ヤマト糊とフエキ糊 [雑想]
懐かしいね、という言葉は世代を問わずよく見られるけれど、「懐かしい」という経験を世代を問わず共有できることは、実は少ないのではないかと思う。「懐かしい」とは過去の記憶に由来するものだけれど、その記憶は絶えず変化する時代の流れに逆らえないからだ。
計算尺を見て「懐かしい」と思う人は、リタイア間近の年配者だろう。若い人には懐かしいどころか理解できない物体であるはずだ。計算をするには実に便利な計算尺は、かつて認定資格もあったほどだけれど、今ではブライトリングのパイロットウォッチくらいにしか残っていない。ニキシー管やFL管は私には懐かしいけれど、今は知らない人も多いのかなと思う。
昔のアニメを見て「懐かしい」と言う人-例えば「ハイジ」とか-は、同じ番組であっても世代間の記憶の共有は出来ていない。ハイジを本放送時に見た人、再放送で見た人、子どもとして見た人、逆に子どもに見せた人。「懐かしい」思いは同世代には共有できても他の世代との共通性は乏しい。
で、「糊」である。
50代も、40代も、30代も、20代も、なんだか似たような記憶で経験を共有できるもの、それは学びの場でということになろうか。一時回顧ブームがあった「給食」は世代間で食内容の違いがあったけれど、図画工作の場面で必ず使われたこれは、多くの世代で経験を共有できる希有な存在だろうと思う。
どんな学校や保育園などにもあった糊。でも小学校でも高学年になると、そして仕事場では、もうこの糊じゃなくて「アラビックヤマト」とかスティックのりになっていた。やや強力な用途には「木工用ボンド」やゴム糊などになっている。このでんぷん糊は学校での工作が主用途で、その共通性が高い。だからこそ世代間で記憶の共有があるのだろう。
どうもきっちりとシェアを分け合っているようなのである。「懐かしい」レベルが「フエキ糊」の側に傾いている人は西側の出身、「ヤマト糊」に懐かしさを感じるのは東側のようだ。当時私のまわりの仲間たちはフエキ糊をヤマト糊のニセモノと思っていた。だから北海道で育った私は、何となくヤマト糊のほうがブランドイメージが高い。だがどうも社史をみてみると、フエキ糊のほうが開発の歴史も長そうだ。
で、職場に「フエキ糊」を持って行くと、私より20も年上の職員が、「懐かしい」と声を上げて昔の話をした。ボール紙にはなかなかつかないんだよねとか、糊の口がガビガビになって固まってなんて、私とまったく同じ記憶を共有していた。さらに上の世代も、同じような記憶を持っていた。それはこの糊を使ったことのある、しかも小学校時代に使っていた人なら誰でも感じていた事なのだろうと思う。
こんな記憶を共有できるアイテムというのは、実に珍しく、大事なものなのだろうと思うのだ。これと同等の存在はなにがあるだろう。ああ、もう10年ほど経てば「アンパンマン」がその座を受け継ぎそうだ。
懐かしさも手伝って、子どもの遊びに使えるかと思って買ったのだが、娘は糊を開けて食べていた。でんぷんだからなめると甘いはず。しかし食べた経験はさすがに共有できないだろうなあ。
お久しぶりです
会社では繰り出し式の棒糊しか買ってくれないのですが
収入印紙を貼る時などは澱粉糊じゃないと剥がれてしまうので
自費で購入したのを持ってってあります
聞いたことのない会社ので中國製...
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by 伍玖肆 (2006-07-22 18:34)
伍玖肆さん。こちらこそお久しぶりです。いつもありがとうございます。
私の職場ではもっぱら「アラビックヤマト」ですね。あのパッケージそのままに巨大化させた詰め替え用のボトルは、実際にみると結構なインパクトがありました。
収入印紙は切手と同じでウラに糊がついていませんか?なめても大丈夫な糊のはず。でも枚数が多いと、舌が乾燥してつらくなりますね。
by Mosel (2006-07-23 22:42)
おぉアラビックヤマトって黄色のですね
そう言えば以前はそれを会社で買って呉れてたんですが
いつの間にやら棒糊一辺倒になってしまいました
棒糊って当初はドイツからの輸入でしたよね
それが国産化されてから着きが悪くなったみたいな...
収入印紙も裏糊がついてますけど
他人(ひと)が舌で舐めてるのを見ても美しくないので
澱粉糊を自費購入しているという気弱な小子です
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by 伍玖肆 (2006-08-06 14:05)
切手の裏糊は舐めてますよ。昔切手を集めていて、切手の糊の開発に大変苦労した-なにせ舐めても害なく湿度の高い日本でも使える条件-ということに敬意を表して。でも枚数が多くなるとちょっとつらくなりますね。
by Mosel (2006-08-15 23:07)