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戦争法案反対運動が大きくなったのは、安倍晋三への「違和感」にある [社会情勢]

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 基礎が大事だ、と思う。

 仕事をしていると、基礎がきちんとしている人の業務は安定しているのだ。多くを語らなくとも、大体において確実な仕事をしてくれる。他人へのサポートも、かゆいところに手が届く、そんな仕事をしてくれる。

 ところが逆に、基礎ができていない人はダメだ。一緒に働いていても、トンチンカンなことをする。「そこから話さなきゃダメ?」的な行動をとる。
 他人のサポートをしてくれている、しようと頑張っている、その気持ちはわかるんだけど、何かズレている。かえって邪魔になる。

 新人なんかは基礎がなっていない。当たり前。知らないんだから。だからこそ研修で基礎からみっちり教えなくてはならない。そうして経験を積んで、一人前になってくる。
 それが仕事だ。そういうものなのだ。

 一方で、これは会社における仕事に限らず、社会で暮らしていく以上は、様々なことがその対象になる。
 料理しかり。育児しかり。ネットでの作法もしかり。ゲームですらそうだろう。

 そして政治の世界においては、先進国、民主主義国というところに生活する我々は、きちんとその組織の「基礎」を学んでいなければならない。立憲主義、法治国家、そしてデモクラシー。政治家ならそれはなおさらのことだ。

基礎がなっていない安倍晋三~首相が民主主義をわかっていない国の不幸

 戦争法案を安倍政権が強行可決してから1週間がたつ。1週間というとネット社会では旧聞に属することになろうが、現実ではそうではない。というわけで私はしつこく書くのである。


 この強行可決へ至るまでの過程、安倍政権の異常ぶりが浮き出た過程でもある。

 法案説明の不備をとがめられると「私は総理大臣なんですから」(5/20国会)。
 この法案が、米軍の核兵器すら輸送可能であると言うことを指摘されて、法理上は可能であることを認めながら「政策上あり得ないということはそれは起こり得ないんですよ」「私は総理大臣として『あり得ない』と言ってるんですから、間違いありませんよ」(8/7国会)。

 総理大臣として「あり得ない」発言を連発する安倍。この国はかつて、総理大臣初めとする権力中枢が暴走して、アジア各国で2000万、自国民も300万以上を死に追いやった。だからこそ、総理大臣を含めて、「国家は間違うもの」という合意ができたのが戦後民主主義だ。それを前提に、政策が遂行されねばならない。
 首相の、その場しのぎの発言なんてものに価値はない。

 強行採決の直前、9月16日に横浜で行われた地方公聴会。そこで弁護士の水上貴央氏は「・・この公聴会が採決までの単なるセレモニーにすぎず、茶番に過ぎないのであれば私はあえて意見を述べるつもりはない。・・この横浜地方公聴会は慎重で十分な審議を行うための会なのか。それとも採決までの単なるセレモニーなのか」と問うた。
 参院特別委委員長の鴻池は「その件については各党の理事間協議において横浜地方公聴会が決まった。その後段についてはいまだに協議は整っていない。」と答えた。

 そして鴻池はどうしたか。「強行採決するなよ。委員長」との傍聴人の声に気色ばんだばかりか、そのまま参院特別委員会で強行可決。そして本会議でも強行可決に及んだ。

 そのような政権の手法ぶりを「反知性主義」として批判する向きも多かった。

戦争法反対運動が大きくなったのは、デモクラシーを知らない安倍一派への違和感にある

 実のところ安倍政権が強行採決をすることは、戦争法案反対派の多くが、そう認識していたのではないかと思う。
 特定秘密法のときも、第一次安部政権時の教育基本法もそうだったから。
 だから意外なほどに、反対派に悲壮感がない。強行採決から日を置かずして、共産党が戦争法に反対した各党へ、戦争法廃案に関する一点共闘をもちかけた。これはかの党の歴史から考えて、相当以前から練り上げていた方針なのだろう。

 さて。

 戦争法は確かにひどい。憲法解釈を変えることで、事実上の憲法改正と同じことをする。その伏線は昨年の政府見解の変更から始まる、というか憲法96条改正が世論の反対によって潰えた時から始まったといえる。
 けれどなぜこんなに反対運動が大きくなったのだろう。そして若年層の運動がなぜに盛り上がったのだろう。

 私は思う。「違和感」なのだ。曲がりなりにも民主国家で、法治主義の世界で教育を受け、そして生活をしている人々が感じる、安倍晋三に対する違和感。

 手続きをふんで、ロジカルに動かなければならない政策論争を、我田引水で自らに都合の良いように解釈をねじ曲げ、反対する人々を排除し内輪だけで集まる。個人ならまあ、人間の弱さと許されなくはないけれども、事が政権中枢に及ぶとなると、そのような甘えは許されない。
 事実上の国営放送、そのトップを自分の息のかかった人物にすげ替え、法制局長官を変え、最高裁判決の解釈をねじ曲げ、宗主国アメリカ合州国に日本の議会を無視して約束し、そして国会論戦で論拠が破綻しているにもかかわらず、戦争法を強行する。
 そこに強烈な違和感を抱くのは至極当然のこと。

