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上司のあるべき姿と個人的な体験-無責任な上司には苦労するということ [現場のシステム]

・・さりげなくアクセス数の多いこの記事、ようやく改訂しました・・

 あなたのまわりにやたらグチっぽい人はいませんか?何か問題があるとすぐに他人や他部門の責任にしたり、こそこそ陰口をたたいたり。
 そんな人が自分の上司だったらどうします?こんな人の元で仕事のパフォーマンスは上がるでしょうか。あなたの仕事へのモチベーションは保たれますか?・・こんな人は私のグチもどっかでこぼしているんだろうな-そう、大体においてグチっぽい人はあなたのいないところであなたの悪口を振りまいているものですよ・・。

 いかに「高業績チーム」をつくるかという本がある。ハーバードビジネスレビュー(以下HBR)の論文を集めたオムニバスだ。組織運営を考えるとき、実に考えさせる内容が多い。
 第2章:模範的チームはなぜ失敗したか(原題:The Nut island effect:When good teams go wrong)やる気があって結束力も高い「模範的チーム」-ナットアイランド下水処理場-が、上部組織の管理責任放棄から、現場の経験主義をまんえんさせ、結束力が高いにもかかわらず業務としては崩壊している事例である。この経験主義を絶対視する姿勢は、逆に彼らの仕事に対する不安の表れとも感じられた。不安や悩みを上司が放置する体制で、優れた仕事は保証されないという教訓であろう(*)
 第4章:チーム学習を左右するリーダーの条件(原題:Speeding up team learning)医療機関における新しい手術導入について、技量習得の速度と組織の関連性を考察した論文である。優れたチームとは、「学習を中心としたチーム編成」「リーダーがメンバーの学習意欲を高めるよう、課題を明確化」「リーダーの言動によって、コミュニケーションやイノベーションを促す職場環境を構築」。課題の困難さや自らの過ちをリーダーが積極的に認めて、スタッフのストレスを除去すること。自分の経験や水準を元に固定観念を作り出さないことなど。これらは医療事故や航空機事故をなくす方法論にも類似した点が多くある。
この組織を立て直した人物は、HBR誌05年9月号の論文でもハーバード大学付属病院を立て直しており、その手法についても実に参考になる

 ダイヤモンド社の「人材マネジメント」に収載されている「ピグマリオン理論」と呼ばれる論文はいわゆる「部下はほめれば育つ」という内容のもので、初出が69年と古典的ながら、いまだに多くの示唆を与えてくれる。同書の「ダメージ症候群」はその逆を行く内容が、どれほど生産性の減少を招くのかという対比であり実に興味深い。
 このほかHBR誌の03年論文「Bクラス社員のレゾンデートル(存在意義)」(書籍としてはダイヤモンド社「いかに「問題社員」を管理するか」)など、地道に働く職員の組織的な重要性が説かれている。
 HBR誌はこのように組織運営のさまざまな面、モチベーションの維持・向上について主として経営者の観点から、多くの組織が悩んでいるであろう事に、多くはあいまいだけれど、時として的確にこたえてくれる。日経の出版物のように「FUD(Fear,Uncertainty,Doubt)」-危機感をあおり、モノやサービスを買わせることにつなげる「商法」-っぽくなく、その辺も気に入っているところだ。

 そんななかでプレジデント誌5/1号では「「できる上司」入門」としてキャノンの会長やその他多くのインタビューが掲載されている。「当事者意識が強いリーダーは、部下が失敗しても部下の責任にせず、自分で責任を負います。部下は失敗を恐れず、思う存分知恵を出し、挑戦することができる。結果、部下が育ち、組織はどんどん強くなっていきます。」もちろんこれら経営者の意見が陰の部分-リストラと称する強制解雇など-を含めて実態を完全に反映しているとは言い難いだろうが、この言行の本質については変わるところはない。
 同誌の「管理職の禁句集『部員が幻滅する一言』」には、いかにもな幻滅言葉「それ言ってあったよね」「何でやらないの」「俺が上に怒られるだろ!」などが踊る。

