レセプトおよびそのオンライン請求に関しても、その義務化に関して強い反対運動が起こっていることでもあるし(神奈川保険医協会の「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟を支援する会」等)、今後実施に際しては、いろいろと調整しなければならない点もでてくるだろう。
もっとも、技術的な部分や規範に関する部分は、当然最優先で詰められる・・見切り発車の可能性も高いが・・だろうから、状況をじっくり見ていきましょう。我々が考えなければならないのは次の部分。
・
・
クリスマスの時期でしたので、こんなものが
国民管理システムにならないように-それを監視するのが私たちの責務
そりゃ厚労省の担当者は「国民監視のシステムではない」と言っていたけれど、「監視しますよ」と言って導入するバカはいないわけで、住民基本台帳であれほどの問題がわき起こっている状況で、それよりさらに包括的でセンシティブな情報を扱うEHRに、その手の批判が起こらないわけがないので、そこもどうにかしなきゃならない課題。
確かに情報を扱う側からみると、ずいぶん便利で可能性も広がるシステムとは思うが、一歩間違えるとかなり怖いシステムになる。国が抑圧の装置としてこれを使う、とまでいかなくても、年金未納事件が世を騒がせた数年前にみられたように、関係職場で働いている職員が、興味本位でデータを見る、かもしれない、というのも、あまり気分の良いものではない。セキュリティの要は、技術的なものより運用をどう整備するかがネックになることは、この間の情報漏洩系インシデントを見れば一目瞭然。運用する側の高い倫理性が問われてくる。
であるからこそ、こうしたシステムにつきものの批判-当然の批判-「国民監視のシステム」に対する政府の真摯な返答と姿勢も求められる。
デジタルディバイド(情報格差)と貧困問題
これらEHRはユーザー自身が利活用できるべきものだから、それらを使用できる人とできない人との格差が今後問題になってくるかもしれない。少なくとも現状ではネットワークに接続するにはある程度の継続的なコスト負担が必要になるし、当然技術的な知識も必要になるし、かつセキュリティにも配慮しなければならない。
EHRに関するシステムが生活に必須のものとなるにつれて、自分でできない人たちのために、アドバイザーやコンサルタントなどの需要が増えるだろう(コンピュータシステムはそんなに簡単に理解できるようにはならないだろう)。そうするとそこにも費用負担が発生してくる。
高齢者などにその支出が耐えられるだろうか。格差社会の中、経済的に困窮している人たちにそうしたシステムが利活用できるだろうか。かくして現在の貧困問題が、今までは健康保険や診療時の自己負担金問題から、情報についても健康格差が広がっていく。
情報部門が考えることではないかもしれない。しかし利用する「人」を見た場合に、決して無視できない課題だと思うのだが。
・・雑感
さて、今年は横浜での開催。ようやく関東で実施してくれたけれど、春の大会は長崎、秋の大会は広島だそうで。
ただ、多摩地区から横浜は遠くて、通うと結構疲れる。毎日通うので交通費もバカにならない。現地宿泊が安ければ、かえって遠い方がいいのかな。幹線が通っていて宿泊が安い、札幌や福岡みたいなところがベストかも。
ちょっとずれるけれど、ところで患者IDってのは、やっぱり保護すべき個人情報なんでしょうかねえ。リンクされるべきIDをきちんと管理できているかどうかに課題があるのだろうと思うのだけれどねえ。そこの病院がなぜそんな結論に達したのかの経過がわからないから、何とも言えないのだが。発言者ちょっと感情的になっていたし。・・あるセッションに参加しての感想。
表題の学会大会に3度目の参加。「日本版EHR」がテーマとなっている。EHRは、要するに医療・健診・保険・年金等々の情報を統合した、生涯にわたる健康データベースシステムとでも言うものか。
横浜はやっぱりきれいな街で
健診データとレセプトオンライン化に伴うそれら医療情報のデータベース化、香川などで広がっている地域医療連携システム、今後導入が検討されている「社会保障カード」。これらを包括統合し、医療者のみならず「国民」も活用できる医療情報システムとして構成する「EHR」、ということになるんでしょう、か?(こんな理解でいいのかな?)
