私は医療情報学会(ようやくホームページビルダーをやめてくれた) というちょっとニッチな学会に入会しており、会員には会誌が送られてくる。これが実にピンポイント的な論文が多く、ピンポイントなものだから私の現場に当てはまる分野は少なくて、これがさっぱり役立たない。そんな中で、学会大会を前にした論文に、実に役立つものが掲載されていた。神戸市立中央市民病院の医療情報部門からの論文だった。

 この病院は900床以上の大病院。専門の情報部門の他、医療現場から医療情報技師を育成して、部門横断的なマトリクス型組織で情報部門を作り上げているらしい。ユーザー企業である病院が、このようなかたちで実際に業務に従事している専門職種を集め、組織化しているとは非常に興味深い。
 論文の内容にはマネジメントを聞きかじった人にはなじみ深いセンテンスが多い。どうやらPMP(注)取得者をメインに組織を作り上げているようだ。
(注)Project Management Professionalの略。言葉通りプロジェクトマネジメントの資格で異様に難しい。

 医療現場にIT系の知識を持つ人を育成し、それらの人々をマトリクス型組織に編入して、医療情報部門の一員として構成することは、医療系IT関係者にとっては悲願と思う。そしてメインの仕事がある人たちに、興味のない仕事をさせるのは拷問でしかないとして、そんな観点から組織構成と様態を決めるという柔軟さ。専門性があり、そして実に分野の広いIT関連知識を、一人でまとめるなどとても無理。つまらないプライドを捨てて、チーム運営に徹する。それを行いやすくするための方策としての、個人の意思を尊重した組織作り。

 学会誌に掲載される論文だから、そりゃ良い経験ばかりしか書いていないだろうけれど、組織の骨格と考え方を見るだけでも、なかなかな組織構造を持っていることは想像に難くない。
 そして多分、医療機関においてこんな組織を作るのは、たった一人か少数と、そのまわりの理解者が、こんな構造を作り上げたのだろうな、と経験上考えてしまう。そして詳しくは書かないが、病院という組織の中で、この取組の立ち上げは難しかったろうし悩みも多かったと思う。「誇り高いチームの中で、資格と名誉のために、ただ余分に働けという加重労働の構図の中ではチームは存続できない。当然の報酬と待遇を考えなければ・・」という文末の言葉が全てを物語っているように思う。さて...