ある結婚

　先日、私の大事な人が結婚式を挙げた。よく一緒に飲みに行く彼と、私たちの第二子妊娠時の担当医だった彼女。結婚式、というより結婚を祝う会というパーティー形式のものだ。

　彼が新入社員として入ってきてからのつきあいだから、もう十年以上になるだろうか。口は悪いわ厭世的だわと、受ける印象は良くないようにも見えるが、気配り上手な行動に、私はずいぶん助けられた。あちこちで結構信頼が厚いのも、彼が単なる皮肉屋ではないことを証明しているんだと思う。

　きっといい結婚生活が送れるよ。

　私は、思えば結婚してからもう５年になるのか。職場での朝礼後に彼やまわりの人たちにそのことを伝えたらずいぶん喜んでくれて、うれしかったのと共に、ちょっと恥ずかしかったことを今でも思い出す。

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　私たちは結婚式やその類のことをしなかった。できなかったのだ。

・・妻がすでに妊娠していたと言うこともある。
・・私自身が結婚式の類をあまりやりたくなかったというのもある。
・・そして何より、当時プロジェクトがめじろ押しだった会社の状況で、年間推定3000時間は働いていた私に、そのような時間がとれなかった、というのもある。せめて新婚旅行はしようと休みを取ったら、事情を知らない人からイヤミを言われたこともあった。

　こうして二人の娘をもつ身になると、挙式をしなかった当時の選択は、妻と両親にとって、ちょっと酷な決断だったのではないか、と自問することがある。妻が友人の結婚式などに出かけていって、「おヨメさんがすごくきれいだった」と聞くたびに、悪い思いをさせてしまったかな、と思う。晩婚が多い私のまわりで、少しずつ結婚の便りが届く。そしてそんな状況を見るにつけ、改めてその類のことをこれからしてみてもいいのかな、と考えることがある。

　あ、両家の家族で食事会は一応しましたからね。ドレスを借りて写真撮影だけはやっておきましたよ。