SSブログ

国策の前に司法がねじ曲げられる~JAL不当解雇判決 [労働運動~働く人たち]

 3月30日、日本航空(JAL)の客室乗務員不当解雇裁判の判決があった(東京地裁民事11部 白石哲裁判長)。昨日29日はパイロットの判決日。まさかの解雇有効判決(東京地裁民事36部 渡邉弘裁判長)に驚かされたが、不安を抱えつつも参加する。

 午前中は診療報酬の4月改訂を控え、電子カルテシステムのアップデート作業。なんとか予定時間内に終わらせ、作業終了後に急ぎ地裁に向かう。
 私は2010年のエントリで、この整理解雇に憤りを覚えつつ、あまりきちんとした支援活動ができていなかった。せめて判決の日は現地へ向かおうと思っていたのだが。

*スマホで写真を撮ったのだが、なぜか猛烈にアンダー気味で写真が暗い

120331jal1.jpg
裁判所前に集まった支援者 傍聴希望者だけで320名ほどいた 傍聴は40名まで

 開廷時間の15時、程なくして弁護士が現れる。時間が早い。嫌な予感。

120331jal2.jpg
なんと不当判決!!

120331jal3.jpg
裁判所前で抗議の声を上げる弁護団と支援団体

 その後ちょっと離れた虎ノ門の会議室で行われた、報告集会に参加する。

・・・・・
裁判の経過や判決の問題点等について、詳しくは
JAL不当解雇撤回裁判原告団
を参照してください。
・・・・・

 弁護団らからも説明があったけれども、どうやら裁判所は、日本航空が経営破綻した際、多額の債権放棄を要請するとか、結果株券が紙くず化したとかいう点を判断のバックボーンとして、だから労働者の首切りもやむないという、妙な「バランス感覚」をもって考えているのではないかということ。
 だから計画を上回る巨額の利益を上げても、労働者を解雇するのはやむを得ないとする。更生計画を絶対視しているから、巨額の利益を上げているにもかかわらず、日航が「短期間で事業拡大するなどの状況がなければ、人員削減の必要性は失われない」というような法理を持ち出す。

 一方で判決は「整理解雇4要件」(1.人員削減の必要性、2.解雇回避努力義務の履行、3.人選基準の合理性、4.手続の妥当性-原告団不当判決声明から抜粋)は適用されるとしたようだ。しかし人員削減は更生計画に盛り込まれているから、解雇は適法であるという。
 最高裁が提示した整理解雇4要件は、更生計画の途上であっても守らなければならない。なら4要件に当てはまっているかというと、当時の会長、稲盛和夫自らが「雇用を続けることは不可能ではない」と言っちゃったことから、4要件を満たしていないことは明らか。

 けれど判決では稲盛発言を「苦渋の決断としてやむなく整理解雇を選択せざるを得なかったことに対する主観的心情を吐露したに過ぎない」として無視してしまった。
 経営トップの、それも裁判所で証言した内容すらこんな理由で無視するんだったら、何のために証人尋問を行ったのか。経営トップの発言とはそんなに軽いものなのか。まさに裁判官の見識が疑われるというもの。


120331jal4.jpg
報告集会の会場は人でいっぱい 大変な熱気

120331jal5.jpg
共産党委員長の志位和夫も来ていた

 空の安全についても、もはやこの判決はなにをかいわんやの珍論を持ち出している。以前のエントリで、航空関係の職員が休むことは、空の安全を守ることでもある旨のことを書いた
 しかし判決は過去に休職や欠勤があった職員は「運行業務に対する貢献にあたっても相対的に劣る」としたそうだ。だからそうした人を解雇リストに載せるのは合理的である、と。
 また職員の経験と空の安全の関係性については「証拠がない」ともしたそうである。「証拠」・・。「証拠が出てからでは遅いのだ」と話していた人がいた。そうだ。証拠が出てからでは遅い。だから未然に防ぐのだ。

 いや、こうした安全性軽視の企業体を私たちは見ている。そしてその「証拠」を見ている。それは以前も書いた。同じ国策企業-当時は国営企業-のJR、鉄道会社各社だ。もう「証拠」は十分ではないか。何人死ねば、どれほどの事故が起きれば「証拠」になるのか。それともこれら鉄道各社の体質と、日本航空は違うとでも?
 破綻を演出し、たたかう労働者の排除を目的に、行政と司法と、そして会社が一体となって首切りを進める。
 国鉄民営化と日本航空、この気味の悪いほどの一致・・。

・・・・・

 原告団長の内田さんは判決を聞いて「(裁判長の)白石ヘタレー!!」と叫びそうになった、と言っていた(実際に報告集会の会場でそう叫んでいた)。
 誠実に事実を積み重ねると、解雇を無効としなければならない。するとそれは国策企業-日本航空-への反逆になる。国策企業への反逆は、つまり国への反逆になる。それはできない。
 じゃあ「整理解雇4要件を認めない」とすると、今度は最高裁への反逆になる。それもできない。
 だから会社側の主張のみなぞって、形式的に4要件に当てはまっていたと、苦しい弁解をする。
 本当に「ヘタレ」だ。
 しかし渡邉裁判長も白石裁判長もよく考えてほしい。あなたは真実を見なかった。何かにおもねいた判断しかできなかった。それが何を意味するか。
 それはあなたたちが拠ってたつ、司法制度への反逆を行ったということだ。それを分かっているのか。自分が何をしたのかを。