 これらに通底する内容とは何か。上司は、個人、特に自分自身ではなく組織としてのパフォーマンスを優先すること。そのためにどのように責任を持つか、組織全体の力量を引きあげるか、であろう。「幻滅する一言」はそれに反する内容-業務指示の放置、責任転嫁、自己保身、一言で言えば「無責任」がかいま見えた時、ということになろうか。
 冒頭上げた「グチっぽい人」は結局のところ、批判されたくないから当人のいないところでグチをこぼし、そして陰口をたたくのだし、それらは自身の能力のなさを覆い隠す仮面の役割を果たしている。そこに見えるのは「自己保身」と「無責任」。その二つが組織全体に蔓延すると「官僚主義」が横行する。官僚主義は組織のパフォーマンスを下げることはあっても上げることはない。

 これら無様なマネジメントが生んだ、いま企業で焦眉の課題となっているのが以下の問題。

 nikkeiBPの特集記事「20-30代で急増する社内うつ」記事の中程で「こうした社内うつを回復、あるいは予防する手段は何か。ときとして、がむしゃらに働いてきた上司ほど、こうした症状を怠けや精神的弱さのせいにしたがるが、問題は仕事の量ではなく、与える仕事の明確な目的や狙いを示さず、適切に権限も与えることのできない上司自身のマネジメント能力の欠如であることをまず自覚すべきだろう。」慧眼であるが、「がむしゃらに」働かずとも官僚主義が蔓延する組織において、保身に走る人物にも同様の傾向が見られるものだ。
 かつてはこれでもよかったのだと思う。社員の精神力が強かった?いや、個人の問題ではない。昔は社員が多く、まわりの誰かがお粗末なマネジメントをフォローする役割を果たしていたのだろう。しかし「社内失業」など人材をおろそかにする状況になって早10数年。バブル崩壊からこの辺の問題がクローズアップされてきたのではないか?こんな状況では特に部下に対する上司の責任が問われる。そして会社などの組織力量が問われる。そんなときにマネジメントの大切さを痛感するものだ。

 さて、こんな事を書いたのは

・・・・・

 直前の上司は、すぐに他人に「バカヤロ」とか「何考えてんだよ」という人物だった。実に乱暴だ。その言葉を必ず相手の前で言う。そのような言葉に耐えられなそうな人物には、その人の前ではもちろん、その人がいない場であっても言わなかった。そんなだから乱暴な言葉遣いにもかかわらず、彼を信頼する人が多い。私も同じだ。彼はいまだに私を頼り、そして私は部署を違えても、その信頼に全力で応える。
 前の上司だった人物も、他人を罵倒することがよくある。しかし決してその言葉を直接相手に伝えなかった。世ではそれを「陰口」という。必ず当人のいない場で「アイツはアル中だ」とか、心の調子の悪い人に「病気じゃないのー」とか、不整脈で倒れた職員に「働きもしないくせに」と陰で言う輩だった。在職中に亡くなった方への心ない言葉に、彼女の以前の部下が憤慨したとも聞く。

 マネジャー-つまり部下を持つ人たち-とは、自分の仕事だけではなく、組織全体のパフォーマンスを重視する必要がある。自分だけが頑張って仕事をしてもダメ。マネジャーの評価は、そのよってたつ組織がどれだけ高水準の働きをするかが問われるので、スタッフの能力や調子に常に配慮しなければならない。時としてそれは私生活に関する部分に分け入らねばならない場合もあろう。その時、マネジャーとスタッフとの信頼関係が問われてくる。しゃくし定規な上下関係だけでは、運営が行き詰まるのは世の道理であろう。
 ましてや他人をけ散らして相対的に自分を高めようとするのは論外で、こそこそ陰口をたたくのはその最たるもの。だからマネジャー時代の私は、決して陰口や愚痴をこぼすことはなかった。それは私の心を大いに苦しめたが、今となってはそれだけは、当時の自分を顧みて、唯一マネジャーとして評価できたことかな、と考えている。
・・さすがにがまんできない瞬間が、年に一、二度あったけれど。

