日航の整理解雇 ILO、調停に動く 労組側の訴え受け 政府 対応問われる(12/26) ILO本部から日航キャビンクルーユニオン(CCU、内田妙子委員長)宛てにファクス送信された書状によると、13日付のCCUなどの要請書を受け取り、「日本政府機関に対して、すでに、直ちに調停を行った」と報告。「日本政府によるコメントや意見が表明された場合は、貴殿にその旨、お伝えする」と述べています。短期間でILOが行動するのは異例のことで、日本政府の責任ある対応が問われています。(引用終わり)
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航空連などがILOに要請を行ったのは12月10日のはず。わずか2週間ほどでILOが動き出したのは、年末に労働者が解雇されてしまうという緊急性もあるだろうが、この事案が国際的に見ても通用しない異常性をはらんでいることの証明ではないかと思う。
日航「整理解雇」 ILO条約に違反 航空連など 日本政府への指導要請(12/11) 航空労組連絡会(航空連)と日本航空乗員組合、日航キャビンクルーユニオン(CCU)は10日、国際労働機関(ILO)日本駐在所を訪問し、日本航空の「整理解雇」実施がILO条約違反だと指摘し、日本政府への調査・指導を求める緊急要請書を提出しました。(引用終わり)
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全国紙各紙では上記12月10日のILOへの要請行動は取り上げた。しかしILOが調停実施したことについてはふれられていない。航空連等は記者会見をしたのだろうと思うが、なぜだろうか。
こんななかで、年末に発売された航空雑誌「月刊エアライン」では、早稲田大学の某教授名で日航再建問題を取上げ、解雇問題には「日航は希望退職など努力を尽くしてきたから整理解雇は認められるだろう」というようなことが書かれていた。労働法制に門外漢の人物が軽々にふれるべきではない事柄と思うのだが、そのような方には、クリスマスイブに掲載された「しんぶん赤旗」記事がわかりやすく参考になる。
日航「整理解雇」の異常 経営責任を労働者に回すな(12/24) 日本航空は、パイロットと客室乗務員202人にたいして12月31日付で解雇することを通告しました。これは「整理解雇の4要件」という重要な雇用のルールを崩すという意味でも、国民、利用者が願う安全・安心の運航に重大な障害をつくるという意味でも絶対に許されません。整理解雇の撤回を求めるたたかいは国民的な意義をもっています。
「4要件」を満たさない 全労働者にかかわる問題 整理解雇とはどういうものか。労働問題の担当官庁である厚生労働省の見解をみてみます。ことし9月に発行したパンフレット『知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識』で、次のように定式化しています。(中略)
“勝ちとった成果”70年代から全国で闘争 「整理解雇の4要件」は、労働者の長い間のたたかいでかちとった成果です。
オイルショックがあった1970年代半ば以降、大企業を中心に不当解雇があいつぎ、全国で労働者、労働組合が撤回闘争に立ち上がりました。このなかで裁判に訴え、解雇を規制する重要な判決をかちとってきました。(中略)
破綻の原因は航空行政 米貿易赤字縮小の標的に 日本航空の負債総額は約2兆3000億円に上ります。赤字の根本には、政府による誤った航空行政のツケを背負わされてきた問題があります。
過大な設備投資 米機大量購入 まず、過大な設備投資の問題です。これには日米間貿易不均衡解消を目的とした米国からの航空機購入の圧力を指摘しないわけにはいきません。(中略)
赤字路線の強要 地方空港次々 つぎは、国土交通省が進めてきた空港整備計画の問題があります。アメリカの要求に沿った過大な需要予測にもとづいて、全国各地に次々と空港がつくられ、狭い国土に99カ所もつくられました。
この空港建設の資金となってきたのが、特別会計の「空港整備勘定」(2009年度、1285億円)です。財源は、世界的にも異常に高い着陸料や燃料税など、航空会社が支払う「公租公課」(負担)です。日航の負担分は、年間1200億~1700億円にものぼっています。(中略)
経営陣の放漫も重大 先物買い・事業失敗… 日航経営陣による放漫経営も重大です。ドルの先物買いで推定2210億円の損出を出したり、ホテル・リゾート開発事業の失敗による970億円の損失、52億円を投じたHSST(磁気浮上式鉄道)を1億2000万円で売却するなど、数々の損失を出してきました。
ドル先物買いの大損や大量のジャンボ機購入の背景には、大蔵省(現財務省)や国交省からの天下り官僚の存在がありました。
行政の歪みに是正を 利益優先で安全守れず このように日航の経営破綻は、日航経営陣と、長年の自民党政権下ですすめられてきた航空行政の歪(ゆが)みにこそ真の原因があります。(引用終わり)
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各国の労働組合も続々と不当解雇撤回への支援を表明している。
日航整理解雇 世界から非難 国際運輸労連(147カ国644組合)も各国の労組も 労働者との連帯を/空の安全脅かすな 日本航空が強行しているパイロットと客室乗務員計202人への整理解雇に対し、国際的な批判が広がっています。世界各国に国際線を相互に乗り入れる航空会社は、ひとたび事故となれば、協力して対応する関係にあり、労働者も強い連帯意識をもっています。
交通運輸産業の労働組合の世界的組織である国際運輸労連(ITF、147カ国644組合440万人以上加盟)は、本部ホームページ(英語)のトップニュース(26日時点)で、「ITFは、日航の客室乗務員との連帯を呼びかける」と伝えています。(引用終わり)
*ITFのニュースはこちらのようだ。
ITF calls for solidarity with JAL cabin crew(12/22)-----
頑として不当解雇を撤回しない日航上層部に対し、とうとう裁判闘争がはじまった。1月には他の客室乗務員等も訴訟を起こす予定とのこと。
パイロット原告団結成 日航の不当解雇に負けぬ(12/28) 日本航空を整理解雇されたパイロット58人が28日、不当解雇撤回を求めて提訴するための原告団を結成しました。東京都内で結団式を行い、当事者や支援者約80人が集まりました。12月31日までに撤回されない場合は、裁判でたたかうとしています。
結団式で山口宏弥原告団長は、「いちばん古株なので、団長におされた。みんな独りではない。知恵を出し合い乗り越えていこう」とあいさつしました。
日航は会社本体の人員削減目標1500人に対し、1700人以上の希望退職者がいる状況です。4~11月の営業利益も1460億円にのぼり、整理解雇の必要性はありません。ところが日航は、パイロット94人、客室乗務員108人に対し、12月31日付の解雇を通告しました。(引用終わり)
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たたかいに踏み切った多くの方々には敬意を表したい。そして記者会見での発言にもあったように、希望退職の影に、空白のスケジュールを示され、恫喝まがいのことをされつつ、「希望退職」したたくさんの人々がいることも忘れてはならない。
不当解雇でたたかうことは並大抵のことではない。たたかいによって得られるものが何であるか、今の自分の生活状況などによっても変わってくる。だからたたかいに踏み切らない人を責めることはできない。
しかし過労死の裁判を支援していて痛感したことがある。こうした働く人たちのたたかいに共通していることとは、そのたたかいが、当事者だけの問題ではなく、この世界に生きる全ての人々に関係することということだ。それは権利を求めるたたかいであり、権力者の横暴を食い止めるたたかいでもある。だからこそ私はこのたたかいを支援していきたい。
長いたたかいになるだろう。少しでも働く人たちが良い方向に向かえるよう願ってならない。
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もちろんこの問題は、政権与党である民主党らの姿勢も問われている。民主党支持者らの動きが鈍いのはなぜだろうかとも思う。