・・・・・

 たたかっているパイロットも、客室乗務員も、発言はユーモアを交えた楽しいものだった。会場はしばしば笑いに包まれた。
 支援してきた裁判で、何度も不当判決を受けた経験のある私は、その打ちのめされるような感覚を思い出し、笑いながらも、少し寂しかった。

 一番つらいのは、原告の皆さんだと思う。しかしこの判決で、この解雇撤回闘争が、働く人すべての問題になった。だから私も、自分のこととしてとらえていこうと思う。

nice!(5)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:仕事

nice! 5

コメント 6

ponnta1351

早速コメントを頂き有難う御座いました。
ご無沙汰しておりました。
やはり、すべて生き物は暖かい太陽の恵みは有りがたく、必要なものですね。
ず~~っと寝ていたものが、日向ぼっこをしながらたまに毛づくろいをしているんですから。 何とか存えております。


一生懸命会社のために汗水たらして働いていたものが、やりたい放題の経営陣上層部の責任が大にもかかわらず、不当解雇は自信の身に置き換えるとたまったものじゃありませんね。

この先、どうなるのか気になる東電と重なります。
by ponnta1351 (2012-04-01 19:14) 

Mosel

ずいぶん暖かくなりましたね。この日、裁判所前にいたときも、上着が必要ないくらい暖かでした。

裁判での審議内容で明らかになった数々の事実、そしてこの間の判例から見ても、労働者側が勝つことは明らかな裁判で、原告も支援者もそのように認識していた裁判ですが、このような結果にされてしまいました。

結局上層部は何の責任もないまま、末端の、しかも上層部に批判的な社員を狙い撃ちして解雇する、2重に不当な解雇事件です。

経営が悪化すれば解雇しやすくする方がいいなんて意見を書き散らす人もいますが、自分の身に置き換えれば、それがどれほど冷たい内容か分かりそうなものなんですけれどね。
by Mosel (2012-04-02 06:51) 

ayu15

稲森さんは破綻の責任はないし、無報酬で再建を引き受けたそうですが・・。
それにしてもリストラされた方はほんとお気の毒です。
稲森さんの就任前がどうだったのかしりませんが、
企業倫理
富の分配
など考えさせられます。

できればもう一度
雇用してあげて欲しいです。

それが無理ならせめて新規参入の航空会社に入れるような社会基盤ができるといいんですが。
by ayu15 (2012-04-02 12:25) 

Mosel

ayuさんこんにちは。お返事遅れました。
確かに稲森氏に日航破綻の直接的責任はないでしょう。

しかし彼には「日航再建」のもとこうした不当解雇を進め、それに乗じて組合差別をも進めてきた重大な責任がありますよね。だからこそ彼が「解雇は必要なかった」的な発言をしたことには、非常に大きな意味があるんです。フツーのトップは言いませんからね、こんなこと。

解雇をしなければ会社が建ち行かない、という状況でも、安易に首切りは許されない、これが日本で労働者たちが苦労して勝ち取ってきた権利です。会社を清算してしまった場合でも、未払い給与などの労働債権は、一番優先されるものなんですよ。

集会でも発言がありましたが、整理解雇をせずワークシェアリングを進めていれば、結果的に日航が嫌な人は別の会社に移るでしょうし、こんな騒ぎにもならなかった。
けれど日航は不当解雇を進めた。そこにたたかう労働者を排除しようとした国家的な意志を私は感じるのです。


by Mosel (2012-04-04 18:47) 

ayu15

確かに安易な解雇は問題ですよね。
新規参入もあり乗員不足も言われているので業界全体でこの人たちの雇用は充分まもってほしいなあとおもいました。


さすがに長すぎて原告団のは読めませんがMosel さんの読んで改めて報酬とつけの配分を考えさせられました。


それにしても過去の責任ある経営者の責任どうなんでしょうねえ?
by ayu15 (2012-04-12 13:48) 

Mosel

ayuさん再度のコメントありがとうございます。

今、日航は新卒募集を行っています。職員の首を切っておいて、一方では新規採用は行う。これはどういう意味か、裁判長はよくよく考えて欲しいと思いました。
結局、組合差別が根底にあるんですよね、この解雇事件。

過去の経営者の責任は、本当に大きいと思います。あと日航を利用してきた政治家や有力者も。今の法体系では、多分道義的な責任しか問えないんでしょうね。きっと。
なんか原発事故と、原発を進めてきた「原子力ムラ」の住人との関係に似てますね。無責任という部分が。
by Mosel (2012-04-13 00:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。