 その3つほど前の上司と、ひょんな事から飲み会で同席する機会があった。私は彼女が上司だった時期を除き、必要十分以上に活躍しているのだが、こいつの部下だった頃は何もできなかったと言っていい。業務自体が曖昧模糊、ただ経験のみがその業務を遂行できるカギ、そんな職場だったので、若く経験のない私には、当然何をしてよいのやら判断できず、彼女は「私も分からないから」というだけでフォローなし。何もしないならいいのだが、陰で私への誹謗中傷を行うという実に苦労の連続である職場だった。
・・陰口をたたく彼女と私の関係を心配したのか、複数のスタッフが教えてくれた・・
 今振り返ると、当時私の部下だった人たちにはずいぶんと迷惑をかけたと思う。それでもみんな私を責めることなく、在任中も役職を離れた後でも多くが好意的に接してくれた。システムエンジニアとしての異動先職場は、ろくな仕事をしていないくせに、陰で現場をバカにする状況だった。そのような運営を批判し、これまでできなかったレベルのシステム管理を行い、トラブルを減らすこと。これがいわば私の恩返しであった。その「恩返し」は一定果たせたのではないかと思う。

 そんな元上司にも私は感謝をしている(*)。彼女の元で働いていた時期、私は自身の能力、そして組織自身のあり方にも疑問を持った。オレはダメなのか?何で仕事ができないんだ?一体何がまずいんだ?・・組織には何の指標もなかった。で、マネジメントの勉強を進めた。力試しを目的に資格試験もしてみた。忙しい中とてもまともな勉強はできなかったが、とりあえずいくつか合格した。たった一冊の本から、組織の問題点が手に取るように分かった。まさに目からウロコが落ちた。そして読めば読むほどその論拠は強化されていく。それは実に知的関心を惹起され、そして不思議なことに悲しかった。
 マネジメント関連の論文から得たエッセンスを、その飲み会に同席している人たちにちょっとだけ話してみた。存外好評だったような気がしないでもない。酔っていたから状況は正確には分からないけれど。
*あ、もちろん皮肉。学習素材がすべて反面教師という組織はどんなものかしらね(笑)

 元上司は先日の飲み会で、実に珍しいことながら、当人、つまり私が同席している場で私の過去について批判めいたことを言った。トップマネジメント(彼女もそのメンバーだ)への批判が参加者から出始めたので、私が一つ相づちをうった。その苦し紛れの返答としてなのだろう。批判を恐れるからこそ陰口をたたくことしかできない彼女にとって、これはかなりの進歩であろう。そしてこのような成長を示してくれた彼女に、当然私は最大限の敬意を表せざるを得ない。
 酔席ながら実に上品な対応と今更ながらに感心する。私は大要こう言った。「おまえが管理職として動かないから、俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ。バカいってんじゃねえよ」。乾杯!


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ai

はじめまして。
・・・日々感じることも多々書いてあるんですが・・・・・・
ん・・・
by ai (2006-04-16 08:52) 

Mosel

 あいこさん。Blogにはコメントさせていただきましたが、ここでのお返事は遅れてしまい失礼いたしました。
 このエントリはもう3年ばかり前の上司の話です。彼女もその1年前に管理職になり、研修など何もない中での任命に苦労しているようでした。もっとも前職のころからグチっぽいことで有名で、自部門を守って他部門の攻撃ばかりしていることが各所で問題を引き起こしていた。それが経験少ない私の配属で、ちょうどよい攻撃相手ができたと言うことでしょう。
 上司運がないと、お互い苦労しますね。幸い私はうつ病直前で生活を自力再建できましたが、本当に苦労しました。「無能」な上司はまさにそのこと自身がある種の「犯罪」です。
by Mosel (2006-04-19 23:08) 

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