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電子カルテベンダへの医療者の不信か-JAMINAセミナーにて [医療情報技師というお仕事]

 10月頭、JAMINAで「医療現場における完全ペーパーレス化は可能か?」というシンポジウムがあった。

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こんなところでやりました。Tokyo Midtownにて


 膨大な文書をどう管理するのか、特に紙から発生した文書をどう管理するか、その手法について、考え方についていろいろ提起されるセッションであった。

 実際に紙の記録は一時的なものとして扱い、すべて電子化してそれを一時情報として診療をしているところ。現在使われている文書をいっせいに書き出して、数を半分に絞ってペーパーレス化を進めたけれども、また新規に発生する文書があって数年でもとの数に戻ってしまったところ。 外来での診療情報を、統計処理できない画像情報として割り切って管理するところもあった。大学病院クラスなのだが。

・・そういえば近くの診療所は電子カルテなんだけれど、ワコムのタブレットを使って画面に直接医師が記録していたなあ。そのシステムを初めて展示会で見たとき、医療統計という頭から見ていたから、「こりゃどうかねえ」と直感したが、利便性が優先すべきと言うことか。そもそもそんな統計に何の意味があるのかってことか。


 統計処理に使うデータと、法的に保存義務のある診療記録はそれぞれ別の観点から保存していかなければならない。そんな視点から診療記録をPDF化して、あたかも紙のカルテを見るが如く管理する方法を提案していた医者もいた。

・・データは永遠に残るわけではない。
・・いや、確かにデータはかなりの長きに渡って残る。
・・しかしRDB(Relational DataBase)である以上
・・データが「ある」だけでは意味がない。
・・様々なDBをリンクさせたViewerで見た情報から診療されている。
・・そのViewerは永遠にメンテナンスされるものなのか?
・・じゃあ今のトレンドである、診療記録の永久保存という視点から見たら?
・・そもそも意外に大切なLook&Feelは保証されてるの?


 そんな危惧からPDFなどの汎用的なフォーマットでスナップショットをとり保管する。長期保存してもデータが見られないという心配もなくなるし、そもそも電カルの情報を見るのに、高いライセンス料払って電カル端末を用意する必要もなくなる・・と。閲覧だけで登録・修正権限が必要ない職種なんてたくさんあるものね。

 そんな視点から、複数の演者が「ベンダロックイン」という言葉を使っていた。要するに電子カルテを作っている会社を替えると、様々な問題が発生して、結局今の会社を使い続けなければならなくなる。そういうことを一言で表した言葉だけれども、ベンダを替えるのは大変なことなのだ。そしてその足元を見ているベンダがいることも事実。
 データはきちんと移行できるのか?コンバートできたとしても、それがきちんとコンバートできているという保証はあるのか(同ベンダ間のデータコンバートすらちょっと怪しい当院の例もある・・苦笑)?そもそもその費用はどのくらい?
 そんな金などどこにもない、多くの病院は事実上同じベンダを使いつづけなければならない悲哀。

 要するにそんな思い、理不尽さから、こんなPDFスナップショットなんて言う提案が医療関係者から出てくる。医療者のベンダに対する不信感、このセッションはそういうことだと言えないだろうか。

 会場参加者の約7割がベンダ関係者だった。発表や質疑は医療関係者からだけだったが、医療人の、ある種の不信感を、ベンダはどこまで感じ取ってくれただろうか。促されてさえも、あえてベンダからの発言がなかったのは、その辺の不信感をベンダが感じ取っていたからだろうか

・・・・・
 さてこのセッションで、複数の演者が、「e-文書法」の定義に当てはめての文書管理の困難さを口にしていた。しかもそんな電子情報管理の実現困難性と紙保管とのハードルの違いを口にしていて、異口同音に、自社基準での書類管理を行っていた(原本の紙書類はは別保管していたようだけれど)。
 以前介護保険の執拗な監査を書いたことがある。その経験から言うと、監査に来る官僚は、時として運用上不可能かどうかを判断せず、あくまでそこにある(実現不可能な)法律を基準として、しかも時には曖昧な法律を自分に都合の良いように解釈して押しつけてくる。

