新年早々異様に忙しく、忙しいとミスも発生し、それをリカバリする人がいないものだから結局私の仕事になる、という困った職場で働いております。
そんなわけで、今年初めての更新でございます。
Chateau Calon 1964 昨年は珍しいことに、非常に年数を重ねたワインを飲む機会があった。
一つはフランス、ボルドーのモンターニュ・サンテミリオン地区。あまりメジャーではないが、確かな作りのシャトー・カロン1964年。
とある新宿のバーで、10人ほどの客と飲む。
色はやや暗い、ガーネットのような深い赤。みっちりした濃さはなくややクリア。味わいは意外に果実味も残っており、タンニン等はすっかり薄まって、果汁と言うよりは、水にほんのりチェリーとかの味を加えたような、そんな印象。ほんのりスモーキーなシダーとか皮のような風味。上質なブルゴーニュワインのようでもある。
ボトルの中には澱はなく、味わいが意外にフレッシュだったので、ある考えが頭をよぎる。
これって、本物か?
いやまあ、実のところ、もっと枯れた味わいがあるのではないか、というかもっとほこりっぽい味わいではないのかと思っていたので、これは意外だったのである。
おそらく、明記はしていないが、ラベルが年代にしては新しくステッカーであることから、発売直前にシャトー蔵出しでラベルを貼り、リコルク(古いワインの出荷前に、シャトーでコルクを抜き、目減りしたワインを同じヴィンテージのワインでつぎ足して、新しいコルクで封をすること)して出荷したものだろう、という結論になった。
今調べるとラベルデザインも違う。とはいえこのシャトー、
60年代にはいくつかラベルデザインを変更しているようでもあったが。リラベル用に簡易なデザインのラベルも用意しているのかな。
参加者は、普通においしいワインだったと言ってくれる。けれども出所の確かな、同年代のワインを飲んでみれば、事の真相がわかるかも、とも考える。
さて、続いて年末に、これまた変わったワインを飲む。
Robert Mondavi Reserve Pinot Noir 1975 これは(年代をのぞけば)メジャーなワイン。カリフォルニアワインの父、ロバート・モンダヴィのピノノワールリザーブ1975年。
カリフォルニアワインの70年代のものはなかなか見られない。高価ではないと思うが、とにかく見つからない。
このボトルは1988年にリコルクしたことが明記されているもので、けれどリコルクから25年以上も経っているワインなのである。
カロンの件もあって、時代は10年ほど下るが十分な古酒。さて、どうだろうか。
このワインもリコルクしていることもあって、澱はそれほどでもない。輸送後、比較的すぐに飲んだので、ちょっと澱が残留している。それを差し引いても十分おいしい。味わいはカノンと同様さらりと口の中を抜けるクリアで、けれどいわば出汁を思わせる、慎ましやかでほんのりとした果実味が後に残る。
ああ、あの時飲んだカロンは、やはり本物だった。
実は私、ワイン好きと言っても古いヴィンテージの赤ワインを飲んだことがほとんどない。2000年に、1979年のシャトー・ラミッション・オーブリンを飲んだことがあるくらい。このほかにも古いワインは飲んだけれど、せいぜい10-20年くらいのものだけ。作り手もまあ、普通のところ。
・・・・・ 1964年のワイン、とある女性のバースデーヴィンテージということで購入。それは15年ほど前のこと。一緒に飲めるといいな、と思いつつ、そんな機会も持てないまま、時だけが過ぎた。私の自宅のセラーにいつまでも眠っていた。
彼女が50になったのを機に、せっかくだからと最近プレゼントした。そして思いがけず、彼女の誕生日にたくさんの人と一緒に飲む機会がもたらされた。あまり顔には出さなかったが、感慨深かったのだった。
一人で飲むのではなく、家族だけでもなく、たくさんの人と少しずつコレクションを開けていくことが増えた。今までも。これからも。
そんな相手のいるうちは、私もまだまだ幸せなのだと思う。
子どもたちのバースデーヴィンテージも、まだ安いうちに買っておかなきゃなあ。