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世論はそんなに動いてはいなかったっぽいんだけど ~2012年衆院選を振り返る [社会情勢]

 確かに民主党は衝撃的なほど得票も議席も減らしたんだけどさ・・。

 12月16日の衆院選は自民党が294議席を取って圧勝。公明党も大阪で維新と選挙協力したのが実ったか31議席と大幅増となった。一部で「オワコン」とまで言われた日本維新の会(54議席)やみんなの党(18議席)は、意外に議席を取ったと思う。
 対する民主党は57議席と、今後野党第一党とはなろうが、結党以来最低の議席数。共産(8議席)、社民(2議席)も改選前からさらに議席を減らす惨敗となった。「第三極」の一つとして、ネットの一部で話題になっていた未来の党(9議席)も低調。

 国民の圧倒的多数が自公政権、そしてマスコミが連日大報道を繰り返した「第三極」にも一定の支持が集まり、日本国民はそれを望んでいるのかと・・

   「錯覚」

 してしまいそうな感じだが、どうもそうではないっぽい

 12月18日付「しんぶん赤旗」に、各党の党派別・都道府県別得票数/率が掲載されていた。なんだ、自公の支持、よく見たら減ってるじゃん。

 比較するにわかりやすい比例代表からざっと分析してみる。


民主壊滅的な2000万票減、自民公明も得票減、共産・社民は自公より減少率高い。しかし第三極とやらはその減少分を受け切れていない

 得票率は以下の通り(共産党がアタマにあるのは赤旗からとったから)

共産   自民   民主   維新   公明   みんな  未来  社民  その他
6.1%  27.6%  15.9%  20.3%  11.8%  8.7%  5.6%  2.3%  1.7%

 前回選挙での得票比(100%の場合前回と同じ得票数)
共産   自民    民主   公明   みんな   社民
74.6%  88.4%  32.3%  88.4%  174.6%  74.8%

 国会の主要5党が減らした票数はざっと2535万票(うち2021万票が民主)。しかしいわゆる「第三極」と称される「維新」や「みんな」、「未来」「大地」などの獲得票数(「みらい」は前回比増分)を合計しても1860万票ほど。民主やらが減らした票の7割ほどしか獲得できていない
 民主に失望した人が自民などに回帰したり、「第三極」報道に踊らされて投票した傾向はあろうが、既成政党全般に失望したのか、そもそも投票しなかった勢力もかなりあることがわかる。

 比例の議席について得票率から配分すると議席数は下記の通りになる(その他の政党については各種諸派をまとめているので数値が大きくなっている)。
*すんごいざっくり計算しています。ドント方式とか考慮していません。
共産  自民  民主  維新  公明  みんな  未来  社民  その他
 11   50   29   37    21   16     10    4    3

 けれど実際の議席は・・
共産  自民  民主  維新  公明  みんな  未来  社民  その他
 8    57   30   40    22    14    7    1     1

 得票と議席との乖離率は・・
共産   自民   民主   維新    公明    みんな   未来   社民  その他
72.9% 114.7% 104.8% 109.5%  103.6%   89.4%  69.4%  24.2%  32.7%

 本来得票数に比例した議席数が確保できるはずの比例代表制で、比較的大政党がより多くの議席を得ていることがわかる。全国一区の比例代表なら社民も4議席は取れる計算で、ブロック制にしたことへの弊害がよくわかる。

 しかし小選挙区はそんなもんじゃない。

4割の得票で8割の議席~小選挙区制があらためて最悪の選挙制度であることを証明した今回の選挙

 小選挙区は各地域を非常に細かく分割しているし、全ての政党がまんべんなく候補者をたてているわけでもない。だから選挙区を個別に見ていく必要があるのだが、ここではざっと全国の状況、そして「維新」など特定の地域に強い勢力を持っているところをトピック的に見ていきたい。