 そんな時、彼らはそれらの監査に耐えられるだけの情報管理を行っているのだろうか。監査官が思いつきのように発言する「この資料の原本をください(もちろん日常の診療には何の役にも立たない書類)」について、電子化された情報が「法的要件(この場合はe-文書法)」を満たしていない場合、当然紙の原本を、すぐに出すよう求められる。そんな対応ができるのだろうか、と思う。そして「診療報酬返還」なんて事態になったとき、事務職員を「こいつら」なんて平気で発言する医者(演者に本当にこんな「奴」がいた。まあ言葉尻をとらえて批判はしませんが)は、事務職の責任にするんだろうな、と考えながら。

 私も、e-文書法での運用は、なかなか難しいと思う。では実行できない要件なら、学会が声を上げて改善させるのも一つの方策だと思うのだよ。e-文書法は医療関係者ばかりをターゲットにしていない、というか医療関係をあまり考えていないだろうから、ね。

・・・・・

 さてと、もう一つ。ベンダとの信頼関係という面から。

 うちのベンダといったら、会議の予定日を当日キャンセルする(まあこれは仕方ないこともありますが)、会議の報告を指定期日に出さない、諸問題の回答を期日に連絡なくよこさないなんてことが常態化している。普通なら何ヶ月も前に予定を組んでおくべきメジャーバージョンアップを直前に指定して、大変苦労したことを以前書いた。そんなことが何回も続いて、こないだの会議の冒頭で苦言を呈したら、会議報告については「週明けに」との回答。それが週明けに届かなかったのだから、何というか、社会人としての規範はどうなっているのかと思案する始末。
 彼らの業務マネジメントは、私の仕事ではないんだけれどねえ。だからこんなことがあると、どっと疲れるのだよ。

・・とりあえず会議報告は予定日の午後11時頃にメールで届いていた。最低限のことはしていただいたのかと思うけど、同時に依頼していたデータ解析報告は本社からのものではなくて、担当SEさん作成の簡単な内容のもの。事前のお話と違うんだけど・・。

 そのベンダ、私のBlogを発見して、4月頃にずいぶんと本社からのアクセスをいただいたんだけれど、その後支店長が異動になって早速改善が見られたのか、と穿った見方をしたくもなったが、実際には違ったよう。改善はほど遠いのかしら。
 ベンダって、医療関係者からはただでさえ結構ひどい目で見られている。それをある意味現場の誤解を解くよう頑張っているのは私なんだよ。

 それに応えてくれってのはムリなのかねえ。ベンダのWさん。数年先にはハード含めて更新する時期だから、もう別ベンダの選定に入っているんだよ。密かにね。
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なんか売っているものはちょっと高かったです


*(追記)このエントリはベンダに対する厳しい意見を書いています。この時点で今後どうしようかと思案していたのは本当ですが、ベンダさんがいろいろと改善してくれたのと、私自身のベンダに対する意識というか対応を変えてきているので、現状では関係は良好かと思います。もちろんベンダに改善していただきたい点はありますけれども。
この記事、読んでいる方多いので、一応誤解のなきよう。

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コメント 2

医療画像

電子カルテの導入はいい事ですが、けど、各方面の訓練か、整備か、システムか、まだ、不十分です。これに対して、もっと、力を入れないといけないだと思っています。
by 医療画像 (2011-05-07 11:11) 

Mosel

Dellの方でしょうか。コメントされている内容は、まさにその通りと思います。電子カルテを導入している日本の病院は多くなっていますから、その経験を共有できる場があるといいな、と思っています。医療情報技師の部会などがその役割を担えればと思っていますが・・。
by Mosel (2011-05-07 13:24) 

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