安倍晋三の「ズレ」が新たな社会運動を生み出した

 そう、ズレているのだ。安倍晋三は。民主国家に生きる人が持つ共通認識を、彼は全然持っていない。その大きなズレが、国会論戦でもあらわになる。はじめにもちだした前提条件を簡単に引っ込める。自分の発言を絶対視して押し切ろうとする。結局は強行可決すればいいと思っているから、議論がかみ合わない。国会論議を可決のためのセレモニーとしか思っていない。
 そこに私たちは感じるのだ。民主国家のルールを踏みにじることに対する不快感と怒り。憲法改正論者ですら戦争法に反対したその本質は、やはり安倍晋三に対する本質的な「違和感」なのだろう。

 民主国家として、ズレにズレまくった政権のありように、特に学究肌の人を中心にして、本能的な違和感を抱き、それが怒りに転化した。それがこの戦争法への強大な反対運動へとつながった、そのように思うのだ。
 学生諸氏の参加が多いのもうなずける。そのようなズレを敏感に感じ取れる、そして行動に移せるのが若者だからだ。

 ロジックで人はなかなか動かない。感情こそが人を行動に駆り立てる原動力だと、経験上私は考える。その意味で、安倍晋三のもたらした強烈な「違和感」は日本に暮らす人民の運動に、あらたな到達点を与えたのではないか、とすら思えてくる。

「反知性主義」を恥じるネトウヨにはまだ救いがある

 戦争法に関する世論の盛り上がりを最も恐れたのは、やはり官邸筋であり、その意を汲んだネット右翼共のようだ。
 私はネトウヨ世論の動向を見るために、Livedoor系の「痛いニュースリンク」(クソサイトなのでリンク貼りません)他、いくつかのサイトを見ているが、戦争法案に関する記事の多いこと多いこと。そして安倍政権を「反知性主義」と定義する意見への非難が多いこと多いこと。

 意外だった。彼らネトウヨは、どうやら「反知性主義」を恥じているようなのである。恥じているということは、彼らは反知性主義の側に立ちたくない、と考えているということ。
 まあ実際にはネトウヨは反知性主義そのものなんだけれど。

 国家秘密法やその他政治課題についても、これまで多くの反対意見が寄せられていたけれど、商業マスコミにせよ個人にせよ、ネトウヨ世論がここまで敏感に反発している事例を私は知らない。
 それは取りも直さずこの戦争法を批判する運動が、彼らにとってどれほど大きく怖い存在なのかを証明していると言うことでもある。

 「反知性主義」大いに結構、と開き直られるのはえらくやっかいだ。そうでないところにまだ救いがある。自らの「反知性主義」に気づけネトウヨよ。そこから全てが始まる。

戦争法を実施させれば、憲法はないに等しくなる

 さて、早速「自衛隊」という名の軍が、これまで憲法で禁じられていたことを理由に、実施してこなかった「駆けつけ警護」を整備し始めた。

「駆けつけ警護、来春にも 南スーダンPKOに安保法適用」(朝日新聞:2015年9月24日)

政府は、安全保障関連法の成立を受け、アフリカ・南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣している陸上自衛隊の武器使用基準を緩和し、来年5月の部隊交代に合わせて任務に「駆けつけ警護」を追加する方針を固めた。19日に成立した安保法のうち改正PKO協力法を反映したもので、早ければ2月にも新たな任務を盛り込んだ実施計画を閣議決定する。


 憲法上禁じられていた行為を、法律ができたから実施する。立憲国家としては「逆立ち」と言うほかない状況。このようなことをさせない世論を大きくしなければならない。これを放置すると、憲法の他の条項もなし崩しにされるだろう。そしてその先は憲法改正。それを主導する自民党が、どのような憲法を求めているのかは、彼らが作った憲法案をみれば一目瞭然だ。
 そんな社会は、誰も望んでいない。その時がくるのを座視していては、遅い。
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cheese999

先週だったか、シンゾー君の記者会見を聞いていましたが。。。
記者の質問の内容を理解しているのか、していないのか、
自分の見解ばかりを述べておられ、質問に対する回答になっておりませんでした。
あんな頓珍漢なオヤジでも首相が務まるんですねぇ~。
うちの会社だったら、1週間もつかどうか。。。
(^_0)ノ
by cheese999 (2015-09-27 20:06) 

Mosel

持論を展開するだけで、他者の意見を取り入れる能力が決定的に欠けていますね。安倍晋三という人物は。首相としての資質が決定的に欠けているのと同意なのですが、そんな人物が首相になれてしまう不幸。
レイ・ブラッドベリばりに、自分の気に入らない質問には全く別の話題で答えるというのでもなく、そもそも違う考えを反映させる能力がない。で、閣僚など周りにも似たような人物を集めてしまう。大阪の橋下徹なんかも同類ですね。
ま、日々の政策遂行は官僚がやってくれているので困らないんでしょうけど。

でも結構こんな人って、何を間違えたのか、会社の上層部にいることがありますね。上の覚えめでたくすることはうまいから。安倍晋三は何せ三代目の政治家だし、実際の仕事は下の人がやりますから。自民党がひどい官僚主義に陥っている証左とも言えますかね。
by Mosel (2015-09-28 06:59) 

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