NHK会長とやらが、バカッターみたいなことをやらかした件

　「公共放送」であるNHK、その会長御大が、記者会見でやらかしてしまった事件から10日ほど経つ。その後意外なほどの反響に、国会まで出向いて喚問される始末。

　日本軍性奴隷制度（従軍慰安婦）に関する無知をさらけ出した上記記者会見発言など、籾井氏への批判内容は、以下のサイトに詳しい。

法華狼氏
法華狼の日記
「籾井勝人NHK新会長が就任記者会見で、日本軍慰安所制度の固有性を無根拠に否認したとのこと」

Scopedog氏
誰かの妄想・はてな版
恥知らずというか・・・

　個人的にはApeman氏のサイトの簡潔な表現が一番しっくり来る。こんな意見に多弁を要する必要のない社会を、私は望みたい。

Apeman氏
Apes! Not Monkeys! はてな別館
謎主張

　日本軍性奴隷制度に関する論議の到達点と、右翼（というか「ネット右翼」）による「反論」手法は、ある程度のレベルには達しているように思えるが、そのネトウヨの反論レベルにすら到達していないお粗末な意見を（e.g.「日本軍だけが強制連行をしていたんですか？」）まき散らした、此度の籾井氏の発言に、私は既視感を覚えた。

　去年後半に私もちょっと書いた、「バカッター」事件の当事者に。籾井氏、バカッターで炎上する人と水準が同じだよ。

バカッター投稿する人
　なんか自分が楽しそうと思ったことをやって、面白いと思ってTwitter（もしくはBlogなど類似のもの）に投稿する。でもそれは非常識きわまりない行為だった。
・・するとそれを見つけ、おかしいと思った人が批判する。
・・・でアカウント閉鎖とか謝罪とか、クビになるなどの社会的制裁を受ける。

籾井勝人NHK会長殿
　なんか自分が正しい認識と思っていることを、記者会見で開陳する。でもそれは非常識きわまりない内容だった。
・・するとそれを問題視した人たちが批判する。
・・・で、国会に呼ばれて釈明させられる。

　違うのは、首相である安倍自身も含め、政府関係者の多くが籾井と同じ思想を持っているもんだから、クビにはとりあえずなっていない。
　・・というかこんなヤツだから安倍がNHKに送り込んだんだろう。

　けれどそれが非常識なことは、諸外国の反応を見ればよく分かる。「反日々々」と騒ぐ人たちが、結局は日本国の対外的な評価を貶めているのと、よく似ている。

　それは、悲しむべき事なのだろう。

・・・・・

　ネトウヨは、その性質に基づき、自身の意見に論拠を求めない。他者による検証も必要としない。思考停止し、ただ自分の意見を叫び続けるだけ。

　それは2001年の小泉政権あたりから顕著になった「ワンフレーズポリティクス」にみられる、政策の単純化。「わかりやすさ」を極端に重視することで、深慮が憚られる社会。それらがもたらす政治の帰結が、大阪府市に巣くう「維新の会」の政治スタイル。仮想敵を設定し、問答無用でひたすらに攻撃するその様は、民主主義を多数派の形成としか見ない、無知蒙昧な姿勢。それがわいては消えるネトウヨの隆盛を呼び、大阪など一時、一部地域とはいえ、多数派を構成してしまった現実に・・私は日本社会の知的退廃をみる。

　「わかりやすい」言葉というのは、非常に大切な概念だ。年中難しい言葉に触れなければならない私にはよくわかる。疲れるんだ、難しい言葉は。

　けれど考えよう。非常に難しいことを単純化するのは、「単純化」する人たちのバイアスがかかることを。「バイアス」、それは思考の偏りとか偏見と言ってもいいかも知れない。単純化した人たちの思考に身をゆだねてもいいのだろうか。
　社会や政治というのは、その本質に迫るのは案外単純なこともある。難しいと逃げないで、自分で考えてみようよ。その程度の労力は民主主義のコストなのだから。
　そのコストを拒否した時点で、私たちは簡単に、ファシズムの道へと進んでしまう。その道は、今私たちが20年ばかりかけて歩んでいるのだから。

　その道を整備した人が－総理大臣すら経験した二人が－呑気に反原発を口にしている。その人の元で大臣を務めた人も、東京都政を語っている。

　そしてリベラルと思われていた人が、それらを支援している、滑稽な図式。