先日の「医学界新聞」に、アメリカ合州国の医療事情を連載している、李啓充氏の記事が掲載された。今回の話題は医療者のConflict of Interest(利益相反)、業者などから金や飲食などの便宜供与を受けた場合、それを公開しなければならないという法律について。いやもちろんUSAの話ですけどね。
珍しく医療分野でアメリカ合州国が進んでいる事例 まあ、他人から何かもらったら、お返ししなきゃいけないんじゃないか、つまり賄賂をもらったら正しい判断ができなくなるんじゃないの、という当然の推測から、こうした便宜供与を受けた場合、それを公開しなければならないという法律が、合州国で2010年に制定されたという内容。
報告義務があるのは業者(支払う側)。業者が医療者に何らかの金品提供-これには講師料とか、食事や旅費、寄付なども含まれる-した場合、10ドル以上の分について報告、公開されることになったとのこと。
*食事や講師料・・。あからさまにカネを業者からもらうのって、洋の東西を問わず気が引けるのだろう。医療情報学会でもそうなんだけど、ランチョンセミナーなんかでは業者が豪華な弁当を用意する。これも立派な便宜供与の一つではある。 そして先行して実施されていたマサチューセッツ州での結果から、供与を受ける割合はプライマリケア医が低く、消化器や泌尿器科専門医の割合が大きい。ある整形外科医に至っては、調査期間中(30カ月)の供与額は94万ドルに達したとのこと。
ここで重要なのは、何かを医療者が受けとることについては禁止していない。けれどこの医者は企業からこんだけ金をもらってるんですよ、飲食接待受けているんですよ、というのがわかるようになっている。
振り返って日本。昨今大問題となっている、降圧剤ディオバンに関わる臨床研究で、製薬会社ノバルティスの社員が身分を隠して関わっていた事件を引き合いに出し、利益相反に関わる米国の厳しさと、日本の後進性を比較している。
ノバルティス ディオバン(バルサルタン)臨床研究データ捏造疑惑疑わしい行動はとらない、という常識
そう。汚職事件とか、企業献金禁止などでよく言われることなのだが、資金提供や便宜供与する側はその見返りを求めて接近するのだから、受け取った側の判断が、それに左右されると考えるのは、非常に合理性があることだ。だからこそ贈収賄は法律で禁じられているのだ(公務員に対してだけど)。
そう思われたくなければ、受け取らなければいいこと。もしくは受け取っていることを公開すること。そしてどう評価するかは評価者に任せること、なのだ。
「李下に冠を正さず」という言葉がある。疑われたくなければ、疑わしい行為をしないこと、ということである。
疑わしい行為ばかりの組織をいくつかみてみよう さて、今月号のDAYS JAPANである。今月も興味深い記事がある。
おしどりマコ・ケンの実際どうなの? 関電グループ会社って「第三者機関」なの!? 福島第一原発では、汚染水の処理がずっと問題になっています・・・少しでも汚染水を減らそうと、原子炉建屋に流れ込む前に地下水を汲み上げ、それをそのまま海に流そうという計画があります。・・この計画のキモは「地下水が本当に汚染されていない!だから海に流しても大丈夫!」というところでしょ。でも、その地下水を分析したのは「第三者機関」と書かれているだけ。「第三者機関ってどこですか?」と私は質問しました。すると、「環境総合テクノスです」というお答え。ん?どこだろう、と会見中にネットで検索しました。すると!「環境総合テクノス」は、関西電力のグループ会社で、株主は関西電力のみ!