現状医療情報システム同士の連携は非常に心許ない状況なので、当然それらは考慮していないから、診療内容の連携は、上記の通りレセプト情報と健診を念頭に置くことになるよう。医療者として見ると、診療報酬データは医療情報としてはスカスカだから、使用医薬品や検査・画像情報、そしてサマリーの連携はしたいところだと思う。
サマリーについては、退院時などに通常要求されているものはともかく、外来などでは特に、診療記録と別に作成することになるため、医師の事務業務が増加する。ということは、サマリー自動作成システムなど、支援システムも必要で、様式の標準化も必要になっていく、のではないか。
また政府関係の役人やそれに関わっている人たちも発言していたが、EHRのインフラとしての健康保険カードとそれに関連するシステム、そして浦添でやられている実証実験についてはかなり遅れている状況みたい。
電子レセプトおよびそのオンライン請求に関しても、その義務化に関して強い反対運動が起こっていることでもあるし(神奈川保険医協会の「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟を支援する会」等)、今後実施に際しては、いろいろと調整しなければならない点もでてくるだろう。
もっとも、技術的な部分や規範に関する部分は、当然最優先で詰められる・・見切り発車の可能性も高いが・・だろうから、状況をじっくり見ていきましょう。我々が考えなければならないのは次の部分。
・
・
クリスマスの時期でしたので、こんなものが
国民管理システムにならないように-それを監視するのが私たちの責務
そりゃ厚労省の担当者は「国民監視のシステムではない」と言っていたけれど、「監視しますよ」と言って導入するバカはいないわけで、住民基本台帳であれほどの問題がわき起こっている状況で、それよりさらに包括的でセンシティブな情報を扱うEHRに、その手の批判が起こらないわけがないので、そこもどうにかしなきゃならない課題。
確かに情報を扱う側からみると、ずいぶん便利で可能性も広がるシステムとは思うが、一歩間違えるとかなり怖いシステムになる。国が抑圧の装置としてこれを使う、とまでいかなくても、年金未納事件が世を騒がせた数年前にみられたように、関係職場で働いている職員が、興味本位でデータを見る、かもしれない、というのも、あまり気分の良いものではない。セキュリティの要は、技術的なものより運用をどう整備するかがネックになることは、この間の情報漏洩系インシデントを見れば一目瞭然。運用する側の高い倫理性が問われてくる。
であるからこそ、こうしたシステムにつきものの批判-当然の批判-「国民監視のシステム」に対する政府の真摯な返答と姿勢も求められる。
デジタルディバイド(情報格差)と貧困問題
これらEHRはユーザー自身が利活用できるべきものだから、それらを使用できる人とできない人との格差が今後問題になってくるかもしれない。少なくとも現状ではネットワークに接続するにはある程度の継続的なコスト負担が必要になるし、当然技術的な知識も必要になるし、かつセキュリティにも配慮しなければならない。
EHRに関するシステムが生活に必須のものとなるにつれて、自分でできない人たちのために、アドバイザーやコンサルタントなどの需要が増えるだろう(コンピュータシステムはそんなに簡単に理解できるようにはならないだろう)。そうするとそこにも費用負担が発生してくる。
高齢者などにその支出が耐えられるだろうか。格差社会の中、経済的に困窮している人たちにそうしたシステムが利活用できるだろうか。かくして現在の貧困問題が、今までは健康保険や診療時の自己負担金問題から、情報についても健康格差が広がっていく。
情報部門が考えることではないかもしれない。しかし利用する「人」を見た場合に、決して無視できない課題だと思うのだが。
・・雑感
さて、今年は横浜での開催。ようやく関東で実施してくれたけれど、春の大会は長崎、秋の大会は広島だそうで。
ただ、多摩地区から横浜は遠くて、通うと結構疲れる。毎日通うので交通費もバカにならない。現地宿泊が安ければ、かえって遠い方がいいのかな。幹線が通っていて宿泊が安い、札幌や福岡みたいなところがベストかも。
ちょっとずれるけれど、ところで患者IDってのは、やっぱり保護すべき個人情報なんでしょうかねえ。リンクされるべきIDをきちんと管理できているかどうかに課題があるのだろうと思うのだけれどねえ。そこの病院がなぜそんな結論に達したのかの経過がわからないから、何とも言えないのだが。発言者ちょっと感情的になっていたし。・・あるセッションに参加しての感想。
コメント 0