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仕事と成果と報酬と-組織からのメッセージ [現場のシステム]

 以前の会社は電子カルテ導入予定病院の関連会社だったものだから、組織をあげて医療情報技師を増やそうと、社員こぞって受験したことがあった。全国での合格率は3割くらいだったから、そんなに難しい試験でもない(いや、難しかったんだけれど、どうも正答率を低く設定していたようだ)。はじめはなんだかうさんくさい、医療情報学会が金集めのためにやっている資格かな、とやや斜に構えてみていた。

 そして今では医療情報学会にも入会し、時々大会に出席している。自病院の中しか知らない「タコつぼ」職員になってはいけないとの思いからだが、大会は学術的な内容が主。私たちが内輪で行う経験主体の「学術集会」とは逆の内容で、現場の仕事にはほとんど役に立たない。けれどそんな中でもいろいろな病院の経験や業者の情報などを知って、そして何よりこうしたシステムに関わっている人たちの組織がかいま見えるから、案外役に立っている気がしないでもない。
 この医療情報技師はポイント制なので、学会参加や論文発表などでポイントを加算していかないと、失効してしまうのである。前にも書いたとおり、大会は関西や地方でやるもんだから金がかかって仕方がない。まあまた試験受ければいいのだけれど、試験勉強ってのは結構面倒なものだし、これまた別にカネもかかる。

 さて、一般的な会社には、社命で資格を取らせた場合、資格手当やボーナスなどのインセンティブを与えるのが普通だ。
 このインセンティブ、コンピュータ系企業においては、初級シスアド程度でさえ2万円程度のボーナスを出すのが普通(「高額の報償金が出るIT資格」Source:ITPro)だし、医療情報技師は月に数万円の手当を支給するベンダもあると聞いた。が、後者は都市伝説かも知れない。

 グロービスの「MBA人材マネジメント」には報酬制度のもたらすものとして以下の興味深い4点を提示している。以下簡単に要約する。
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企業が給料として、かつ、または報酬として社員に提示するものの役割は
1.従業員を組織にひきつけ、定着させる
2.従業員に対して組織が価値を認めるもの、認めないものをメッセージとして伝達する
3.従業員が組織の成果に貢献するような行動をとるための動機づけを行う
4.従業員の個人的、社会的な要求を満たす

報酬システムは、上記のすべてを、組織の目標達成に矛盾しない形での最小の支出で達成しようとするものである。
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で、これらの事柄が達成されなかった場合-つまり報酬や給料に満足できない場合-の社員の行動は、合理化を経た後、次の5点を実行する、とある。
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1.仕事を熱心にしなくなる
2.自分の利益になることをする-例えば勤務時間中に個人的なことをするとか、休憩時間を多くとるとか、就業規則に則りつつ、または注意されない程度に違反しつつ遅刻するとか早退するとか
3.比較する相手に対して、給与や報酬だけで比較するのではなく、有給休暇のとりやすさとか、医療保障があるかとか、職場環境がいいとか考えを転換する(「合理化」というもの。もちろん逆方向にも働く場合がある)
4.自分と比較する相手を変えて、あいつと比べればまだマシという発想をする(これも「合理化」。もちろん逆方向にも働く場合がある)
5.仕事を辞める
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 平たく言うと、会社が金を出す事柄というのが、会社が社員に対して求めていることというわけ。だからどんなにがんばろうが、成果(であると社員が考えている事柄)を出そうが、会社が金を出さない事柄は会社にとって無駄なこと、意味のないこと、ということ。そうしたことを報酬システムは表現しているというのである。会社からのメッセージと言うわけだ。

 報酬制度とは、各所で破綻している不透明な成果主義は論外として、社員の仕事に見合った、そしてなによりその社員が「公正」であると判断してもらえるような、判断基準が透明化された制度であることが必要と思う。そしてインセンティブによって、社員の力量を組織の進む方向性に誘導できればなお良い。

 それが打ち破られたときどうなるか。例えば評価指標が不透明、上司や評価を下す人物が明らかに無能、社員に努力を強いながら評価をしないとか、評価が口先だけで金や待遇が変わらない、あまつさえ悪くなるとか。(そんな時に限って自己の業務評価をせずに環境悪化のせいにしたがる。「景気が悪い」とか「この業界は逆風だ」とか言い訳をしたがる。)

 そんなことが続くと人はやる気をなくしていく。ましてや企業が、社員にとってつらい決断を迫るようなとき(例えば経営危機に陥って賃金カットを提案するときなど)、モチベーションが低下している社員はすんなりそれらを受け入れることはなかろう。

 苦しいときこそ社員に公正と感じさせる、透明な企業運営が求められる。ある組織はそれをして「民主的管理運営」と説いた。その「組織」は現在、「民主的管理運営」を実践しているだろうか・・。

 へ?ウチはどうかって?手当もボーナスも何もない(苦笑)。学会の参加費すら自腹ってことは以前も書いたっけ。
・・・まわりの職員たちの助けでなんとかモチベーションを維持し続けています。仲間とは実にありがたいものです。


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