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労災被害者になるのが難しい国~矢田部過労死裁判でようやく労災認定 [労働運動~働く人たち]

 昨日18日、東京地裁にて矢田部過労死裁判の行政訴訟において、原告勝訴、矢田部さんへの労災認定不支給処分取消し判決が出された。
 大手メディアの電子版では確認できなかったが、しんぶん赤旗19日付け政治・総合面で大きく取り上げられている。

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「労災と認める」(しんぶん赤旗4/19)
レンタルビデオ店で正社員として働いていた矢田部暁則さん=当時(27)=が2000年9月に、過重労働でできた脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血で死亡した事件で、暁則さんの母・和子さんが国に労災認定を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁(青野洋士裁判長)であり、労災と認め、足立労働基準監督署による不支給処分を取り消しました。
 暁則さんはレンタルビデオ店会社クォークで1年8カ月働き、店長代理で2店舗兼務、6店舗を移動しました。その間、深夜労働と不規則勤務、1カ月に100時間を超える残業などがありました。
 その後、体力が持たず、2000年3月末に同社を退職。自宅療養後、体調が回復しないまま出版社に再就職し、2カ月後に急死しました。(中略)

判決は大きな力
母・和子さんのコメント
息子が死んでから10年たちますが、いまだに若者を使い捨てにするような社会があります。今回の判決は過労死・過労自殺をなくす社会にする大きな力になると思います。二度と息子のような犠牲者を出さないでほしい。そのためにも若者が夢と希望を持って、人間らしく働ける労働法制を確立してもらいたいです。国は、判決を真摯に受け止め、控訴しないでほしいです。(引用終わり)

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 全く同感である。国は判決を重く受け止め、今後の行政に活かしていただきたい。控訴するなどもってのほか。控訴するヒマがあるなら労基署へ指導するのが先だ。


 矢田部さんご家族とは、川田過労自殺裁判への取り組みの中で何度かお会いした。Shop99裁判の傍聴にもいらしていた。勝訴判決は当然のことと思うし、長いたたかいに「お疲れ様でした」といいたい。

 裁判経過についてはこちらの方のBlogに詳しい。

「労働組合って何するところ」


 しかし過労死・過労災害関連の事件を見るたび、日本という国は本当に労災被害者となるのが難しい国なのだなあと、つくづく思う。
 実際に労災申請するには、大変面倒な書類手続きが必要で、かつ申請してから労基署が関係職場へ聞き取りを行う。そこで社員が口裏あわせてでたらめを言ってしまうと、労災認定がされないなんてことが発生してしまう。

 以前「日本は失業者になるのが難しい国だ」という冗談があった。これは今でも変わっていないが、政府が発表する「失業率」の統計は、失業者となるハードルが非常に高い。求職活動をしていない人(要は職安-ハローワークに登録していない人)や、調査期間中にわずかでも労働をした人(週一回程度のパート)は「失業者」になれないのだ。
 求職しながらわずかなパート労働で糊口をしのいでいる人に、「あなたは失業者ではありませんよ」といい、日本の失業率はほらこんなに低い、と公言する国が日本なのだ。


 この度の矢田部さんの裁判でも、この判決が出るまでに11年の歳月が流れている。勝利判決となって労災認定されたからまだいいが、認定されずに敗訴となって判決が確定した例、そもそも訴訟まで持ち込めなかった例、労災申請すらできなかった例はたくさんある。

 労災申請、そして認定を、被害者の立場に立ったものにあらためると同時に、係争となった場合も労働者の立場に立った司法であるよう、世の中を少しずつでも変革していかなければならないと思う。

 そしてこのようなたたかいが積み重なることで、少しずつ世の中の変化が促される、そして次第に労働者の立場に立った判決も導き出されていく、そう考えたい。
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manekiuri

(ご無沙汰して申し訳ございません^^;
いつもありがとうございます!!)
by manekiuri (2011-04-23 10:29) 

Mosel

いえいえこちらこそ。お互いぼちぼち更新していきましょう。
by Mosel (2011-04-23 20:47) 

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