 比例と同様に小選挙区の得票を全国で合算する。全国にまんべんなく候補者を出した共産、自民、民主で比較する。得票率から議席を配分すると下記の通りの数値になる。

共産  自民  民主
23   129   68

 実際の議席
共産  自民  民主
 0   237   27

 得票と議席との乖離率は・・
共産     自民   民主
計算不能 183.7%  39.5%

 共産党への票は完全に死票になってしまっている。自民は本来得られる議席のほぼ倍。民主は半分以下だ。実際の得票率を見ても自民党は4割の得票で8割の議席を獲得している。
 小選挙区制導入から16年。今では死票を嫌って勝てそうな候補に入れる傾向もあるだろう。ということは小政党の得票がこれら大政党に流れる傾向があるのにもかかわらず、これほどの乖離が発生している。

 大阪では維新の支持率が大変高いなんて言われていた、大阪選挙区(全19区)を見てみよう。以下小選挙区の得票率。

共産   自民    民主   維新   公明   みんな  未来  社民  その他
11.6%  25.9%  14.5%  30.6%  10.5%  1.2%  3.8%  0.1%  1.80%

 得票率から議席数を配分すると
共産   自民    民主   維新   公明   みんな  未来  社民  その他
 2     5      3     6      2     0     1    0     0

 実際には
共産   自民    民主   維新   公明   みんな  未来  社民  その他
 0     3      0     12     4     0     0    0     0

 得票率と議席数との乖離は
共産   自民    民主   維新   公明   みんな  未来  社民  その他
DIV/0  61.0%   DIV/0  206.4% 200.5%  DIV/0  DIV/0 DIV/0  DIV/0

 維新は強いと言われた大阪でも、3割ほどしか得票していない。にもかかわらず議席占有率は63%。実際には維新と公明は大阪では完全な選挙協力を結んでいたので、両者を合算すると得票率41%。議席占有率は84%にもなる。
 自民党の全国平均得票率/議席占有率も4割の得票で8割の議席だったので、ここ大阪でも同じ傾向が見られたと言えようか。

 しっかし、カルトとファシスト連合かあ。大阪大変だねえ。まあ石原後継が430万票も取っちゃう東京都民が言えることでもないか。


議会というものは民意をきちんと反映しなければ機能しない

 今、国会と人民大衆が乖離していることが大きな問題になっている。22日付の朝日新聞にも小熊氏の論考が掲載されていた。
 乖離も何も、選挙制度が民主主義的に機能していないからこその問題じゃないか。
 だから民意と国会が離れてしまうんだよ。選挙制度の問題だよ。
 小政党を統合して選挙連合なんて提案するよりも、きちんと得票率に合わせた議席配分ができるよう、選挙制度をあらためるのが先決ではないかと思う。

 というわけで、当面私は全県一区の中・大選挙区制を提案したい。本当は全国一区の比例代表制が望ましいとは思うが。

 民意をきちんと反映した選挙制度を。選挙制度もそうだし、一票の格差是正もそうだ。それが議会制民主主義を採る国家の、最低限の責務ではないだろうか。

 このままでは国会と人民がますます離れてしまう。国会が機能せず人民大衆の不満が鬱積すると、ファシズムが台頭する。それはかつてドイツがたどった道。そしてここ日本でも、痛苦の経験がある。
 保守系の人間でも民主主義が機能しないことへの恐れはあるはずだ。いまこそ選挙制度を改めねば、と今回の選挙を振り返って、改めてそう思うのであった。
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ayu15

うちの日記のどこかに書いたと思うんですがナチスはしょうがい抱えた人(特に精神)同性愛など叩きやすいとこからたたいていき最後に保守派を弾圧したそうですよ。

「あいつらどこかたりない」という人が処分されない政治はやばすぎです。
最後にはそういうの容認(黙認)して人にもくるかも?
気がついたときは手遅れです。
by ayu15 (2013-01-21 09:36) 

Mosel

ayuさんへ。
おっしゃるとおり、ナチスはまず敵(共産主義者)の弾圧から始めました。国会議事堂放火という事件をでっち上げまでして。
このへん産経新聞のでっち上げ報道から始まった、東京都の教育機関への日の丸君が代強制に似ています。

今は生活保護がそのターゲットになっているように思います。生保叩きはその辺の視点からも見ていかなければならないように思います。
by Mosel (2013-01-21 20:11) 

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