・・・(続いて記者会見での質疑応答にて:引用社注)(おしどりマコ・ケン)-東京電力の通常の資料には、日本分析センターや環境エンジニアリングや、分析会社の名前を書いておられますが、なぜこの「地下水バイパス」の資料、漁連の方々にご説明する資料には「第三者機関」のみで、分析会社名である環境総合テクノスを書いておられないんでしょうか」?(東京電力)「理由は・・・・わかりません」
マコ・ケンさんGJ! 我が医療者が利益相反と見られることをおそれ、つましい態度を取り続けている
(自画自賛?多くの病院では患者や業者からの金品授受を禁じていたりしますよ)のに対して、原発関連の人々の感性たるや、驚くべきというか、あきれてしまうというか。
これこそが、内輪の世界で凝り固まった組織のメンタリティということなのだろう。多くの人が批判し、私もここでさんざん指摘してきた状況が、何一つ変わっていないことをが改めて証明された一件だ。
もう一つ、最近赤旗がスクープした記事で、もうちょっとマスコミが騒いでもよろしいものだが。
自民が4.7億円献金請求 日建連にアベノミクス推進掲げ 「赤旗」日曜版 文書を入手(しんぶん赤旗7月4日)
自民党や同党の政治資金団体・国民政治協会(国政協)が参院選前、ゼネコンの業界団体、日本建設業連合会(日建連)に4億7100万円もの政治献金を請求していたことが、「しんぶん赤旗」日曜版編集部入手の文書で分かりました。文書は、巨大公共事業をふくむ安倍内閣の経済政策「アベノミクス」の推進を掲げて献金を求めており、政策を金で売る最悪の利権政治です。(詳報は日曜版7日号)
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石破茂幹事長をはじめ、総務会長、政調会長などが連名で出した自民党文書はアベノミクスの「3本柱」の政策を説明。「夏には、参議院選挙が行われます」と明記したうえで、国政協からの「お願い」に「御高配」を、と要求しています。
国政協文書は、「自由民主党は、…『強(きょう)靭(じん)な国土』の建設へと全力で立ち向かって」いると強調。その「政策遂行を支援するため」として、「一、金 四億七千壱百萬円也」(4億7100万円)と数字も示して献金請求しています。
あからさまに、自民党が業界団体に対して「賄賂」を要求していることになろうが、安倍晋三は党首討論でこの件を「知らない」と言ってのけた。知っていたらもちろん問題だし、知らなかったら幹事長レベルの連名文書を知らない総裁の存在価値が問われる。
そしてこのことにまともに触れて問題意識を持っている大マスコミがさっぱりいない。
自民党はこの件を、単なる献金要請であり違法性はないとして逃げるだろう。それを追求するマスコミもないことを知っているから。
テレビがおかしいぞ! 首相と癒着 異常な持ち上げ 会食・懇談が止まらない…(しんぶん赤旗5月21日
テレビによる異常な安倍政権持ち上げ番組が相次ぐなか、安倍首相と大手メディア幹部の会食・懇談が止まりません(別表参照)。テレビ関係者は会長、社長のトップに続いて、キャスターや番組コメンテーターとして登場する解説委員も加わっています。
首相から“ごちそう”になった通信社解説委員のA氏。さっそく番組の中で、ほかの出演者に「安倍さんにお会いになったそうで」と水を向けられ、満足そうな笑みを返しました。キャスターのB氏は自分が進行する番組で、首相公邸に迎えられたことを得意げに告白しました。
会長や社長らトップが会食したテレビ局は、安倍首相の生出演番組を組んで、首相に言いたい放題の場を提供しています。
ちなみに上記記事のキャスターの「B氏」とは、TBSのニュースキャスターもしている「みのもんた」である。この男はラジオ番組でも同じような話をしており、偶然ラジオでみのの自慢話を聴いた私は、怒りより先に気恥ずかしさを感じて、いたたまれない気持ちになった。そのくらい残念な内容だったのだ。
さて、参院選も近い。疑わしいことばかりする連中には、そろそろ退場してもらわねば。2012年総選挙も、先日の都議選も、自民党には硬い票しか入っておらず、彼らの圧勝とやらは、投票率の低さにと選挙制度に助けられた側面がありそうだ。
こんなマスコミ報道で絶望して棄権なんかしている場合では、ない。