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官僚社会と裁判所と企業社会と人々のやる気と [労働運動~働く人たち]

 会社で仕事をしていると、2つのタイプの人がいることが分かる。積極的に仕事を拡大する人と、自らの仕事の範囲を規定し、他の仕事を極力やらないようにする人。

・仕事をブラックリスト化して、ブラックリスト以外の仕事なら何でもこなす人
・仕事をホワイトリスト化して、ホワイトリスト以外の仕事は何もしない人

 どちらがいいだろうか。実はどちらもケースバイケースだと思う。要はあくまでもバランスが必要と言うことだが。

 これらのケースがうまくいっているとすれば
・組織が期待しているとおり、自分の能力を発揮して、多くの役割をこなす
・組織が期待しているとおり、自分の範囲の責任はきちんと取れるよう確実な仕事をする

 逆にまずくなっているとすれば
・仕事の範囲を広げすぎて何もかも中途半端、事実上何もやれていないのと同じ
・仕事の範囲を狭めすぎて、事実上何も仕事をやらないのと同じ

 前者は変革期や成長期にある組織、後者は安定期や停滞期にある組織で評価されるタイプではないだろうか。

 ただ実際どちらがいいかと問われれば、後者のタイプを選択する人は少ないのではないかと思う。確かに後者のタイプはいろんな意味で、いろんな立場からみても、なかなか苦しい。
 今のご時世、評価される社員というのは、積極的に仕事を作り出し、高い生産性をたたき出すような人であって、言われたことしかやらない、仕事を完遂させずに途中で放り出すような人は、決して評価されることはない。だからこそ、特に新人や新任は、しゃかりきになって働く人がいる。困難な課題を、無茶な体制でやり遂げる人がいる。逆に失敗すると、強い責任を感じて、自らを厳しく律する。そんな人は仲間内からも抜きん出る。組織から評価されるだけでなく、何よりまわりのスタッフからも評価される。組織の中で大事な人と見なされる。そしてますます重要な仕事を与えられる。
こんな人が「できる社員」となるのだろう。そしてそんな人材は、どんなところでも求められるに違いない。

 真面目で責任感があり、自己に対して厳しい。かつ社交的で積極的。そんな人たちが一様に持つ属性とはそんなところではないだろうか。

 そんな「正のスパイラル」(あえてこう表現するが)に、真っ向から対立する組織があるようだ。

・結局やり遂げたんだから、やり遂げられるような軽い課題だったんだ
・ミスしたのは自分でも、責任を取るべきなのは上司だから、部下が必要以上に責任を感じる必要はないんだ
・何より研修期間だったのだから、そこでの仕事はそもそも責任あるものじゃないんだ
・だから彼のやっていた仕事は重いものではない。じゃあ彼がうつ病になってかつ自殺してしまったのは、彼自身に責任があるって事だ



 川田直さんの労災認定を求める裁判で、東京地裁はこんな結論を導き出した。もっとひどい内容だった八王子での判決が2年前にでてから、私はなぜこんな発想が出てくるのかと思案していた。
 そしてある結論がふと頭に浮かんだ。それは判断する側のメンタリティが、安定期・停滞期にある-つまり官僚主義-に毒されている組織構造にあるのではないか、と言うことだ。私も以前の組織でこんな人たちと一緒に働いて苦労したが、彼らは自身の異常性が理解できない。自身のメンタリティが、あちこちでその可能性をスポイルしていることに気付かない。

 頑張って、頑張って、責任感を持って、重責を担って、そして病気になってしまった、死んでしまった、そんな人たちに対して、もう少し彼ら彼女らを評価してあげるような労災制度が、補償制度であればと思う。
 そんな人たちに対して、裁判所の判断はあまりにも虚しい。死ぬまで頑張らせて、司法の判断は「頑張ったあなたが悪い」。こんな言質が通る世の中で、競争力ある企業社会が営めるのだろうか。国際的なメガコンペティションの中で、高いモチベーションを持ちつつ働ける社員がどれほどできるのか。

・・と、ちょっと企業よりに書いてみましたが(笑)。

 いずれにしても、もっと人を大事にする社会を築かないと、利益優先で近視眼的な社会を、まず変革することが大事なのかもしれない。これからの少子化時代に、自身の尾を食って生きるような社会ではまずい。それに気付いている人たちは、実は結構いる。

 「win-winの関係」って言葉がちょっと前に流行った。交渉する当事者の、どちらもが利益を得る関係ってことの定義だ。
 巨大なものだけが果実を得る関係が、まずいことは言うまでもない。そしてそれを司法が追随するのはもっとまずい。それを正してあげなければ、と思う。
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