医療に関しては、マイナンバーがらみというより、医療で個人情報をどのように扱ったらよいか、その議論が主であった。
*医療情報はマイナンバーを付加することにはなっていないため、医療情報はこれまで通り、各病院個別の「患者ID」によって運用される。医療データについては、統計などに使用される場合(具体的には特定健診や診療報酬明細(レセプト)情報などに限られるだろう。患者の「マイナンバー」を医療機関は集めないから。)その患者個別の「電子符号」が付加された(個別の医療IDをと学会はこれまで主張しているが、おそらくマイナンバーを暗号化するであろう)情報が付け加えられる。診療情報については、今後どうなるであろう。 質疑応答では、診療情報を匿名化し、個人を特定できないようにしていても、色々とスクリーニングしていくと個人を特定できそうな情報となる場合があるとか、匿名化していても関係者が見れば、あの人か!と分かってしまう、などがあった。
*研究発表を見ると、どんなに匿名化してもわかるんですよ。診ている人には。 では「匿名化」をどう判断するのか、は具体的になっていない。今後の課題なのだ。
個人情報を匿名化した情報は「匿名加工情報」となるんだけれど、じゃあそれはどこがどう判断するのか、これからつくられる「個人情報保護委員会」が判断するのか、とか。またその判断と「学問の自由」との兼ね合いでどう運用するか、など今後の課題となる点がまだまだ多そうだ。
とまあ、医療統計をどのように扱うのかという面から、今回の改正個人情報保護法をもとに、どのように医療情報を利活用するか、という面が前面に出ている学会大会であった。
一般の小さな病院である当院には、現場の診療という面ではあまり関係はない。けれどもこのようなトレンドを追いかけるのは、有益とも思う。
法の支配を脱した政府のある国で、法解釈を語り合うことの空しさ さて、そうは言っても、そうは言っても、だ。
国民一般が「マイナンバー」に漠然とした不安を感じるのはなぜだろう。流出した際の情報漏洩が怖いからか?それもあるだろう。実際に同様の制度を利用している韓国や米国では情報流出事故が-その流出による被害がどのようなレベルであるかはさておき-発生しているから。
その点今回の大会で国側のシンポジストが語る内容からは、日本は流出しても限定的ですよ、との印象を持つ。
まあ、そうだろう。電子符号化された「マイナンバー」を解読する手段は一般にはないから。
ではこれが、国であったら?
国は暗号化を解除する手段をもっているから、各種集められた情報をたやすくリンクさせることが出来る。そもそもそのための「マイナンバー」。今、法律で「特定個人情報」の運用が厳格に規定されているとしてもだ。
今の政権って、
時の内閣が憲法の解釈を変えてもいい「法的安定性」など関係ない って言っちゃってるし実際やっているんですよ。憲法すら解釈で無視してしまうような内閣が、法律を守るわけがないでしょう。
法律によってこうなっています。こう言った運用をします、と国の関係者が言っていても、そこに何が担保されているのか。
9月の戦争法「違法」可決で頂点に達した、権力を握っていれば憲法も法律も無視していいと考えている政権の元で、このような法律を元にした話を聞いていると、若干のむなしさを感じるんですよねえ。この国は安倍政権と自民公明党のもとで、社会の根本が壊されているんだから。
私なんかは、「マイナンバー」の今後について、様々な情報が一つのIDでリンクされる、そのことそのものが不安ですがねえ。
結局のところ、日本政府を信用に足る組織かどうかという点、そして
政権が逸脱したら、相応の報いを受ける国家体制になっているのかどうか、その点に尽きるのではないかと思う。
そうなってはいないからねえ。
・・・・・ そしてここは沖縄なのである。安倍政権の憲法無視、法律無視の最前線がここにある。
名護市辺野古の一角にて 自動車が多いのは、ここで地区の運動会が行われていたから。けれど運動会には米軍が来ていて、あいさつをしているのが聞こえてきた。君が代が大音量で流れ、軍艦マーチまでもが聞こえてきた。地元の人が「アメリカーは来てる?これからどんどん来るよ。金武(金武町。米軍のキャンプハンセンがある)みたいにね。」と、言っているのを耳にする。
辺野古テント村 近くで写真を撮っていると、気さくにあいさつしてくれる。こちらもお言葉に甘えテント内に入る。ただなんの準備も出来ず、ふらりと立ち寄ることになってしまった。カンパくらいするべきだったと反省。連日7-80人が訪れるとのこと。キャンプシュワブゲート前はもっと人が多いと。ゲート前は時間切れで行けず。
日曜ということもあって静かな海。遠くの海を見ても、ここが基地建設の最前線のようには見えない。
しかしこの柵から先には立入りが出来ないのだ。
中央ポールの先には監視カメラ 実質一日しかいられなかったけれど。月頭に大会されるとなかなか日程調整が難しい。一応医療事務系業務もあるので。業務拡大で当院、去年と比較してレセプト件数が8割増になっているし。
大会の会場も宜野湾市。普天間基地のあるところだ。会期中にも轟音をたててFA-18戦闘攻撃機が上空を通過する。
空港から名護へと向かう途上、延々と米軍基地と日本軍基地が広がる。そんな中で行われた大会でもある。
・・・・・ ところで2008年の大会に際して私はこのようなエントリを上げたことがある。
「日本版EHR-医療情報学連合大会にて」 このエントリの中で「・・厚労省の担当者は「国民監視のシステムではない」と言っていたけれど・・」と書いているけれど、その「厚労省の担当者」とは厚労省(中略)室長補佐の中安一幸氏。
そう。こないだ汚職事件で逮捕されたあの御仁だ。
私もこの学会を通じてシンポジウムや講演会に何度も参加した。医療情報学会との縁も浅からぬ人ではあるが、例年の大会の場では当然彼が座るであろう場所に、別の人がいた。
中安氏、毎年参加してシンポジウムなど出てくれていたけれど。
うん、別の人が、いたよ。何事もなかったかのように。
「今日も傍聴席にいます」この本の第一部「才に溺れた厚労省の赤シャツ」を参照